徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2021年(令和3年)12月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1317 1面
8月下旬、全国で一日の新規感染者数が2万5000人超を記録するなど、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症第5波。徳洲会病院がある鹿児島県の離島でも感染者数が増え、一部では島内クラスター(感染者集団)が発生。とくに屋久島、喜界島、与論島、徳之島では徳洲会病院が島唯一の病院として懸命に対応した。現在、国内では感染者が少ない状況が続いているが、新変異株「オミクロン」の出現や海外では一部の国で感染者数が高止まり傾向にあるなど、予断を許さない。離島の病院が今夏経験したことを生かし、第6波に備えることが肝要だ(4面に関連記事)。
島外搬送も天候次第(喜界病院)
徳洲会グループのなかでも、鹿児島県の屋久島徳洲会病院、喜界徳洲会病院、徳之島徳洲会病院、沖永良部徳洲会病院、与論徳洲会病院は、“島唯一の病院”として日頃から地域医療を支えている。いずれも医師など医療従事者数、病院の規模は限られ、喜界島に限っては喜界病院以外、診療所も開設されていない。こうした状況下、第5波の影響により各島で島内クラスターが発生した。
まず、7月、与論島では島内クラスターをきっかけに、与論病院内でもクラスターが発生した。人口約5000人の島で、9月上旬までに感染者数は計150人超に上った。同院は軽症患者さんを主に受け入れるための病床12床を確保し、中等症以上は海上保安庁や自衛隊ヘリなどで島外搬送した。
喜界病院で患者さんに対応する与論病院の高杉院長
その間、外来の一部を電話診療に切り替えるなど制限したものの、救急は通常どおり対応した。与論病院感染対策担当の川上清美・看護副主任は「昨年2回ほど島内クラスターを経験し、ドライブスルー方式のPCR検査など、できることは少しずつ取り組みました」と振り返る。
喜界島では8月に島内クラスターが発生。人口約7000人の小さな島で感染者は計88人に上り、一時期、直近1週間の10万人当たり新規発生者数が国内はもとより、世界でも最悪レベルになった。喜界病院感染対策担当の吉川奈々・看護師長は「島内に宿泊療養施設がなく家庭内感染が原因でした。急激な増加に、何から手をつけていいのかわかりませんでした」と述懐する。
当時、他地域でも陽性者が増え、悪天候も重なり島外搬送はできず、原則、自院での対応を決定。最大5床のコロナ専用病床を確保した。浦元智司院長ら医師が自宅療養者に毎日、電話で状態を確認し、「早めに入院する体制を敷いたため、重症化した方はいませんでした」(徳丸順子・看護部長)という。
WEBを活用し行政とミーティング(与論病院)
屋久島も8月に入り島内クラスターが発生。11床の専用病床を確保し、軽症患者さんに対応した。泊春代・看護部長は「山本晃司院長の“島に病院は当院しかないから外来も入院も通常どおり”との方針で、一切制限しませんでした」と強調する。
同院看護部感染対策委員長の鍵本喜美恵・看護師長は「職員から感染者を出さなかったことで、乗りきれました。陽性患者さんを受け入れやすいように、スタッフが自発的に活動するなど、皆が同じ気持ちであることがわかり、個人的には感動しました」(鍵本・看護師長)。
徳之島は8月中旬に島内クラスターが起こり、それがきっかけで院内クラスターも発生。中等症以上は島外搬送の予定だったが、天候不良で搬送できず、一時期、中等症Ⅱの方まで受け入れた。
「天候が回復して搬送しましたが、コロナ患者さんの島外搬送そのものが初めて。とても緊張しました。その間も救急をはじめ出産、透析、緊急手術、緊急入院、一般診療などは制限しませんでした」と大倉さとみ看護部長は説明する。
重症患者さんに対応する徳之島病院のHCU(高度治療室) 。病棟スタッフはこの光景を忘れぬよう写真を病棟に掲示
限られた医療環境ながらも、各病院が島内クラスターを乗りきれたのは現場スタッフの努力はもちろん、徳洲会グループ内外のサポートも大きい。徳洲会グループでは島外の病院の医師や看護師、本部機能を有する一般社団法人徳洲会の職員が現地入りし、サポートした。喜界病院の浦元院長は「与論病院の高杉香志也院長が駆け付けてくださり、私たちが何をすべきかがわかっていきました」と謝意を表す。
高杉院長は「当院も経験し、大変さは身に染みてわかっています。グループのバックアップがあるとはいえ、当然すぐにとはいきません。サポートが入るまでの間、何かできればと思いました」と説明。このほか、本土の病院と電子カルテを共有し、診断支援などを受けたケースもあった。
また、与論病院の上恵理子・看護部長や喜界病院の辻﨑理奈・看護主任もグループのサポートに「院内の体制づくり、情報共有・伝達の方法、PPE(個人防護服)の着脱など、本当に助かりました。いざとなると対応できないことがよくわかりました」と謝意を示す。グループ外では保健所や行政、鹿児島大学病院、鹿児島県庁など多様な関係者が支援に入った。
今回の経験を生かし、各病院は第6波への備えを固める方針だ。「感染対策のハンドブック作成・配布」(喜界病院の石原都美・看護副主任)以外にも、手洗いのタイミングの唱和、感染情報の共有、感染管理認定看護師の育成などが上がっている。徳之島病院の感染対策担当である大山若代・看護師長は「“感染対策は日常業務”と再認識しました。基本の徹底に努めたいです」。