2020年(令和2年)9月21日 月曜日 徳洲新聞 NO.1254 二面
病気のはなし㉘
コロナ禍で増加傾向に うつ病
うつ病は特定の人だけがかかるのではなく、状況次第で誰でもかかり得る疾患だ。日照時間の減少など季節要因が影響することもあるが、いちばんのきっかけは喪失体験。家族や友人、恋人、仕事など大切なものをなくしたことが原因で発症するケースが多い。コロナ禍で多くの人が多くのものをなくし、うつ病は増加しているというが、「今回の場合は皆が平等に平穏な日常を失っており、痛みを分かち合える点が個人的な喪失体験とは異なります」と日野病院(神奈川県)の馬場淳臣院長。
従来は、こうした外的要因による反応性のうつ病と内因性のうつ病を区別していたが、現在は明確な壁はなく、複数の要因が絡み合って発症するという考え方の下、原因を追究し、現れる症状に焦点を合わせ治療する方針になっているという。
うつ病治療というと、抗うつ剤と思われがちだが、馬場院長は「薬物療法は解熱剤や痛み止めのようなもので、薬物だけで、うつ病が治ると考えてはいけません」と指摘。休養、環境調整、精神療法を組み合わせて治療する。
人は悲しいことがあると落ち込んだり、疲労すると何もやる気が起きなくなったりするものだが、一方で、どんなにつらいことがあっても、時が経てば笑えるようになる生き物。「しっかり休養しても疲れが取れない、元気が出ない場合は精神科を受診してください」(馬場院長)。