直言
Chokugen
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直言 ~
黒木則光(くろぎのりみつ)
湘南厚木病院院長
2015年(平成27年)4月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.977
当院は2005年9月に新設された許可病床253床の中規模病院です。今年9月で開院して満10年になります。現在、徳洲会グループには23の研修指定病院がありますが、当院が最も歴史が浅く07年に認定されました。
同じ神奈川県には徳洲会を代表する湘南鎌倉総合病院や湘南藤沢徳洲会病院があります。そのなかで研修医や医師、コメディカルを確保するのは正直、至難の業です。
それでも今まで初期研修医11人が卒業。3月には当院で初期から後期まで研修を積んだ大城雄(おおしろゆう)・後期研修医が国立がん研究センターに、さらなる研鑽(けんさん)を求めて旅立ちました。中規模の研修指定病院として少しずつ実績を残してきていると思います。
しかし経営的にはなかなか結果を出せていません。昨年4月に土田芳彦・湘南鎌倉病院外傷センター長の整形外科外傷チームが仲間に入ってくださり、9月には回復期リハビリテーション病棟をオープンし黒字転換しました。その喜びも束の間、今年再び経営が厳しくなっています。
当院の半径10㎞圏内には東海大学医学部付属病院、厚木市立病院、東名厚木病院、伊勢原協同病院、海老名総合病院があります。昨年度、厚木市の救急車出動台数は約1万1000件。当院の救急車受け入れ実績は2607台と4分の1にも達していません。他院も救急の受け入れに積極的なため救急だけでは病床を埋められず、こうした状況が苦しい経営につながっています。
「経営者は新しいことにチャレンジし続けないと、組織は衰退する」と、一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫理事長は話されます。当院も昨年は整形外科外傷センターと回復期病棟のオープンで活気づきましたが、そこに胡坐(あぐら)をかいた途端に発展が止まりました。
今年度は、また新しいことにチャレンジしていかなければなりません。現在閉じている2階の日帰り手術センターを、今後は整形外科外傷センターと日帰り手術病棟に改築する予定です。現在、整形外科外傷センターのある4東病棟は、別の構想でオープン予定、新たに医師や看護師の採用も必要になります。
そのためには職場環境を整えなければなりません。今年3月まで、残念ながら多くの離職者が出ました。グループ病院からたくさんの応援をいただき、何とか新年度を迎えられたものの、離職者が多い病院に未来はありません。
私の使命は離職者を減らすと同時に、職員がプライドをもって働くことができる職場にすることです。組織のリーダーにはカリスマ性のある人が必要なのかもしれません。しかし、私にはそのような才能もなければ、経営のいろはも知りません。できることは職員と一緒に汗を流し、現場で協働することぐらいです。
私には師事する4人の先生がいます。中学・高校時代に医師の道に導いてくださった宮崎医科大学の学生だった恩師。湘南外科グループに入ってからはメスのもてる内科医を目指そうと、外科領域はもとよりプライマリケア医として診療にあたる湘南藤沢病院の篠崎伸明(のぶあき)院長。東京西徳洲会病院の渡部和巨(わたなべかずなお)院長、福岡徳洲会病院外科の川元俊二部長には、外科チーフ時代から手術手技を数多く教えていただき、大和徳洲会病院や四街道徳洲会病院の勤務時に、肝胆膵(すい)の高度技能を要する手術に、いつも快く飛んで来てくださり指導いただきました。
中部徳洲会病院の伊波潔(いはきよし)院長、南部徳洲会病院の赤崎満(あかさきみつる)院長には、私が四街道病院に転勤した際、職員不足で困っていたら医師たちの応援を出していただくなど、グループの懐の深さを痛感しました。
神奈川の県央地区で地域医療にどのように貢献できるかが、当院の今後の課題になります。常に新しい発想をもって患者さんのニーズがどこにあるかを探り、他院にはないサービスを提供できる病院を目指します。これまでに当院はグループ病院からたくさんの応援をいただきました。困っている患者さんに対して診療科を問わず診察するという医師としての姿勢、職員不足の病院に対して自院の安定だけにこだわらず、率先して応援を出してくださった徳洲会グループの精神のなかに、当院が競争の激しい県央地区で生き残る活路があると思います。当院も離島・へき地や職員不足で困っている病院、介護施設に積極的に応援を出せるよう、皆で頑張りましょう。