徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)9月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1304 四面

読み解く・読み得 紙上医療講演48
オーラルフレイルを予防

国内の65歳以上人口は3619万人で、高齢化率は28.8%に上ります(2020年10月時点)。"人生100年時代"の到来が現実味をもって語られるなか、健康寿命の延伸が大きな課題です。そのキーワードのひとつが "オーラルフレイル"。口腔機能の低下を意味し、予防や改善に努めなければ全身の機能低下・虚弱から要介護状態を招いてしまいます。今回はこのオーラルフレイルについて館山病院(千葉県)歯科口腔外科の西尾可苗医師が解説します。

西尾可苗・館山病院歯科口腔外科医師

要介護の状態に至るプロセスは2とおりあります。ひとつは直下型フローと呼ばれ、脳梗塞や心筋梗塞など重大なイベントの発生にともない、身体機能が突然大きく低下することを意味します。そしてもうひとつが虚弱型フローで、長い時間をかけ徐々に機能が低下し、前虚弱(プレ・フレイル)状態を経て、虚弱(フレイル)に至り、最終的に要介護状態になります。

虫歯や歯周病を放置したり、固いものが食べにくいからといって軟らかいものばかり食べたりしていると、かむ力が弱くなり、食べる機能が低下してしまいます。次第に"食べこぼし"や"むせ"も起こるようになり、お口のささいなトラブルが、このように連鎖していくと、食欲の低下からエネルギーやタンパク質、食物繊維、ビタミンなどの摂取量が減少し、低栄養による身体面のフレイルやサルコペニア(筋肉減少)を来します。

オーラルフレイルは、このようにお口に関するささいな衰えが身体全体の機能低下にまでつながる"負の連鎖"に対し、警鐘を鳴らす概念です。

しかし、お口の機能低下は予防が可能で、訓練することで機能回復を図ることもできます。これから予防策や訓練方法を紹介します。健康寿命を延ばすために、ぜひ実践してください。

まず、かかりつけの歯科医をつくり、定期的に歯科健診を受けることが大切です。虫歯や歯周病に加え、かみ合わせや口臭についても相談に乗ってもらい、口腔機能が低下していないかを診てもらってください。定期的な歯科健診はお口の衰えだけでなく全身の衰えを防ぎ、健康を守ってくれます。参考にセルフチェック表を掲げました。3点以上の方は、すぐに歯科健診をおすすめします。

次に紹介するのは「カムカム調理」です。かめないからといって軟らかいものばかり食べていると、さらにかめなくなるため、少し歯ごたえのある食事を摂るように心がけてください。具体的には①水をやや少なめにし、固めにご飯を炊いたり、白米に雑穀などを加えたりする②レンコンやゴボウ、ナッツ類、こんにゃくなどかみごたえのある食材を取り入れる③食材を大きめに切る④加熱時間を短くする――です。

続いて、お口の機能のトレーニングとして「パタカラ」の発音訓練をおすすめします。舌や唇をうまく使わないと発音が難しい音を組み合わせた訓練です。食べ物を押しつぶしたり飲み込んだりする一連の動作に欠かせない機能を訓練できます。

訓練方法は、最初は「パ・パ・パ・パ・パ」とゆっくりひと息に発声します。これを3回繰り返しタ、カ、ラについても3回ずつ同様に発声します。続いて、「パパパパパ」と速い発声を3回繰り返します。タ、カ、ラについても同様です。毎日続けることが大切です。

ゴロゴロうがいなども効果が期待できます。感染予防にもなりますので、ぜひ毎日欠かさず行ってください。

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