2020年(令和2年)9月21日 月曜日 徳洲新聞 NO.1254 一面
徳洲会放射線部会
新手法の全身MRI撮影を推進
価格優位のがん検査「DWIBS法」
徳洲会放射線部会は、MRI(磁気共鳴画像診断装置)で全身を撮影する新手法であるDWIBS(ドゥイブス)(背景抑制広範囲拡散強調画像)法を用いた検査を推進している。これは主に悪性腫瘍(がん)の発見や転移の検索、化学療法や放射線治療の効果判定などに用いる。造影剤不要で放射線被曝もなく、低価格なのがメリットだ。同部会では新しい有意義な検査方法として、グループ病院で実施できるように取り組んでいる。
造影剤不要で放射線被曝なし
これまでMRIの腹部撮影では、呼吸運動がネックになると考えられてきたが、東海大学の高原太郎・工学部医用生体工学科教授の研究により、自由呼吸下で撮影しても影響を及ぼさないことがわかった。これにより長時間の撮影が可能になり、細かいデータを測定することで、三次元的に全身を撮影できるようになった。
こうして2004年にDWIBS法が開発され、これまで一度に体の一部分のみの評価しか行えなかったMRIによる拡散強調画像(DWI)が、一度の検査で全身撮影できるようになった。DWIは造影剤を使用しなくても撮影可能であり、放射線被曝もないことから、DWIBS法は安全に全身を評価できる。
DWIBS法では低コストかつ放射線被曝なしで全身撮影ができる
オンラインで実施した徳洲会放射線部会ブロック長会議
DWIBS法は全身のがん検索に加え、がん組織の活性の評価、化学療法や放射線治療の効果判定での有用性が高く、多くのがんの評価に使用できる。正常な細胞の多くは比較的、細胞間の水分子の拡散制限が少ないのに対し、悪性腫瘍や炎症、膿瘍(のうよう)、細胞性浮腫などは水分子の拡散が制限され、画像上、濃淡の違いが生じ、病変の検出力が高い。DWIBS法で撮影した画像は、病変が強調されて表示されるため、がん病変の位置や大きさ、分布がわかりやすく、全身のスクリーニングにより転移の有無も確認できる。
徳洲会放射線部会は6月13日、WEB会議システム「Zoom」を使いブロック長会議を開催。経営対策としてDWIBS法を挙げ、鎌ケ谷総合病院(千葉県)で実施している撮影法が紹介された。
部会長の服部篤彦・同院放射線科技師長は「今年度の診療報酬改定で、全身MRI撮影加算が付きました。現在グループ病院で算定できる施設はありませんが、検査の有用性がはっきりと示されたこともあり、部会として推進していきたいと考えています。ただし、がんが、すべて発見できることを担保している検査ではないので、検査の特徴を見極めながら実施していきたいです」と強調。
東京西病院が件数トップ
オンライン健康講座でDWIBS法の説明をする板垣・副技師長
グループ病院のうち、もっともDWIBS法による検査の実施件数が多いのが東京西徳洲会病院だ。同院では15年頃から、佐藤一彦・副院長兼乳腺腫瘍センター長が全身MRI撮影の導入を企図していた。
乳がん患者さんの治療後にPET―CTで全身検査をしたい場面があるが、治療後の効果判定としてのPET―CTは、保険適用外(悪性リンパ腫のみ適用)で全額自費負担(8万6250円)。場合によっては混合診療となる可能性もある。
乳がん患者さんは治療だけで大きな経済的負担があり、せめて検査費用を最小化したいという気持ちが強いことから、同院はDWIBS法の導入を検討。同法であればMRI検査として、必要に応じ繰り返し検査可能で保険適用の範囲も広い。3割負担の4800円(3・0テスラの場合)で検査できるため、患者さんにとって経済的負担を大幅に軽減できる。
同院では18年末に、これまで使用していたMRI装置がエンドサポートを迎えるにあたり、更新装置としてDWIBS法が実施できる機種を選定。今年2月に導入後、画像調整や検査プロトコルの調整などを行い、新しいMRI装置を本格稼働するタイミングでDWIBS法による検査も開始した。
板垣伸一・放射線科副技師長は「有用な症例を経験し、医局会や院内メールなどで共有することで、乳腺腫瘍科だけでなく、外科や消化器科を中心にDWIBS法による検査件数が増えていきました。検査時間は通常のMRI検査より少し長く、40~50分程度ですが、今後の課題として30分で実施できるようにしていきたいです」と抱負を語る。
同院では7月から、健診・人間ドックに「DWIBSコース」を設置。また、板垣・副技師長は6月下旬に開始したオンライン健康講座で、「最新のMRI検査の紹介」をテーマに講演を行い、地域の方々への周知にも意欲的に動いている。