徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)9月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1152 四面

札幌徳洲会病院
世界の救急医療を研鑽
海外から講師招聘し初会議

札幌徳洲会病院は8月4日から2日間、院内講堂などでPan-Pacific Emergency Medicine Conferenceを初開催した。世界の救急医療の現状や課題などを学ぶのが目的で、講師は国内だけでなく米国や韓国、ニュージーランドからも招聘(しょうへい)。講演や質疑応答はすべて英語で行ったが、英語が苦手な参加者には別会場で会議の様子をモニターに映し、同時通訳するなど配慮した。徳洲会グループ病院や地域の医療機関の救急科医師、看護師など2日間で延べ96人が参加、国際色豊かな講師陣と言葉の壁を越えて交流を深めた。

カンファレンスに参加した国際色豊かな参加者 カンファレンスに参加した国際色豊かな参加者

カンファレンス(会議)の発起人である札幌病院の中川麗・副院長兼プライマリセンター長は「これまで育んできた人とのつながりが結実し、今回のカンファレンスが実現しました」。

2016年2月、札幌市内の救急受け入れ病院の医師を講師として招く勉強会に、米国ニューメキシコ大学の救急医を招聘し合同カンファレンスを開催。これをきっかけに同年6月、同大学の乗井達守・救急科准教授を招き、第1回セデーションコースを開催した。これは同大学病院が開発した処置時の鎮静・鎮痛法を学ぶ研修プログラム。これまで札幌病院で4回開き(うち1回は看護師向け)、この実績が同カンファレンス開催につながった。

発起人である中川副院長は人とのつながりを実感 発起人である中川副院長は人とのつながりを実感

また、15年には韓国で日本の医師国家試験受験予定者向けの説明会を現地開催。参加者を年々増やし、昨年は仙台徳洲会病院、湘南厚木病院(神奈川県)、鹿児島徳洲会病院と合同で説明会を開いた。ここでの出会いから今回の講師を依頼した医師もいる。

中川副院長は「当院では海外で活躍する医師を育てたいという思いもありますので、カンファレンスが良い刺激になると考えました。海外の先生のプレゼンテーションや海外の学会で発表経験のある日本の医師のプレゼンテーションを見るのは勉強になると思います」と意図を説明する。

初日午前中は「Proced ural Sedation Course」と「Talk to Women Lea der in Medicine」と「In teresting Cases」をそれぞれ同時開催。参加者は興味のあるコースを選んで学習に励んだ。

Procedural Sedation Courseは同院で開催しているセデーションコースの英語版。鎮静の基本や合併症などを学ぶ座学と、気道管理や小児・成人のシミュレーションなど5つのステーションに分かれて学ぶワークショップを経て、最後に筆記試験に挑戦した20人全員が修了証を手にした。

Talk to Women Lead er in Medicineは中川副院長に加え、米国の女性医師らが参加。「優秀な女性のリーダーが強く意見を言うと、まわりと上手く付き合えないことがある」という質問に対し、中川副院長は「私自身はひとりでは何もできないリーダーだからこそ、サポートしてくれる人の才能との出会いに恵まれてきたのかもしれない」と発言し、関心を誘う場面があった。

Interesting Casesは若手医師らが英語で症例報告に挑戦。札幌病院の國本尚彦・後期研修医や短期研修中の南部徳洲会病院(沖縄県)の今村恵・後期研修医らが登壇した。「じつはメイン会場に空き時間ができることがわかり、急きょ組み込んだコースだったのですが、短い準備期間だったにもかかわらず、皆さん素晴らしい症例発表をしてくれました」と中川副院長は舞台裏を明かす。

セデーションコースのワークショップも英語で実施 セデーションコースのワークショップも英語で実施

同院の栄養管理室が用意したランチビュッフェを楽しんだ後、初日午後から2日目にかけてカンファレンスを実施。冒頭、奥山淳院長が「さまざまな国から講師に来ていただき、また参加者の皆さんは全国から集まっていただき感謝します。言葉の壁を越えて交流し、有意義な2日間をお過ごしください」と挨拶した。

カンファレンスは「高齢者救急の診療」、「境界・国境」、「弱い立場の人を守る救急」、「救急外来における新しい技術」、「最新・敗血症診断」をテーマに据え、各国の専門家が自国での実例などをそれぞれ発表、演題数は2日間で17演題に及んだ。

このなかで札幌病院の西條正二プライマリセンター医師は「国際航空搬送」と題し発表。外国人観光客の増加を受け今後、国際搬送を含めた医療需要は北海道で大きな課題になると指摘。症例を提示しながら、搬送のリスクとコストを把握することが重要であると説明、「観光地に働く医療従事者は、患者さんの国際搬送について知っておくべき」とまとめた。

中川副院長(左から4人目)を中心に女性リーダーらが交流 中川副院長(左から4人目)を中心に女性リーダーらが交流

また札幌病院の上田泰久・外傷センター部長が「高齢者の骨盤骨折」、木島眞プライマリセンター部長が「メディカルクラークの紹介」、佐藤和生・外傷センター医長が「整形外科診療におけるヘリ搬送」、岸和田徳洲会病院(大阪府)の薬師寺泰匡・救命救急センター医長が「日本における緊急気道管理」と題しそれぞれ発表。すべての発表で質疑応答も活発に行われ、盛況のまま閉会した。

終了後に中川副院長は「カンファレンスが成功したのも、裏方で動いてくれたスタッフのおかげです」と感謝の意を示し、「当院の職員はゆっくりカンファレンスに参加できなかったと思うので、後ほど撮影した動画の上映会を行い、解説を加えながら振り返りたいと考えています」と配慮も忘れない。

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