徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)7月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1295 四面

読み解く・読み得 紙上医療講演46
認知症治療薬の動向

高齢化が進む日本をはじめ世界でも認知症の治療は久しく重要なテーマになっています。そんななか認知症の原疾患で最も多いとされるアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」が6月7日に米国で条件付き承認となり、注目を集めています。認知症患者さんの治療を手がけるかたわら、同治療薬を含め認知症関連の治験を複数行っている山形徳洲会病院の天笠雅春副院長(脳神経外科専門医)が認知症治療の現状を解説します。

天笠雅春・山形徳洲会病院副院長 山形病院の臨床試験センタースタッフ

認知症は原因などによって大きく①アルツハイマー型、②レビー小体型、③脳血管性、④前頭側頭型の4類型に分かれます。このうち、全体の半数以上を占め、最も多いとされているタイプがアルツハイマー型です。アルツハイマー病を原疾患とし、端的に言えば脳にアミロイドβタンパク、タウタンパクという2つの物質が蓄積することで、脳の神経細胞が死滅、多様な症状を引き起こすことがわかっています。蓄積する仕組みは明らかになっていませんが、加齢現象という見方や、最近では虫歯や歯周病、過敏性腸症候群(下痢など)などのウイルスや細菌の関係を指摘する声もあります。

認知症の治療は薬物療法とケアやリハビリテーションによる非薬物療法になりますが、現状は、進行を遅らせたり症状を抑えたりする「対症療法」でしかありません。しかし、6月7日に米国で根治薬として期待される「アデュカヌマブ」の製造・販売が条件付きで承認され、近い将来、治療法が変わることが期待されています。

アデュカヌマブはアルツハイマー病の治療を目的に、もともと人間の体内にある抗体からつくられた点滴薬で、米国のバイオジェンと日本のエーザイが共同開発しました。投与すると、抗体による免疫反応によって蓄積したアミロイドβに付着、除去します。患者さんの体重などにより、容量を決め、おおよそ月1回、1時間投与します。疾患の発生メカニズムに直接作用する薬は今までなく、世界初の薬として注目を集めています。主な対象は軽度の方です。

日本では昨年12月に承認申請されました。米国で承認されたことを受け、日本でも近々、承認される可能性が高いと考えられます。認知症患者さんの多さからも"希望の光"と言えますが、一般的に、使用されるまでにはクリアすべきハードルが少なくありません。

同治療薬の臨床試験は国内外で行われていますが、効果やリスクなどを検証するためのデータが十分とは言えない状況です。徳洲会グループでも当院、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、湘南厚木病院(同)、岸和田徳洲会病院(大阪府)が治験を実施していますが、対象に合致するケースが少ないのが現状です。このため米国でも引き続き臨床試験を行うなど「条件付き」となり、状況に応じて承認取り消しもあり得ることになりました。

また、アミロイドβの蓄積度合いを調べるアミロイドPET検査などが必要と考えられますが、日本では実施できる施設が限られます。同検査は保険適用になっておらず、アデュカヌマブの費用そのものも高額です。

とはいえ国内外で、さまざまな研究が行われており、当院でも認知症に関連する治験を複数行っています。認知症に関する診断や治療は、今後、もっと新しい方法が開発されると考えます。

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