徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)01月31日 月曜日 徳洲新聞 NO.1323 1面

湘南鎌倉病院・先端医療センター
「陽子線治療」スタート
腫瘍に集中照射し副作用軽減

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は1月31日、陽子線治療を開始する。同治療は放射線治療の一種で、腫瘍に対して放射線を集中的に照射し、周囲の正常組織への影響を減らすのが特徴。副作用の軽減につながる。現在、保険適用となっているのは前立腺がん、小児固形がん、骨軟部腫瘍、頭頸部(とうけいぶ)がん。同院は前立腺がんの治療からスタートし、3月から他のがん種にも対象を広げる予定。肺や肝、膵臓(すいぞう)、膀胱(ぼうこう)、腎、子宮(子宮体がん、子宮頸がん)がんなどの治療も先進医療として取り組んでいく。陽子線治療を行う施設は県内では初、全国でも19番目。がん治療の新たな選択肢の提供を通じ、患者さんに貢献していく。

全国19施設目・神奈川県で初

「新たな治療の選択肢を提供」と篠崎院長 「狙った病変に強い線量を集中し副作用軽減」と德植部長

湘南鎌倉病院は2021年4月、がん医療と再生医療を柱とする先端医療センターを開設。陽子線治療は同センターの目玉のひとつだ。

同院はこれまで幅広いがん種に対し外科手術、薬物療法、放射線治療からなる集学的治療を実践し、20年4月には厚生労働省から、がん医療の中核施設である地域がん診療連携拠点病院に指定。救急・急性期医療に加え、がん診療体制の強化に注力してきた。同院は総合病院であるため、がん以外の併発疾患に対しても院内で対応できるのも強みだ。

水素の原子核である陽子を加速したのが陽子線。同院が導入した日立製作所製の小型陽子線治療システム「PROBEAT-M1」では、シンクロトロンという加速器を使用して陽子線をつくり出す。加速した陽子線ビームを、巨大な電磁石の力によって回転ガントリーと呼ばれる装置に導き、病変に照射する。

同院放射線腫瘍科の德植公一・陽子線治療部長(先端医療センター長補佐)は「陽子線は体表面から深い位置でエネルギーが急速に高まり、その後、急速に低下します。こうした性質を利用し、狙った病変に強い線量を集中し、正常組織へのダメージを軽減できます。集学的治療の一部として、より患者さんの身体に負担の少ない陽子線治療を通じ、地域のがん医療に貢献していきたい」とアピールする。

陽子線治療が初めて保険適用となったのは限局性の小児固形がんで16年4月。18年4月には切除不能骨軟部腫瘍、頭頸部非扁平(へんぺい)上皮がん、限局性前立腺がんの3疾患が加わった。同院は1月31日、1例目として前立腺がんに対する陽子線治療を行う。当面は前立腺がんを対象とし、3月からは保険適用となっている3疾患に加え、膀胱、腎、子宮がんなど、呼吸などにともなう動きがない臓器の腫瘍、6月からは肺、肝、膵がんなどの動きのある腫瘍を対象に先進医療として実施する計画。

1月31日に1例目の治療を行う陽子線治療装置 陽子線治療装置が入る先端医療センター(手前の建物)

「患者さんごとに適応判定会議を開き、陽子線治療の対象となるかどうかを慎重に検討します。この会議には放射線腫瘍科以外にも放射線診断科、その疾患の関連診療科の医師、医学物理士、診療放射線技師、看護師の3診療科・3職種以上が参加します」(德植部長)と、手厚い体制を敷く。

同院は従前から高性能放射線治療装置トモセラピーによる放射線治療を実施。德植部長によると、陽子線治療もトモセラピーも、ともに放射線を腫瘍に集中させるという点では目的は一緒だが、「それぞれに得意、不得意がありますので、患者さんごとに個別の検討を行い、最適な治療方法の選択を行います」と説明する。

同院の篠崎伸明院長は「陽子線治療に取り組む医療機関は全国でも19施設と限られています。情報発信にも力を入れながら、これまで適応があったとしても陽子線治療を受けられなかった患者さんに、新たな治療の選択肢として提供していきたい」と抱負を語る。

続けて「当院は4月に臨床腫瘍科を新たに立ち上げる予定です。同科と、がん医療に関連する各診療科が連携を取り、キャンサーボード(多診療科の医師や多職種が最善の治療方針について検討する会議)の再構築などを行いながら、がん医療体制の強化を図っていきます」と意気込みを見せている。

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