徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2015年(平成27年)6月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.985 四面

アルツハイマー病
髄液検査で診断精度向上
湘南藤沢徳洲会病院

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)はアルツハイマー病(AD)の疑いがある患者さんに対し、脳脊髄(せきずい)液中のアミロイドβ42(タンパク質の一種)の測定を開始した。同検査と、認知症に対する従来検査を組み合わせることで、ADの診断精度を上げる狙い。同検査の実施施設は国内でも極めて少なく、今後は徳洲会グループの離島・へき地病院から送られた脳脊髄液を同院で検査することも検討している。

アミロイド検査に取り組む伊藤部長(右)と大嵩医師(中央)、原田副主任 アミロイド検査に取り組む伊藤部長(右)と大嵩医師(中央)、原田副主任

ADは患者さんが亡くなってから行う病理解剖によってのみ診断を確定することができる。治療は、質問式検査や画像検査による生前の臨床診断に基づいて行っており、診断精度の向上が業界全体の課題。そんななか、近年、注目を集めているのが脳脊髄液中の特殊なタンパク質の検査だ。

とくに髄液中のアミロイドβ42は、AD発症の10年近く前から減少することがわかっており、本人や家族も察知できないプレクリニカルな(臨床症状のない超早期)段階で、同疾患の発症率を予測できる可能性のあるバイオマーカーとして期待されている。

湘南藤沢病院では亀井徹正総長の指導の下、アミロイドβ42の測定を1月から開始し、これまでに25例を測定した。

神経内科専門医である亀井総長、伊藤恒・神経内科部長、大嵩紗苗・神経内科医師が外来診察をとおして認知症の疑いがあると判断した症例が対象。同院の認知症クリニカルパス(診療計画表)に従い、2泊3日の日程で、ミニメンタルステート試験(MMSE)、前頭葉機能検査(FAB)、臨床認知症評価法(CDR-J)など質問式検査、MRI(磁気共鳴画像診断)、SPECT(脳血流検査)など画像検査。

さらにEEG(脳波)、ビタミンB群や甲状腺ホルモンを含めた血液検査など従来検査に加え、髄液検査を実施。

伊藤部長は髄液検査の利点として、結果を定量化できる(数値で示せる)点を挙げる。脳内にアミロイドβが蓄積しているかどうかは、PET(ポジトロン放射断層撮影)検査で調べることもできるが、画像検査は定量化が難しい。また質問式検査は点数で評価できるものの、患者さんの教育歴や精神的緊張の程度が影響することがある。髄液検査ならアミロイドβ42の量を生化学的に捉え、定量化が可能だ。

だが、同検査も万能ではない。髄液中のアミロイドβ42の数値が正常値より明らかに低くてもADに移行しないケースがあり、「ひとつの検査結果だけでADかどうかを判断するのは危険です」と伊藤部長。

複数の検査を行うことで、たとえばMMSE21点以下(認知症の可能性が高い)の患者さんも、アミロイドβ42の数値が良ければ、「ADではないかもしれない」という視点をもつことができ、逆にMMSEの点数が高めでもアミロイドβ42の数値が悪ければ、将来的にADに移行する可能性を考慮して対応することができる。

検査項目さらに追加へ

手作業で抗体や試薬を検体に加えていく 手作業で抗体や試薬を検体に加えていく

AD患者さんの脳内には、アミロイドβが蓄積した「老人斑」や、リン酸化したタウタンパクが蓄積した「神経原線維変化」が認められる。この影響で、AD患者さんの髄液では認知機能障害など臨床症状が発現する前から、これらのタンパク質の数量が変化することがわかってきている(アミロイドβ42は減少、リン酸化タウは増加)。

同院では現在、アミロイドβ42のみを測定しているが、今後はリン酸化タウ測定検査も導入を検討。リン酸化タウはアミロイドβ42ほど早期から髄液内の数量が変化するわけではないが、脳細胞の破壊に直接影響しているためADを判断する指標としての意味は大きい。

両者の数値が変化する時期にズレがあることから、「アミロイドβ42とリン酸化タウの比を算出することで、ADへの移行を予測したり、進行状況をより高精度に判断したりできると思います」と伊藤部長は意気込む。

課題は測定手技の難易度が高い点。髄液中アミロイドβ42の測定は抗原抗体反応を利用したELISA法で行うが、同院にある機器では全手技が手作業。「当院では他の検査は、ほぼ自動化しており、手作業の経験はほとんどありませんでした」と、伊藤部長とタッグを組んで同検査に取り組んできた臨床検査部の原田昌典副主任は明かす。

同院は手探りでノウハウを蓄積。原田副主任は「手技の手順やスピードがわずかに違っただけで、結果が大きく変わってしまうため緊張しますが、ふだん行わないことをする面白さがあります」と笑みをこぼし、「今後も地域の中核病院として、専門外来を手助けしていきたい」と熱く語る。

現時点ではADの根治手段はないが、薬物療法や生活習慣の改善などが進行を遅らせる可能性があることがわかってきており、診断精度を向上させることで「その後のライフプランを考える機会を提供できるのではないでしょうか」と伊藤部長。

同検査実施施設が国内でごくわずかしかないことから、亀井総長や伊藤部長は徳洲会の離島・へき地病院で採取した髄液を凍結して搬送し、同院で検査する形の検査協力を検討している。

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