徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)9月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1150 一面

クライオバルーンアブレーション
開始2年で160例突破
岸和田徳洲会病院

岸和田徳洲会病院(大阪府)が2016年10月に開始したクライオバルーンアブレーションが160例を突破した。不整脈の一種である心房細動に対する治療で、左心房につながる肺静脈の組織をバルーン(風船)で冷凍凝固壊死(えし)させ、心房細動の原因となる不要な電気信号を遮断する。同院で積極的に行っている福田圭祐・循環器内科医長は「高齢化にともない心房細動の患者さんは増えると予想されます。ひとりでも多くの患者さんを助けたい」と意欲を見せている。

162例目の治療直後のカテーテル室スタッフ(後列左から福田医長、田中部長、原光副主任) 162例目の治療直後のカテーテル室スタッフ(後列左から福田医長、田中部長、原光副主任)

心房細動は不整脈のひとつ。文字どおり心房が細かく不規則に動き、それが心室にも伝わって心室の収縮も不規則になるため、一般的に心拍が速く、乱れる。心臓全体の機能低下も招くことから、悪化すると心不全を引き起こすこともある。

また、血栓が形成されやすいのも特徴のひとつ。心房の収縮が不規則になると、血流が停滞し、血液が固まりやすくなる。血管からはがれた血液の塊(血栓)が血流に乗って心臓の外に送り出されると、末梢(まっしょう)の動脈を塞ぐ「血栓症」や「塞栓症」の因子となる。とくに脳動脈で起こるケースが多く、脳梗塞を防ぐためにも早期発見・早期治療が重要だ。

心房細動の原因は心臓を収縮させる電気信号の異常。通常、心臓を動かす電気は右心房にある洞結節(どうけっせつ)という組織でつくられ、心房から心室に流れていく。ところが、心房細動の場合、左心房にある4本の肺静脈の付け根部分でも電気をつくるため、心房がいわば興奮状態となり、けいれんしているように動く。診断は心電図検査(心臓の電気の状態確認)や超音波検査(血栓の確認)などでつける。

クライオバルーンアブレーションは、この肺静脈の根元部分を冷却し組織を壊死させ電気信号を遮断する心房細動の根治療法のひとつ。まず、造影剤を用いたCT(コンピュータ断層撮影装置)撮影で左心房と肺静脈の形状などを確認し、治療の可否を判断。治療可能な場合は太ももの付け根からクライオバルーンを装着したカテーテルを挿入し、左心房へ移動。

バルーンをふくらませ、肺静脈の付け根部分に当てた後、バルーン内に液化亜酸化窒素を流入。同液体が気化する際に熱を奪う作用を利用し、マイナス40~マイナス50℃で約3分間冷却する。これらを4カ所ある肺静脈の付け根部分で行っていく。

従来、アブレーション治療は、先端に電極の着いたカテーテルで肺静脈の付け根部分の周囲を高周波による熱で焼いていく方法が一般的だった。しかし、焼灼(しょうしゃく)するポイントが計40~80カ所に及び、カテーテルを1カ所ずつ移動させながら行っていくため、医師の技術などによって治療時間や予後に差が生じやすかった。

クライオバルーンアブレーションは一度で均圧に組織を円周状に壊死させるため、より短い時間で安定した治療が行えるメリットがある。

モニターでバルーンの位置や患者さんの状態を確認しながら治療 モニターでバルーンの位置や患者さんの状態を確認しながら治療

岸和田病院は治療の選択肢を増やそうと15年にクライオバルーンアブレーションの導入を検討。福田医長らが、すでに実施していた他施設を見学した。「当院では田中一司・循環器内科部長と塩谷慎治・同科主任部長の不整脈専門医2人が従来のアブレーション治療を実施していますが、見学の都合が付かず、不整脈専門医ではない私が見学に行くことになりました。実際に見て自分で取り組んでみたいと思いました」(福田医長)。

その後、トレーニングを積み岸和田病院が同治療の施設認定を受けたことをふまえ、16年10月に初めて実施。以後、症例を積み重ね今年8月に160例を突破した。開始当初よりも手技時間や入院期間などが短縮。患者さんは最短で1泊2日、平均3~4日で退院できる。治療成績も従前のカテーテルアブレーションと変わらない。

新たにアブレーション治療を手がける医師が増えたことで、同院のアブレーション件数そのものも急激に増加(図)。福田医長は「これだけ件数が増やせたのも原光佑一・臨床工学室副主任を中心とした臨床工学技士による治療システムの構築、カテーテル室のみならず病棟看護師がアブレーション治療を受ける患者さんの看護を積極的に行ってくれたおかげです」。

福田医長はクライオバルーンアブレーションについて「心房細動のタイプや肺静脈の太さなど、実施できるケースが限られていたり横隔膜神経麻痺(まひ)のリスクをともなったりするため、決して万能な治療ではない」と言いながらも、「心房細動は専門医だけでは追い付かないほど患者さんが多い」と強調。「ひとりでも多くの患者さんを助けるために自ら研鑽(けんさん)を積むとともに、後進育成にも励みたい」と身を乗り出す。

徳洲会グループでは札幌東徳洲会病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、名古屋徳洲会総合病院も同治療を実施している。

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