徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)01月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1321 1面

「心臓血管センター」が躍動 八尾病院
循環器診療の地域完結目指す

八尾徳洲会総合病院(大阪府)の心臓血管センターが躍動している。循環器内科と心臓血管外科がハートチームとして垣根なく循環器疾患の治療に尽力。清浄な環境や無影灯などを有する手術室と、X線透視装置の配備などによりカテーテル検査・治療室それぞれの特徴をあわせもつハイブリッド手術室も整備した。同院は、大動脈瘤(りゅう)や大動脈解離に対するステントグラフト治療(網目状の金属で覆われた人工血管をカテーテルで留置する治療法)をはじめ、下肢動脈の閉塞病変のなかでも両科の協力を必要とする高度な治療などに同手術室を活用。地域の中核病院として循環器診療の地域完結を目指す。

ハイブリッド手術室を整備

「循環器診療の地域完結が目標です」と内田センター長(左)、薦岡部長

八尾病院は2021年2月にハイブリッド手術室の運用を開始。ステントグラフト治療の開始に合わせて10年に発足した大動脈センターを改組し、4月に心臓血管センターを開設した。同センターでは血管内治療と外科手術により、幅広い循環器疾患に対応している。

「循環器内科あっての心臓血管外科だと考えています。そのため、大動脈センターという名称には違和感がありました。そこで、より実態に近づけるため、冠動脈・弁膜症・心不全なども包含した名称である心臓血管センターに改め、再スタートすることにしました。当院は小所帯ということもあって循環器内科と心臓血管外科の垣根がとても低く、気になる患者さんがいれば、いつでも情報共有して最善の治療方針を検討しています」(内田直里・心臓血管センター長)

「両科が相談し最善な治療方針を決定」と松尾部長

内田センター長は広島大学医学部臨床教授や、公立の循環器病センターの心臓血管外科部長などを歴任後、19年に八尾病院に入職。副センター長は松尾浩志・循環器内科部長と薦岡成年・心臓血管外科部長のふたりだ。

松尾部長は慢性完全閉塞病変の症例を含む年間約700件のPCI(経皮的冠動脈形成術)を手がけ、高度石灰化病変に対するロータブレーターや、閉塞性動脈硬化症など末梢(まっしょう)血管疾患の治療経験も豊富なカテーテルのスペシャリスト。薦岡部長は岸和田徳洲会病院(大阪府)で多数の手術を経験した後、20年に八尾病院に着任。岸和田病院では開心術に加え、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の実施経験もあり、TAVI指導医の資格を有する。現在も同院で非常勤医として月に1~2例のTAVIを行っている。

内田センター長と薦岡部長の着任により、19年以降、弁膜症や冠動脈疾患、大動脈疾患などに対する心臓血管外科手術の実施件数が大幅に増加、胸部大動脈ステントグラフト治療(TEVAR)や腹部大動脈ステントグラフト治療(EVAR)の件数も伸びている。

「地域の中核病院として、この地域(中河内二次医療圏)の患者さんの循環器診療を、他の地域に搬送することなく完結することが当院の最も重要な役割・使命と考えています」と3人は口をそろえる。

ハイブリッド手術室の整備にともない、シーメンス社のARTIS phenoという据え置き型のX線透視装置を導入。血管撮影の必要が生じた場合、従来はモバイルCアーム(移動型X線透視装置)を手術室にもち込み使っていたが、新たな装置の導入により手術中に低被曝で高精細・高画質なX線透視が可能となった。

ARTIS phenoを導入したハイブリッド手術室 ステントグラフト内挿術を施行する様子

「従来は、たとえば大動脈解離の小さなエントリ(血管の内膜にできた裂け目)の治療や、血管の分枝部にステントを留置するような込み入った手技が難しいこともありました。新たに導入したX線透視装置は操作性が良く高画質で細部までしっかりとよく見えるほか、被ばく量の低減も図られ、性能が各段に良いです」と薦岡部長。続けて「今後、施設基準を満たし当院もTAVIに取り組んでいきたい」と抱負を語る。

ハイブリッド手術室の整備以外にも、カテーテル室をリニューアル(X線透視装置の入れ替え)し、320列CT(コンピュータ断層撮影)装置を新たに導入するなど、診療機能を向上。術後のリハビリや退院調整など患者さんごとに方針を検討する時間も設けており、週1回、医師、看護師、理学療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーが、週2回、医師と理学療法士がカンファレンスを行っている。また、他院から紹介された重症例に関して、八尾病院のドクターカーが迎えに行き転院搬送を行う取り組みも開始した。

松尾部長は「循環器内科と心臓血管外科が垣根なくハートチームとして円滑に機能するには、つねに協力し合い、お互いに尊重・尊敬し合うことが最も大切です。当院では患者さんの状態をみて外科的治療、内科的治療のどちらが安全性、有効性、そして長期の成績につながるかを両科で相談して決めています」と強調している。

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