2015年(平成27年)4月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.977 三面
日本内科学会総会・講演会
新たな価値観を創造
徳洲会グループは12演題
第112回日本内科学会総会・講演会が4月10日から3日間、京都市で開催された。テーマは「イノベーションで拓く内科学」。新たな価値観の創造に向け幅広い分野の講演、発表があった。徳洲会グループは12演題を発表、その概要を紹介する。
MSWが地域との架け橋
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)河崎さつき 内分泌・糖尿病内科医長
「高齢2型糖尿病患者の臨床像―認知症に注目して―」。2型糖尿病で外来通院している1367人のうち75歳以上の253人を対象に、合併症、治療内容、家族のサポート状況、認知症の合併などを調査した。
結果、高齢2型糖尿病患者さんの多くが糖尿病網膜症、腎症をはじめ、冠動脈疾患、末梢(まっしょう)動脈疾患やがんを合併。72人(28%)は認知症を認め、うち10人は認知症にもかかわらず独居だった。河崎医長は、高齢化に向け医療と地域社会との連携が重要と訴え、同院では医療ソーシャルワーカー(MSW)が患者さんを支援、地域との架け橋となっていることを紹介した。
シスタチンC検査推奨
鎌ケ谷総合病院(千葉県)望月猛・整形外科・リウマチ科部長
「関節リウマチの腎障害と関連因子の検討~当院における薬物治療の実際~」。関節リウマチは薬物療法の進歩によりコントロール可能例が増えているが、それにともない薬剤副作用による腎障害や感染症などのリスク管理の必要性が高まっている。そこで関節リウマチ398例を分析、薬物療法と腎障害の関係性を探った。
結果、関節リウマチ患者さんの腎障害有病率は20~40%、軽度腎障害は約70%。年齢と血清シスタチンC(腎機能の指標)との相関関係が最も強かった。慢性腎臓病(CKD)ガイドラインでもシスタチンCによる腎機能評価を推奨していることから、望月部長は高齢患者さんへの同検査実施は軽度腎障害の見逃し防止につながる可能性を示唆した。
透析例の認知症予防
湘南厚木病院(神奈川県)真栄里恭子・内科医師
「血液透析患者の大脳と海馬の萎縮に関する検討」。外来血液透析患者さんのうち、脳血管疾患の既往などがない34人について大脳および海馬の萎縮割合を評価。
結果、透析群の大脳全体は健常者に比較し中間値11.3%分の萎縮、海馬は中間値7.72%分の萎縮を認めた。動脈硬化危険因子のひとつである血清ホモシステインは約9割で高値だった。大脳萎縮割合は加齢と、海馬萎縮割合は高ホモシステイン血症と強く相関したが、両者は低栄養や動脈硬化度とも関係。
真栄里医師は透析患者さんの脳萎縮予防に栄養障害や動脈硬化の予防、ホモシステイン低下療法が重要と訴えた。
認知機能低下の機序
茅ヶ崎徳洲会クリニック(神奈川県)鬼頭昭三院長
「アルツハイマー病モデルとしての〝脳の糖尿病〟ラットの海馬歯状回神経機構」をテーマに、冲中(おきなか)記念成人病研究所と共同研究した。アルツハイマー病のモデルとなる「脳だけ糖尿病にしたラット」の脳内にインスリン注射すると、異常が消失するため、過去の研究で「アルツハイマー病とは脳の糖尿病」と結論。今研究では大脳から入力信号を受ける海馬歯状回顆粒細胞の樹状突起棘の数を算定した。
結果、モデルラットの棘は正常ラットと比べ減少。インスリンでも回復しないのは神経活動の上昇で棘の新生とともに古い棘が消失したためと推察。モデルラットは樹状突起も延長しており神経障害に対する修復と推論、これはインスリンで抑制できた。認知障害はまず海馬への入力障害、次いで脳内インスリン情報伝達低下を来すと結んだ。
地域ぐるみで疾病予防
皆野病院(埼玉県)後藤敏夫・内科医師
「医療過疎の中、地域ぐるみで取り組む糖尿病透析予防(第二報)医療機関と行政の連携協働によるデータヘルスの新たな展開と成果」。同院で加療中の糖尿病患者さん532人の疾病管理マップを作成。糖尿病性腎症3期以降で透析導入が近いと予測される患者さんを抽出し、看護師や栄養士による減塩・飲水指導と腎保護薬リラグルチドの投与、町の保健師や栄養士による在宅訪問での減塩指導などにより、患者さんの行動変容を支援。
結果、透析を回避または透析導入までの期間を大幅に延長できた。後藤医師は専門医がいない病院でも地元行政と連携・協働することで、糖尿病透析予防の成果を上げることが可能と報告した。
透析例にアブレーション
葉山ハートセンター(神奈川県)仲村佳典・不整脈センター医長
「心房細動を合併した慢性血液透析患者に対するカテーテルアブレーションの塞栓症予防効果と治療後の不整脈再発率の検討」。慢性血液透析患者さんは心房細動(不整脈の一種)の合併が多く、塞栓症リスクも高い。塞栓症予防のために通常行う抗凝固療法も、非透析例に比べ出血リスクが高く、透析患者さんに合併した不整脈治療は課題が多いが、同院では透析医との連携の下、根治が期待できるカテーテルアブレーション手術を施行。
結果、透析中の心房細動例17例のうち16例で、平均1.9回の施術で洞調律(心臓の正常リズム)を維持し塞栓症発生も抑制。「透析患者さんにもアブレーション手技は有用性が高い」と報告した。