徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

田村 幸大(たむらゆきひろ)徳洲会グループ研修委員会委員長 大隅鹿屋病院副院長(鹿児島県)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

田村 幸大(たむらゆきひろ)

徳洲会グループ研修委員会委員長 大隅鹿屋病院副院長(鹿児島県)

2020年(令和2年)5月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1235

初期研修医は現場での厳しい研修通じて
目の前の患者さんを助ける基礎体力養成
指導医から“手の大切さ”諭された日を想う

新年度のスタートは例年、新入職員の元気な自己紹介の挨拶が飛び交い、真剣なまなざしで先輩たちの指導を受ける姿が院内にあふれています。冬が過ぎインフルエンザや肺炎などで入院される方が減り、病院内の空気も少し和らいで、ゆっくりした時間が流れるようになります。

しかし、今年度は新型コロナウイルスの感染拡大により、緊張感が張り詰めたなかでのスタートとなりました。4月7日には緊急事態宣言が発出され、終息の見込みが立たない状況です。通常であれば、5月末に開催している徳洲会グループ初期研修医の合同オリエンテーションも中止。開催されていれば新人医科研修医168人、歯科研修医8人が一堂に会し、2年間の研修で大切な事項や心構えを語り合いながら学んでいるはずでした。そこで紙面を借り、徳洲会グループ研修委員会委員長として研修医の皆さんにメッセージを送ります。

研修医は前に指導医は後ろに 本読むだけより100倍価値

徳洲会では、2004年度に新医師臨床研修制度が始まる前から内科、外科、小児科、産婦人科、精神科など多くの診療科をローテーションし、どのような病態であっても対応できる医師の養成を目指してきました。そのような歴史ある研修ですが、多くの人が「徳洲会の研修はきつい」という評判を耳にしたことがあると思います。なぜ、きついのでしょうか。

それは診断が付いていない多くの救急症例を経験するからです。研修医が前に出て、指導医が後ろで見ている研修が展開されます。指導医が前に出て、研修医が後ろで見ている研修ではないのです。自分が前に出て診療すれば、考えることの連続です。現場で「なぜか」と考えることは、本を読むだけよりも、100倍価値がある生きた経験になります。もちろん楽ではありません。でも、その「きつさ」は「鍛えられる」と表裏一体。医師として独り立ちした時、目の前の患者さんを助けるための基礎体力づくりなのです。

現場で多くの経験を積むということは、医師としてのあり方を学ぶ機会にもなります。私は1998年に長崎大学を卒業し、大隅鹿屋病院で初期臨床研修を開始しました。外科研修からのスタートで、初日に指導医から2人の患者さんに検査をオーダーするよう指示があり、あわてて患者さんの氏名と内容を左手甲にメモ。メモ帳を持っていたものの、簡単な内容だからメモ帳に書くまでもないと、安易な気持ちがそうさせました。

書き終わり顔を上げると、指導医の表情がこわばっており「手をメモ帳代わりに使うのはやめろ」と厳しい口調で言われました。「なぜかわかるか」と聞かれたので、「中途半端に消えてしまうと、間違って情報を伝えてしまうからですか」と答えました。すると「それもあるけど、それだけではない」と。「手は清潔にしておかなければならないからですか」と答えると、「それもあるけど、もっと大切なことがある」。答えに窮して黙り込んでしまった私に対して「今はまだわからないだろうけど、その手がこれからの医師人生で、どれだけ大切な仕事をしてくれて、どれだけ沢山の人を助けることか。その大切な手をメモ帳代わりに使って良いのか。お前ひとりの手じゃないんだぞ」と諭すように言われました。

頑張っている研修医の姿 周囲にエネルギー与える

研修医とはいえ、ひとりの医師になったこと、患者さんの治療に大きな責任を担っていること、つねに成長を目指し努力しなければならないことなど、「お前ひとりの手じゃない」という短い言葉に、医師としての多くのあり方が詰まっていました。

世の中は経験したことがない新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われています。この大変な時期に、医療者として歩み始めた皆さんの手は、多くの人を助けるようになると同時に、一歩間違えると感染を広げてしまう手にもなります。今この時期だからこそ、手の大切さを見つめ直してください。そして、ひとりでも多くの人を助けられるよう手を大切にしながら研修に邁進(まいしん)してください。

少しでも力になろうと頑張っている研修医の姿は、周囲にエネルギーを分け与えてくれ、「もう少し頑張ってみよう」と皆が勇気付けられます。感染が落ち着いて全国から研修医が集合し、合同研修会を開催できる日を楽しみにしています。

皆で頑張りましょう。

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