徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)9月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1151 四面

第2回近畿HAL研究会
「重介護者ゼロ社会」へ
徳洲会から4演題発表

第2回近畿HAL研究会が8月4日、和泉市立総合医療センター(大阪府)で開催、同医療センターと湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)、徳洲会グループ外の病院のリハビリテーションスタッフらが、ロボットスーツ「HAL(Hybrid Assistive Limb)」治療を導入した症例とその改善結果などを中心に口演した。またHALを開発したサイバーダイン社長兼CEO(最高経営責任者)で、筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海嘉之教授が特別講演を行った。徳洲会グループはHAL(医療用下肢タイプ)を同医療センターと湘南藤沢病院、南部徳洲会病院(沖縄県)で導入。

HALを用いた歩行訓練(湘南藤沢病院) HALを用いた歩行訓練(湘南藤沢病院)

HALは身体機能を改善・補助・拡張・再生することができる世界初のサイボーグ型ロボットスーツ。身体にHALを装着することで「人」、「機械」、「情報」を融合、身体が不自由な方をアシストしたり、いつもより大きな力を出したりすることが可能だ。さらに脳・神経系への運動学習を促すこともできるシステムを備えている。2016年1月、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋ジストロフィーなど8疾患に保険適用となった。

人が身体を動かそうとする時、脳は神経を通じ動作に関する信号を筋肉に送り出す。健常者の身体では、この信号を受け取ることにより、動作に必要な分の力で筋肉を動かすことができる。HALは独自に開発したセンサーを皮膚に貼り付けるだけで、皮膚表面から発する微弱な信号(生体電位信号)を読み取ることが可能。これにより装着者がどのような動作をしたいと考えているのか認識する。

さらにHALは認識した動作に合わせパワーユニットをコントロール。装着者の意思に沿った動きをアシストしたり、ふだんより大きな力を出したりすることができる。コントロールには生体電位信号を検出し人の思いどおりに動作する「サイバニック随意制御システム」と、生体電位信号を検出できなくても人のような動作を実現する「サイバニック自律制御システム」の2系統が混在、装着者の動きをアシストする先進技術を用いている。

また、人の体が動いた時、脳は実際に体がどういう信号で、どのように動作したか確認を行う。たとえば、HALを用いて「歩く」動作をアシストした時、「歩けた」という感覚が脳にフィードバック。これにより脳は「歩く」ために必要な信号の出し方を少しずつ学習していく。こうしたメカニズムも、足の不自由な方がHALを装着しなくても歩くことができるようになるための一歩につながる。

研究会では、近畿大学医学部教授で和泉医療センターの中村雄作・院長代行(脳神経内科部長)が「2回目となる今回は、実際にHALを運用している9医療機関から11の演題発表があります。前回よりも、さらに進化した具体的な実践報告に期待したい」と開会の挨拶を行った。

特別講演に登壇した山海教授は、ここ数年のサイバニックシステムによる医療の全体像を俯瞰(ふかん)、わが国の戦略と世界的な潮流について解説した。さらに世界初のサイボーグ型ロボットスーツHALの活用で、「高齢者や脳神経疾患患者さんらの機能改善、機能再生、機能拡充に貢献し、“重介護者ゼロ社会”の実現も夢ではありません」と強調した。

100人超が参加し研鑽

研究会関係者らが記念撮影 研究会関係者らが記念撮影

演題発表では湘南藤沢病院リハビリテーション室の堀越一孝・理学療法士(PT)が「HALを用いて歩行運動処置を行った筋萎縮性側索硬化症の2例」をテーマに報告。

症例1は61歳女性、症例2は44歳男性で、いずれも歩行障害に対してHAL治療を開始したところ、どちらも歩行速度が少しずつ改善した経緯についてエビデンス(科学的根拠)を示しながら説明した。

ただ、集中的なHAL治療が歩行能力の改善に寄与する一方で、「社会的背景により断続的・集中的な治療が難しい場合、効果が期待できない可能性もあります」と見解を示した。

続いて同院の阿部誠也PTが、「HALの有効性が臨床試験で示されているにもかかわらず症例報告が少なく、複数の神経筋疾患に対し保険適用があるものの検討すべき課題が多い」ことをふまえ、「HALを用いて歩行運動処置を行った筋強直性ジストロフィーの2症例」と題し発表した。

2症例とも60歳代男性で、歩行障害に対しHALによる歩行運動処置(20分/日×9日)を開始。ひとつの症例は2クール目で歩行機能が改善した。一方、もうひとつの症例は歩行距離や歩行速度に改善を認めなかったが、等尺性膝伸展筋力が改善した。いずれの症例も有害事象はなかった。

和泉医療センター・リハビリテーション科の野口勝司副主任(PT)は、HAL導入で「左下肢振り出しと右支持期安定向上に伴い歩行能力改善を認めた症例」と題し報告した。

同センターは4月にHALを導入、すでに13例に実施した。症例は40歳代の肢帯型筋ジストロフィーの女性で、他院でもHALを実施し、6月に同センターに入院、4回目の導入となった。6m歩行・2分間歩行のテストはともに最終評価時、わずかな改善を認め、歩容についても体幹極度の前傾姿勢や左振り出しの代償動作が改善、効率の良い歩容に変化したことを紹介した。

続いて同センターの伏江誠PTが「筋ジストロフィー患者へのHAL腰タイプ 自立支援用の使用効果」をテーマに発表。2症例は非医療用であるHAL腰タイプを装着し、体幹前傾運動、アシストONでの立ち回り運動、スクワット運動を行った。腰タイプ実施直後の測定にもかかわらず、いずれも導入前より測定数値が向上し、即時的な効果を得た。

さらに下肢タイプ導入後も効果を得たことから、腰タイプと併用することで相乗的な効果も期待できると示唆した。

研究会には医師、看護師、リハビリスタッフなど100人を超える医療者が参加。近畿大学医学科の福田寛二教授が閉会の挨拶を行い、盛況裏に終了した。

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