2015年(平成27年)4月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.977 四面
湘南鎌倉総合病院
県がん診療連携指定病院に
国の拠点病院と同等の機能認定
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は4月1日、同県から「神奈川県がん診療連携指定病院」の指定を受けた。同指定病院は、国が指定する地域がん診療連携拠点病院と同等の機能を有する病院を、県独自に指定する制度。同県では同院を含め指定病院は8施設となった。大規模急性期病院として幅広い診療科をもつ同院は総合力を強みに手術、化学療法、放射線治療による集学的治療の提供を通じ、地域のがん医療の充実に一層貢献していく考えだ。
総合力を強みに地域に貢献
指定書を受けとる塩野院長(左)、右は神奈川県の長谷川部長
湘南鎌倉病院の塩野正喜院長は3月26日、神奈川県庁での指定書交付式に臨み、保健福祉局保健医療部の長谷川嘉春部長から指定書を受け取った。指定期間は2015年4月1日から19年3月31日までの4年間。
長谷川部長は「がん診療連携拠点病院と同様に、専門的ながん医療や緩和ケアの提供、地域の医療機関との連携、がん患者さんの相談支援などにご尽力をお願いします」と期待を表明。
塩野院長は「これを契機に、さらにがんの診療体制の充実を図っていきたいと考えています。当院ではハード面も含め、がん医療の強化を計画しています。各診療科の体制充実にも注力していきたい」と抱負を語った。
同指定病院は、地域のがん診療の中心となる病院を整備するために同県が11年に開始した制度。国が指定する地域がん診療連携拠点病院と同等の機能を有する病院が指定対象で、書類審査と実地審査の結果、要件を満たしていれば承認される。「二次医療圏に1カ所以上」が県の整備目標だ。
指定書を持つ塩野院長と、左から門谷・副薬剤部長、守屋・診療情報管理室係長、下山・外科部長
同院は手術、化学療法、放射線療法により、5大がん(胃・大腸・肺・乳・肝)はもちろん、さまざまながんの治療に対応。院内に準備委員会を設け、数年前から指定取得を検討してきた。がん治療を専門に行う同院オンコロジー(腫瘍学)センターのセンター長を務める下山ライ外科部長を中心に取り組みを加速。書類、実地の各審査をパスし今回の指定に至った。
下山部長や、準備委員会の中心メンバーとして活動してきた門谷靖裕・副薬剤部長(がん薬物療法認定薬剤師)、守屋貴博・診療情報管理室係長(院内がん登録責任者)は、「今まで当院が取り組んできたがん医療を、改めて認めてもらうことができました。今後も体制の充実を図りながら医療の質を高めていき、より一層、地域のがん患者さんのために貢献していきたい」と口をそろえる。
また下山部長は「当院の強みは総合力です。透析や心疾患など合併症のあるがん患者さんの治療を行うには、合併症も同時に診ていく必要があります。それには幅広い診療科がそろっており、診療科間でしっかりと連携の取れている総合病院でなければ難しいことです」とアピールする。
同院では院内向けの勉強会や委員会に加え、年に2回、地域の医療関係者を招き、がんの症例検討と医療連携を目的とした情報交換会を開催。また、院内・地域の医療関係者向けに「緩和ケア研修会」も年2回実施するなど、地域の基幹病院としての活動を続けている。今後は、さらに地域の病院や診療所との連携を深めていく考えだ。
門谷・副薬剤部長は「がんの薬物療法に携わる薬剤師として、副作用による治療の中断を減らせるよう、より良い抗がん剤治療を実施していきたい」と意気込む。また、「適切な治療が受けられず遠方の病院への通院・入院を余儀なくされたり、効果のある治療法の選択肢がなくなったことを理由に、終末期の状態で医療機関から見放されてしまう“がん難民”が数多くいたりします。がん難民をなくし、検診から治療、必要なら看取りまで、患者さんの目線に立ち、信頼に応えていきたい」と思いを語る。
指定病院になると拠点病院と同様に、がんの診断・治療内容を集約した院内がん登録の情報を、国(国立がん研究センター)に報告する必要が生じる。また16年からは全国がん登録が義務化され、がん診療を行う全国の病院と都道府県が指定する診療所に報告義務が課される。日本人の2人に1人が罹患(りかん)し、3人に1人が命を落としているだけに、がん対策は国を挙げた対策が重要。これを策定するうえで、がん登録は重要なデータになるほか、拠点病院や指定病院は病院ごとに一部データが公表されることから、患者さんに向けての大切な情報ツールになる。
守屋係長は「院内がん登録を担う職員のスキルアップに取り組んでいます。現在、国が実施する初級者研修の修了者が6人、中級者研修の修了者が2人います。精度管理などを行い、しっかりとしたデータを整備し、当院のがん診療や日本のがん医療の向上に貢献していきたい」と話している。同院は今後の計画として、緩和ケア病棟や、最先端のがん医療を提供するがんセンター設立の構想などがある。