徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)04月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1335 4面

読み解く・読み得 紙上医療講演53
糖尿病は予防が第一

厚生労働省によると「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」を合わせた糖尿病患者数の推計値は約2000万人(2016年)にも上ります。糖尿病は放置すると恐ろしい合併症を引き起こし、QOL(生活の質)だけでなく、生命にかかわることもあります。それだけに正しい知識を身に付け、適切に予防し主治医と相談して治療を行うことが重要です。湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)内分泌・糖尿病内科の三澤晴雄医長が解説します。

三澤晴雄・湘南藤沢徳洲会病院内分泌・糖尿病内科医長

糖尿病は血糖値が上がりやすく、なかなか下がらない病気のことを言います。インスリン(血糖値を下げるホルモン)が分泌されなくなる病気だと考えている方もいると思いますが、これは誤解で、糖尿病になるとインスリンが出ない人もいますが、基礎インスリン分泌はむしろ増えていることもあるのです。

糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病、その他の糖尿病に分けることができます。1型糖尿病は自己免疫などにより、膵臓にあるインスリンを出す細胞であるβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなってしまいます。一方、2型糖尿病は食べすぎや肥満などにより、膵臓に負担がかかり適切にインスリンが分泌されなくなる状態です。その他の糖尿病は遺伝性、薬剤性、他の病気にともなうものを含みます。

ここからは生活習慣などにより発症する2型糖尿病を中心に解説します。

糖尿病になっても初期では自覚症状がほとんどなく、なかなか気付かないことが多いです。しかし血糖コントロール不良が続くと重大な合併症が起こります。糖尿病の三大合併症と言われる①糖尿病性網膜症、②糖尿病性腎症、③糖尿病性神経障害です。

①は眼の網膜と呼ばれる部分で出血が起こり、急に目が見えなくなって最悪の場合は失明に至ります。②はタンパク尿の増加や腎機能の低下を招き、悪化すると人工透析を受けることになります。透析導入の原因として最も多いのが、この糖尿病性腎症です。③は手足のしびれや感覚がなくなるなどの症状が現れ、悪化すると足先の壊疽が起こり、下肢切断の原因となります。

このほか糖尿病は動脈硬化を促進する要因のひとつであり、心筋梗塞の発症リスクが高まることがわかっています。さらに今日では糖尿病とがん、睡眠時無呼吸症候群、認知症との関連も指摘されています。

糖尿病の診療のため当院を受診されている患者さんを対象に、「糖尿病と診断されたきっかけ」を調査したところ、55%が「健診」と答え、32%が「他の病気で受診」と回答。診断時に自覚症状がある人はほとんどいないのです。積極的に検査を受けないと早期に診断することが難しいため、定期的な検査(少なくとも1年に1回)をおすすめします。

糖尿病の発症・悪化を防ぎ、血糖値を適切にコントロールすることによって合併症の発症・悪化を予防することが肝要です。

糖尿病治療の原則は“予防第一”です。早期に治療を開始すれば制御可能な疾患であり、血糖値が高い期間が長いほど合併症が起こりやすくなるため、繰り返しになりますが、血糖値の適切なコントロールが重要なのです。食事療法、運動療法、内服薬、インスリン注射と手段はいろいろありますので、かかりつけの医師と相談しながら、粘り強く予防・治療を継続してください。

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