徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2020年(令和2年)9月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1252 一・二面

吉本・武蔵野病院部長
安全な大腸ESD 「Endoscopy」動画部門に採択

武蔵野病院内視鏡センターのスタッフ。後列左から3人目が吉本部長武蔵野病院内視鏡センターのスタッフ。後列左から3人目が吉本部長

武蔵野徳洲会病院(東京都)の吉本泰治・消化器内科部長は、内視鏡分野の世界的なジャーナルである『Endoscopy』に動画付きの論文を投稿、「Endoscopy E-videos」という動画投稿部門で採択された。

論文タイトルは「Usefulness of sheath lifting after saline injection technique for colorectal endoscopic submucosal dissection」(大腸ESD[内視鏡的粘膜下層剝離(はくり)術]における生理食塩水注入後に行うシースリフティングの有用性)。大腸ESDの安全な施行に寄与する技術だ。

ESDは早期の胃がんや食道がん、大腸がんを対象とした治療技術。消化管壁は表面から、粘膜、粘膜下層、筋層などから成っており、病変が粘膜下層までにとどまるがんに行う。病変の下にある粘膜下層に生理食塩水(生食)などを注入し病変を浮かせ、ESDナイフ(電気メス)で粘膜下層を剝離し、がんを取り除く方法だ。

「大腸は管腔(かんくう)が狭く蛇行しているうえに筋層が薄いため、合併症として穿孔(せんこう)のリスクがあります。そのため大腸ESDの施行には高度な技術力が求められます。今回の動画・論文では、私がふだん取り組んでいる穿孔防止に役立つ内視鏡手技を紹介しました」(吉本部長)

穿孔を予防するには、ESDナイフの進入角度を、筋層に対し平行を維持する。しかし大腸の管腔は狭く蛇行しているため、平行を保つことが難しい場面が多い。

そこで、粘膜下層に生食を注入後、「ESDナイフのシース(外側の被覆部)を使って粘膜下層を持ち上げることにより(シースリフティング)、ほぼ平行にESDナイフで剝離していくことが可能になります」(吉本部長)。

この手技を実践するには、左手一本で内視鏡操作部を持ちながらシースの出し入れを行う技術が求められる。右手は視野を維持するためスコープを持ち続ける必要があるからだ。

シースは濡れると滑りやすく片手で操作部とシースを適切に操るのは難しい。ここで生きてくるのが、吉本部長が昨年、『Endoscopy International Open』に発表したネラトンアタッチメントというデバイス(器具)と、その操作技術。

滑りにくい素材のカテーテルをシースにかぶせることで、左手で操作部を持ちながら人差し指と中指でシースの出し入れができる。

内視鏡件数が大幅に増加

ESDナイフのシースを使って粘膜下層を持ち上げ安全にESDを施行ESDナイフのシースを使って粘膜下層を持ち上げ安全にESDを施行

同院内視鏡センターは、岸和田徳洲会病院(大阪府)での4年間の勤務を経て2019年4月に異動した吉本部長をはじめ、浅野朗・総合診療科部長や同センタースタッフの尽力により、内視鏡件数が大幅に増加。

19年度は上部内視鏡検査2506件、下部内視鏡検査910件、ESD46件(食道3件、胃12件、大腸31件)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管(すいかん)造影)127件、EUS(超音波内視鏡)97件など高度な内視鏡手技も幅広く実施。上下部合わせて検査は3416件となり、前年度比800件増だ。

また同年10月からは岸和田病院の消化器内科が月2回の応援診療を実施。19年に大腸ESD(保険診療)の施設基準、日本消化器病学会認定施設、日本消化器内視鏡学会指導施設も取得した。

武蔵野病院内視鏡センターでは内視鏡スコープの管理や検査・治療の準備、介助などを看護師が担当。吉本部長の赴任当時、これらの業務を担当できる看護師はいなかったが、吉本部長がコアとなるスタッフに指導。約1年半をかけ、習熟した看護師が他の看護師に教える文化ができつつある。今後は消化器内視鏡技師の有資格者を増やしていきたい意向だ。岡知子看護師と手島みどり看護師は「安全でスムーズな検査・治療を心がけています」。吉本部長は「内視鏡の教育施設として、若手の消化器内科医が集まる内視鏡センターを目指したい」と抱負を語る。

PAGE TOP

PAGE TOP