徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

直言

Chokugen

黒岩 宙司(くろいわちゅうし)(山北徳洲会病院院長(新潟県))

直言 生命いのちだけは平等だ~

黒岩 宙司(くろいわちゅうし)

山北徳洲会病院院長(新潟県)

2018年(平成30年)9月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1151

徳洲会のDNAは山北に生きている
離島・へき地を含む地域医療を充実
「徳洲会があるから安心」は努力の賜物

当院は新潟県の最北部、山形県との県境にあります。温泉のある当院の5階からは病院の裏手を見渡せ、新潟市から海沿いに山形県庄内地域、秋田県を経て青森市に至る国道7号線を往来する車や、道路の向こうに日本海を一望できます。

風雪のなかでつくられた奇岩が波打ち際に林立し、神を祭る筥堅山(はこがたやま)がそびえる様は一幅の絵画のようで、四季の変遷を楽しむことができます。

秋の日本海は紅葉を映して茜色に染まり、冬には北風を受けた白波が飽くことなく砕け散ります。厳しい時を経て春の陽光を浴びた海は息吹(いぶき)を吹きこまれて輝き、紺碧(こんぺき)の海上をキラキラと光が跳ねる夏が到来します。

入職前、私が当院を見学に訪れたのは2016年6月。解禁されたばかりの岩牡蠣(がき)が寝屋(ねや)の漁港に揚がり、その美味しさに驚きました。9月に入職し、温厚な院長を支えることが私の任務でした。ところが赴任1カ月前に院長が病に倒れ亡くなったのです。契約にない展開でしたが後戻りはできません。赴任した時は紙カルテで書き込むボールペンのインクが瞬く間になくなり、指が腱鞘炎(けんしょうえん)になりました。

医療へのアクセス容易でなく誘致の声大きく20年前に開設

一般病床が60床、療養病床が60床、3階に併設の介護老人保健施設が100床。山北地域の基幹病院として住民の方々と行政の期待を背負っています。赴任後は山北の四季のように次々と変化がありました。潮風に傷んだ病院の外壁を改修し、旧式のMRI(磁気共鳴画像診断装置)は新しく入れ替え、電子カルテとPACS(医用画像情報システム)を導入しました。

当院は地域医療研修の協力病院として、札幌東徳洲会病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)から初期研修医と専攻医の研修を受け入れています。いずれも厳しい研修を受け新しい医療を身に付けた有能な人材です。

今年は当院の開院20周年に当たります。開院した1998年は長野オリンピックの開催年。山北地域は山間部の集落が多く、交通手段が限られ、医療へのアクセスは容易ではありません。適切に医療を受けられず、手遅れになることがあったため病院誘致の声が大きくなったのです。

徳洲会は「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」の実現を目指しています。国からの支援がないなかで民間病院グループが離島・へき地を含む地域医療を充実させたのは驚きで、その経験が徳洲会のDNAとなり、今も生き続けています。

“生命だけは平等だ”という徳洲会の理念を基軸に世界に目を向けると、WHO(世界保健機関)が78年に旧ソ連(現・カザフスタン共和国)のアルマ・アタで宣言した「プライマリ・ヘルス・ケア」に通じます。第二次世界大戦後の医療政策が治療と都会に偏在してきたことを反省し、開発途上国の人々にも届くように、予防接種が拡大、公衆衛生が強化されました。

山北地域は豊かな自然に育まれた文化の宝庫です。7月下旬に股(こ)関節が痛いと入院されたTさんは96歳。新潟県と山形県の県境の山里に住む、1400年の歴史があるしな織り(しなの木の繊維で織り上げた古代の織物)の名手です。5歳から糸を紡(つむ)いでいる親指は第一関節から大きく外に反っています。

地域住民すべてに保健医療 サービス提供を目指す活動

昨年末に訪問診療でTさん宅を訪ねました。看護師の運転する車で、雪壁(せっぺき)が切り立つ雪道を上り、峠の手前の家に着きました。室内は薪(まき)ストーブで暖かく、誘われるままに、こたつに座り込みました。窓際で、黙々と糸を紡ぐTさんの横には、樹木の色をした糸玉が山積みです。「京都から買い付けにきますよ」と目を細める娘さんも、私の外来に通われています。

高齢化が加速するなかで、地域住民の方々すべてに保健医療サービスを提供したいと考え、そのための取り組みをしています。毎朝、送迎バスを走らせ集落の患者さんに受診してもらい、送り届ける活動もそのひとつです。研修医教育は重要で、症例検討、他病院とのWEBカンファレンス(検討会議)に加え、職員による研修医への講義(栄養、介護保険、介護施設・病院経営)を始めました。集落での医療講演を通じた住民の方々との対話は貴重な体験となります。

「徳洲会があるから安心です」

人々の切なる声は20年かけて職員が築き上げてきた努力の賜物です。皆で頑張りましょう。

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