徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

大橋 壯樹(おおはしたけき)医療法人徳洲会 専務理事<br>名古屋徳洲会総合病院 総長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

大橋 壯樹(おおはしたけき)

医療法人徳洲会 専務理事
名古屋徳洲会総合病院 総長

2021年(令和3年)7月5日 月曜日 徳洲新聞 NO.1294

交流することは弱点を知る良い機会に
それを学び克服しなければ後塵を拝す
徳洲会内外での切磋琢磨が発展につながる

「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」。当院で研修を行った王海慶先生に会うため、2019年に中国の済寧市第一人民病院を訪問した時、私たちの歓迎のために飾ってあった言葉です。山東省済寧市(人口約800万人)にある同院は約120年の歴史をもち、病床数4200床と日本では考えられないほど大きな病院でした。孔子の墓地に近く、病院の壁の至る所に論語が掲げられていました。同院は驚くほどコンピュータ化が進んでおり、導入されている設備や医療機器も最先端のレベルで、熱烈な歓迎もさることながら巨大で先進的な病院に圧倒されました。その後、同院の院長以下訪問団が当院を訪れ、姉妹病院の提携を行いました。

また、一般社団法人徳洲会国際部の紹介で、陝西(せんせい)省西安(せいあん)市にある陝西人民病院心臓血管センターを訪問しました。心臓外科の先生方と、お互いの現状をスライドで発表し、さまざまな症例の検討会を行った後、2日間、心臓手術の見学をさせていただきました。その後、同院からも若い心臓外科医が1週間、当院と岸和田徳洲会病院での手術を見学されました。

互いに尊敬しながら国を越え 学び合うのは最高の楽しみ!

中国の病院での心臓外科手術件数は、日本と比べ桁違いに多く、先進的な治療も積極的に取り入れており、日本が学ぶべきところは多くあります。現在は手術ビデオの視聴を通じ交流していますが、コロナ禍が終息した折には、相互の人事交流を行うことを約束しました。心臓血管外科を学び上達しようとする同志が、お互いを尊敬し合いながら国を越え交流するのは最高の楽しみです。

さらに、このような交流がきっかけで、今年5月8日に中国、台湾、英国、日本の心臓血管外科医が大動脈治療に関しオンラインでカンファレンス(症例検討会)を行いました。ざっくばらんに気兼ねなく大動脈解離、腹部大動脈瘤(りゅう)などの診断、治療について活発な発表と討論を行いました。この模様は中国のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で中継され、1万3000人余りの視聴があったとのことです。参加費は無料で、利益相反もなく、まさに現場で実践する医師たちの生の声を聞けたことはとても新鮮で、今後も3カ月ごとに開催することになりました。

徳洲会グループ内でも交流が始まりました。後期研修制度を利用して、岸和田病院、宇治徳洲会病院をはじめ若い心臓外科医たちが、3カ月のローテーションで交換研修をすることができました。心臓血管外科を専攻し始めた若い先生が、徳洲会グループのなかで一緒に仕事をして交流することは、お互い刺激になります。自分の習熟度や病院の技術・学術レベルもわかります。若さのあまり個性がぶつかり合うこともありますが、彼らは良きライバルであり、そして良き仲間です。切磋琢磨(せっさたくま)することは徳洲会のみならず、日本の心臓外科の発展にとって大いに役立つと思います。

交流することは自分の弱点を知ることにもなります。それを学び克服することが大切です。弱点を見せることを恐れ、交流しなければ、先進の治療から遅れることになります。心臓血管外科のみならず、他の専門分野や職種でも、徳洲会グループ内外で活発な交流を行うことは、徳洲会の将来の発展につながると信じています。

年齢や肩書などに拘泥せず 志を共にする朋友の大切さ

当院で心筋梗塞後中隔穿孔(せんこう)に対してカテーテル型補助人工心臓で心臓を休ませ、2週間後に手術をしたことを医学雑誌で報告すると、すぐに大学の恩師である川島康生先生(大阪大学名誉教授)から、お祝いの手紙をいただきました。一流雑誌に投稿したわけでもないのに、その手紙は喜びに満ちたものでした。当時、川島先生の前では誰もが直立不動になるほどでしたが、補助循環についての過日の苦労話が詳しく書かれており、歳を重ねても、なお衰えない興味と情熱に感動しました。私などは、まだまだ勉強しなければと思うと同時に、このようなメンター(良き指導者)に出会えた幸せをあらためて感じました。

ひとつの分野で志を共にする朋友が、場所、職種、年齢、肩書にこだわらず交流することは、学ぶ者にとって興味が尽きず楽しみ以外の何物でもありません。コロナが終息し、また多くの交流が行えることを楽しみにしています。皆で頑張りましょう。

PAGE TOP

PAGE TOP