徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)9月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1151 一面

再生医療の実証試験スタート
南部徳洲会病院
低コストで幹細胞大量培養

南部徳洲会病院(沖縄県)は、地元のバイオベンチャー「フルステム」が開発した自動幹細胞培養装置を用い、再生医療の実証試験を開始した。沖縄県の委託事業として今年度から4年かけて実証にあたる。再生医療専門外来をもつ大阪府のそばじまクリニックと共同で、2019年度に同院で皮膚潰瘍、20年度に同クリニックで変形性関節症、21年度に同院で尿失禁の臨床試験を行う予定。安全に低コストで幹細胞が大量培養できれば、小規模の医療機関にも普及でき、多くの患者さんに対する治療が期待される。

まず皮膚潰瘍や尿失禁など

赤崎院長(前列中央)や向山部長(前列右)、滝吉医長(前列左)を中心とした実証チーム 赤崎院長(前列中央)や向山部長(前列右)、滝吉医長(前列左)を中心とした実証チーム

再生医療とは、病気やけがで損なわれた臓器や組織の働きを取り戻すため、細胞を体外で培養したり加工したりし、移植する医療。鍵を握るのは「幹細胞」で、同じ細胞を複製する「自己複製能」に加え、さまざまな種類の細胞に分化する「多分化能」をもつ。幹細胞は①受精卵からつくるES細胞(胚性幹細胞)、②皮膚細胞などに特定の遺伝子を導入し樹立するiPS細胞(人工多能性幹細胞)、③各組織にあり、特定の細胞に分化する能力をもつ体性幹細胞――の主に3つに分類。

ES細胞とiPS細胞は、あらゆる種類の細胞に分化する能力をもつが、人工的につくるため倫理的な問題や安全性に課題を残している。一方、体性幹細胞は体内で実際に働いている細胞で、実用化という面で期待が大きい。体性幹細胞には赤血球や白血球、血小板など血液の細胞をつくる「造血幹細胞」、神経細胞をつくる「神経幹細胞」、骨や脂肪、神経など組織をつくる「間葉系幹細胞」などがある。

なかでも脂肪組織中から発見した間葉系幹細胞である「脂肪幹細胞」は、脂肪組織だけでなく骨や軟骨、心筋細胞、血管をつくる細胞などに分化する能力をもち、さまざまな組織への再生医療に応用できると見込まれている。今回、南部病院で行う実証試験も脂肪幹細胞を用いたものだ。

以前からフルステムと親交のあったそばじまクリニックから、南部病院に協力要請があり、今回の実証試験につながった。フルステムが開発した自動幹細胞培養装置は、培養皿の代わりに医療用の不織布(ふしょくふ)を使用し培養するのが特徴。従来の再生医療では人手で培養するため、質の良い細胞を、治療に必要な量だけ確保するのが難しく、コストも高いが、同装置を使えば小規模な施設でも、ひとりで作業ができ、従来の1~2割のコストで治療が可能になる。

また従来は全身麻酔下で350㎖ほどの脂肪幹細胞を取り出す必要があったが、同装置では局所麻酔下で10~20㎖ほどの量で足りるため、高齢者など脂肪が採取しにくい患者さんでも治療が可能になり、間口が広がる。大量培養した細胞を治療に使うことができれば、皮膚潰瘍では潰瘍の範囲が広くても対応でき、尿失禁では注射による細胞の投与回数を増やせる。

日帰り手術が可能になり医療ツーリズムへ貢献も

月2回ほど行っている打ち合わせでは岩畔部長も参加し、実証試験の進捗や課題を共有 月2回ほど行っている打ち合わせでは岩畔部長も参加し、実証試験の進捗や課題を共有

実証試験は沖縄県の先端医療産業開発拠点実用化事業の一環で、期間は4年を予定。初年度は三者による治験実施計画書の作成や厚生労働省への申請業務などを進める。2年目以降は19年度に同院で難治性の皮膚潰瘍、20年度に同クリニックで変形性関節症、21年度に同院で前立腺がん術後の合併症である尿失禁の治療を、それぞれ5例以上行う計画だ。

同院の赤崎満院長は「沖縄県の委託事業ですので、しっかり結果を出し県民の皆さんに還元していきたい」と意欲的。同院で実証試験の中心となる向山秀樹・泌尿器科部長は「再生医療は今後、なくてはならない医療技術のひとつになると思います。沖縄発の治療として全国に展開できるようにしたい」と展望する。

来年度に予定している皮膚潰瘍の臨床試験では、滝吉優子リハビリテーション科医長がコーディネーターを務める。滝吉医長は「再生医療が機能回復やQOL(生活の質)向上の一助になればと思います。リハビリ医として協力していきたいです」と目標を語る。

比較的難易度やリスクの低い皮膚潰瘍から実証を始め、治療の手順や方法などノウハウを確立。さらに同院で取り出した脂肪幹細胞をフルステムに送り、大量培養しあらためて同院に戻すというフローの安全性も確かめる。その後、難易度やリスクの高い尿失禁の治療に移行する。「実証が終了したら、臨床で活用していきたい。さらに確立したフローを応用し、他の疾患に広げていけたら良いと思います」(向山部長)。

同クリニックの岩畔英樹・再生医療専門外来・細胞バンク室部長は、手術の立ち会いなど臨床的なサポートを担う。「iPS細胞は〝万能細胞〟とも呼ばれ、夢はふくらみますが、ハードルが高い。今回の実証試験を成功させ、〝高級スポーツカーではなく一般車が、しっかり走れる〟ようにしたいです」と意気込みを隠さない。岩畔部長は月2回ほど同院で内科外来を担当しており、外来終了後、同院の実証試験チームと一緒に、進捗(しんちょく)や課題を共有する打ち合わせを行っている。

同装置を使った治療が確立すれば、再生医療を日帰り手術で行えるため、メディカルツーリズム(医療観光)の促進にも寄与。赤崎院長は「県を挙げメディカルツーリズムに力を入れているので、再生医療をきっかけに海外の方々が沖縄を訪れるようになれば、地域への貢献にもつながると思います」と期待を込める。

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