2018年(平成30年)8月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1148 一面
徳洲会グループの老健
3施設が「超強化型」に
おきなわ徳洲苑・あいの郷・八尾徳洲苑
徳洲会グループの介護老人保健施設(老健)おきなわ徳洲苑(沖縄県)、あいの郷(埼玉県)、八尾徳洲苑(大阪府)は「超強化型」老健になった。これは4月の介護報酬改定により新設された老健のタイプのひとつで、厳しい要件が設けられている。
老健の類型が5タイプに再編
「超強化型」とは老健の類型のひとつ。従来は「在宅強化型」、「加算型」、「従来型」の3タイプで、このうち「在宅強化型」が最もハードルが高かったが、4月の介護報酬改定で5タイプに再編(図)。在宅強化型と加算型をそれぞれ細分化し、在宅強化型の上位区分として「超強化型」、加算型の下位区分として「基本型」を新設、どのタイプにも当てはまらない老健を「その他型」とした。背景には、“在宅復帰・在宅療養の支援”という老健の役割をさらに明確化し、きめ細かく評価したい国の狙いがある。
新たな類型では、大きく5つの項目に基づき多様な要件を設定。最大の特徴は、そのうちのひとつに“ポイント制”を導入した点だ。具体的には「在宅復帰・在宅療養支援等指標」で、在宅復帰率やベッド回転率、入所前後・退所前後の訪問指導割合などについて自施設の状況を数値化(最高値90)。これに「退所時指導等」や「リハビリテーションマネジメント」など、ほかの4つの項目の要件に応じて老健のタイプが決まる(表)。
レクリエーションでも体を動かすプログラムを用意(おきなわ徳洲苑)
徳洲会グループの老健のうち、いち早く超強化型になったのは、おきなわ徳洲苑。同施設は従来、加算型だったが「在宅復帰・在宅療養支援等指標」をはじめ各基準への対応を強化。在宅強化型を飛び越え6月に超強化型となった。
とくに注力したのが入所前後の訪問だ。関連病院の中部徳洲会病院(沖縄県)や回復期病院から入所するすべての方に入所後訪問を行っている。退所前後を含め、訪問するのは主に支援相談員やリハビリセラピスト、施設ケアマネジャー。入所者さんの自宅を訪れ、退所後の生活をサポートするため、本人や家族の意向をふまえながら生活機能の具体的な改善目標を確認する。
このほか、要介護4もしくは要介護5の方を積極的に受け入れた。当初、とまどうスタッフも見受けられたが、満床が続いている関連病院の状況も含め理解を促したという。
入所前の自宅訪問。段差解消のスロープをチェック(あいの郷)
リハビリも充実。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を確保し、セラピストを4人から7人に増やした。日曜日も個別リハビリを行うなど手厚い体制を整えた。さらに「地域貢献活動」として、以前から不定期に行っていた高齢者の方の栄養指導や転倒予防教室などを月1回開催。近隣の公民館や保健センターなどで行っている。
こうした多様な取り組みを通じ、「いろいろな面で質が上がったと感じますし、具体的な目標に基づいて動けるのでスタッフにとっても良かったと思います」と渡具知充・支援相談員主任は目を細める。伊波恵子事務長も「在宅復帰も看取りも含め、地域を支援する老健の役割を強く感じています」と手応えを口にする。
スタッフの士気向上も
在宅復帰に向け多職種によるカンファレンスが欠かせない(八尾徳洲苑)
あいの郷と八尾徳洲苑は、両施設とも従来の在宅強化型からランクアップ。ともに7月1日に超強化型になった。両施設も入所前後の訪問に最注力。あいの郷ではリハビリセラピストと施設ケアマネジャーが、八尾徳洲苑では支援相談員と施設ケアマネジャーが入所前に自宅を訪問し、家屋の造りや入所者さんの希望・状態などを考慮してケアの計画を立案する。「たとえば、入所者さんが歩いてトイレに行きたいことを希望されていれば、ベッドからトイレまでの環境をチェックしたり、入所後、入所者さんの状態から車いすを利用する可能性が高い場合は、廊下の幅を確認したりします」(長島大介・あいの郷支援相談員主任)。
八尾徳洲苑では、入所前の訪問をシステム化し、初回の面談時から訪問を実施。栄養も含めたケア計画を立てているため、時には管理栄養士が訪問することもある。このほか、同施設では新たにリハビリセラピストを確保し、リハビリの充実も実現した。
両施設も超強化型になるにあたり、入所者さんはもちろん、スタッフにも良い効果をもたらすと指摘。
「良い仕事をしようと5年前からいろいろ模索してきました。従前の在宅強化型にしても言えますが、目標をもつとスタッフのモチベーションが確実に上がります」と、あいの郷の荒井優子・介護士長。
その言葉を象徴するように、同施設は「在宅復帰・在宅療養支援等指標」の数値で計80以上キープしているという。管理者の岡田耕市医師は「スタッフは本当によく頑張ってくれています。医療ニーズの高い方が増えるなかで、今後も当施設にできることを皆で考えていきたい」。
八尾徳洲苑の武田郁子・看護総師長は「スタッフ間、地域の事業所間で今まで以上に情報交換を行うようになりました」と成果をアピール。北出眞和・八尾徳洲苑支援相談員副主任は「できることを探したり、ひとつ上の施設基準を目指して挑戦したりすることが、入所者さんにとってもスタッフにとっても大切だと実感しました」。
表 評価項目(厚生労働省の資料を一部編集)
評価項目 |
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その他型 (左記以外) |
超強化型 |
在宅強化型 |
加算型 |
基本型 |
在宅復帰・在宅療養支援等指標(最高値:90) |
70以上 |
60以上 |
40以上 |
20以上 |
左記の要件を満たさない |
退所時指導等 |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
リハビリテーションマネジメント |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
地域貢献活動 |
要件あり |
要件あり |
要件あり |
要件なし |
充実したリハビリ |
要件あり |
要件あり |
要件なし |
要件なし |
- 在宅復帰・在宅療養支援等指標:下記評価項目(①〜⑩)について、項目に応じた値を足し合わせた値(最高値:90)
- ①在宅復帰率
- 50%超20
- 30%超10
- 30%以下0
- ②ベッド回転率
- 10%以上20
- 5%以上10
- 5%未満0
- ③入所前後訪問指導割合
- 30%以上10
- 10%以上5
- 10%未満0
- ④退所前後訪問指導割合
- 30%以上10
- 10%以上5
- 10%未満0
- ⑤居宅サービスの実施数
- 3 サービス5
- 2 サービス3
- 1 サービス2
- 0 サービス0
- ⑥リハ専門職の配置割合
- 5 以上5
- 3 以上3
- 3 未満0
- ⑦支援相談員の配置割合
- 3 以上5
- 2 以上3
- 2 未満0
- ⑧要介護4または5の割合
- 50%以上5
- 35%以上3
- 35%未満0
- ⑨喀痰吸引の実施割合
- 10%以上5
- 5%以上3
- 5%未満0
- ⑩経管栄養の実施割合
- 10%以上5
- 5%以上3
- 5%未満0
- 退所時指導等
-
a: 退所時指導
入所者の退所時に、当該入所者及およびその家族等に対して、退所後の療養上の指導を行っていること。
b: 退所後の状況確認
入所者の退所後30日※ 以内に、その居宅を訪問し、または指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、在宅における生活が1カ月※以上継続する見込みであることを確認し、記録していること。
- リハビリテーションマネジメント
-
入所者の心身の諸機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるため、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを計画的に行い、適宜その評価を行っていること。
- 地域貢献活動
-
地域に貢献する活動を行っていること。
- 充実したリハビリ
-
少なくとも週3 回程度以上のリハビリテーションを実施していること。
※ 要介護4、要介護5 については2 週間