徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)11月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1212 三面

「へき地・離島救急医療学会」
徳洲会から12演題
札幌東病院会場に学術集会

第23回へき地・離島救急医療学会学術集会in札幌が9月28日、札幌東徳洲会病院センターホールをメイン会場として開催された。全体テーマは「へき地・離島救急医療への挑戦!」。徳洲会病院が会場になるのは初。同院の瀧健治・救急集中治療センター長と丸藤哲・顧問兼救急センター長が大会長を務め、職員らも学術集会の運営に尽力した。徳洲会グループはシンポジウムやパネルディスカッション、一般演題で12演題を発表。離島・へき地救急医療の向上に向け知見を共有した。

瀧センター長と丸藤顧問が大会長

「議論を深めていただきたい」と瀧センター長「議論を深めていただきたい」と瀧センター長

開会挨拶で瀧センター長は「人口減少、医師の偏在など課題があるなか、地域医療を維持していくことは至難の業です。そのため『へき地・離島救急医療への挑戦!』をテーマとしました。活発な討論を通じ議論を深めていただきたい」と呼びかけた。

シンポジウムでは名瀬徳洲会病院(鹿児島県)の小田切幸平・産婦人科部長が「離島の周産期医療を支えるための3本の柱」をテーマに発表した。同院は少ない人員でも島の周産期医療体制を維持するため、①携帯型胎児心拍数計測装置を活用した遠隔医療、②緊急帝王切開や肩甲難産などシミュレーション訓練、③医療講演――を実践。「島の産声を守れるかどうかは島の未来の存亡にもかかわることであるため、地域全体の問題としてとらえてほしい」と訴えた。

パネルディスカッションではふたりが発表。徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の田代篤史・循環器科部長は「循環器救急24時in徳之島」と題し、循環器救急医療で取り組んでいる工夫を紹介。時間外のオンコール体制時のonset to balloon time(発症から治療開始までの時間)を短縮するため、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した心電図伝送システムを構築。「救急隊が当院へ搬送を始めるタイミングで自分も病院に向かえるため、加療開始時間を早めることができました」とアピール。

南部徳洲会病院(沖縄県)の清水徹郎・高気圧酸素治療部部長は「沖縄県離島における減圧障害に対する再圧治療の現状」がテーマ。沖縄本島や離島の高気圧酸素治療装置の配備状況に言及し「緊急再圧が可能な施設は限られています」と指摘。そのうえで「減圧症に対する再圧治療は最低限、酸素中毒を起こさないために空気加圧とし、Air Break(空気吸入)を行う必要があります」などポイントを挙げた。

全国から多数の離島・へき地医療関係者が参加全国から多数の離島・へき地医療関係者が参加

一般演題は計9人が登壇。生駒市立病院(奈良県)の今村正敏総長は「へき地・離島における産科救急トレーニングプログラムについての研究」と題し発表。産科医療資源の集約化・重点化や、分娩(ぶんべん)取り扱い施設の減少が進行していることから「産科救急をチームで対応する必要があり、そのトレーニングが必要」と指摘。①ALSO、②ピーシーキューブ(PC3)、③J ―MELSといった産科救急のトレーニングプログラムを紹介した。

名瀬病院の畑田崇薬局長は「Eラーニングを活用したアナフィラキシー対策周知の取組み」をテーマに発表。同院はアナフィラキシー対応(アドレナリン筋注・同院採用薬)の文書を配布したものの、職員の理解度を把握できていなかったことからEラーニングを通じアンケートを実施。「理解状況の把握に加え、Eラーニングは周知手段のひとつとして簡便で有効です」とまとめた。

岸和田徳洲会病院(大阪府)救命救急センターの鈴木慧太郎医長は「岸和田徳洲会病院の鹿児島県および沖縄県離島医療の支援」をテーマに発表。グループの離島病院での初期研修医の地域医療研修や、専攻医、専門医による診療支援の実績を紹介。そのうえで「当院では初期研修の段階で総合診療的な研修の割合が大きいため、専攻医以降にも離島・へき地での医療ニーズにマッチしやすい傾向があると言えます」。

札幌東病院救急集中治療センターの佐藤洋祐医師は「利尻島から札幌への患者搬送2例を通した離島からの搬送モデルの検討」と題し発表。島外搬送の経路決定に関する要因を検討し、「緊急度と重症度から、搬送に必要な時間が搬送経路の決定要因でした」と結んだ。

同院救急集中治療センターの合田祥悟医師は「TMATとしての病院防災の取り組み」をテーマに発表した。TMAT(徳洲会医療救援隊)は病院防災を学ぶトレーニングコースを企画。「参加者の満足度は高く教育効果も確認できました。離島・へき地を中心に中小規模病院に広めていきたい」と意欲を見せた。

同院の根岸克行・初期研修医は「腹部大動脈瘤切迫破裂に合併した下大静脈瘻による高拍出性心不全の一例」と題し発表。「右心負荷所見のある呼吸困難の患者さんでは、肺塞栓症が重要な鑑別疾患ですが、画像検査で認められなかった場合は、動静脈シャント形成による高拍出性心不全の病態が鑑別疾患になることを学びました」と報告した。

同院の熊坂雄一郎薬剤師は「へき地・離島に対する薬剤師応援の現状調査」を発表。同院薬剤師にアンケートを実施したところ、多くの薬剤師が応援先で患者さんへの介入を経験。一方、救急分野での対応例は少なかった。「さらなる貢献のため応援者を出す側は日頃から救急分野の知識の普及に取り組み、応援を受け入れる側でも救急時・超急性期に使用される薬剤のリストを作成するなど、グループ全体の取り組みが重要」とまとめた。

同院の今井崇・診療看護師(NP)は「プライマリケアNPが急性期病院で研修することによりできるようになったこと」と題し発表。NPは、大学院の修士課程を修了した看護師で、医師の指示の下、一定範囲の診療行為を実施できる看護師をいう。「臨床推論と診療能力、病状説明と退院調整能力、急性期での倫理的対応能力の向上が期待できます」と結んだ。

同院の西田安紀子NPは「医療過疎地域において入院をせずに在宅療養を継続できた症例」がテーマ。以前勤務していた病院でNPとして訪問看護に従事。在宅療養を継続できた下肢皮膚潰瘍にデブリートメント(壊死組織の除去)を実施した症例や、インスリン投与量を調整した症例を報告。「NPが訪問看護に従事することでQOL(生活の質)や満足度の向上、医療の質の向上などに貢献できると考えます」。

閉会後には夕張市内の会場に移動し、夕張イブニングセミナーとして、夕張市立診療所の前沢政次所長が「人口急減地域の医療をどう立て直すか」をテーマに基調講演を行い、同診療所の診療体制や運営の実状を語った。翌29日には同診療所の視察などを行った。

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