徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)5月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1084 三面

日本消化器内視鏡学会総会
徳洲会から12演題
多様なテーマで耳目集める

第93回日本消化器内視鏡学会総会が大阪市内で開催された。メインテーマは「ENDOSCOPY : Evolution,Education and Evidence」。徳洲会からは一般演題やシンポジウム、ワークショップで合計6演題の口演(口頭発表)に加え、一般演題のポスター発表も6演題あった。ここでは口演の概要を紹介する。

シンポジウム

ERCP偶発症への対応

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)小泉一也・消化器病センター部長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)小泉一也・消化器病センター部長

「ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管(すいかん)造影法)関連手技における偶発症とその対策」を全体テーマとするシンポジウムで、「ERCP関連穿孔(せんこう)とその対応」と題して発表。ERCPは胆道と膵管を対象とした検査・治療法のひとつだが、時に穿孔など重大な偶発症を生じることがある。小泉部長は自院での穿孔例について部位や原因、対応などを検討。「致命的なイベントの発生率を減らすには、早期診断と迅速な対応が最も重要です」と結んだ。

ワークショップ

簡便・安全・安価にESD

宇治徳洲会病院(京都府)安田光徳・消化器内科部長兼内視鏡センター長 宇治徳洲会病院(京都府)安田光徳・消化器内科部長兼内視鏡センター長

「外科医の左手を模して開発した簡便安価なTraction法としてClip・Snare・Lifting-ESD(CSL-ESD)の有用性について」と題し口演。

安田部長は市販のクリップとスネア(ループ状の針金)を活用し、剥離(はくり)途中の病変を適切に挙上、良好な視野を保ちながら、簡便・安全・安価にESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行う方法としてCSL-ESDを開発し、2012年から13年にかけて関連学会で発表してきた。

「研修生にはESDを簡便化、熟達者にはESDを迅速化できることが明らかになりました」と報告した。
外科治療回避の方法

札幌東徳洲会病院 伊藤貴博 IBDセンター部長 札幌東徳洲会病院 伊藤貴博 IBDセンター部長

「小腸内視鏡を用いた定期的バルーン拡張術(EBD)によりクローン病の手術を回避できる」というテーマで口演。炎症性腸疾患であるクローン病の消化管狭窄(きょうさく)は外科治療(手術)の大きな原因となる。1回のみEBDを行った患者さんでは初回EBD後3年で44%が手術に至るのに対し、定期的にEBDを行った患者さんでは10%しか手術に至らなかった。

「合併症に注意し小腸内視鏡で定期的にEBDを行うことは、外科治療を回避できる有用な方法です」とまとめた。

一般演題

挿入法の習得を効率化

福岡徳洲会病院 仲道孝次・消化器内科主任部長 福岡徳洲会病院 仲道孝次・消化器内科主任部長

「大腸内視鏡挿入練習モデル(MKSコロンモデル)の有効性」と題し発表。新しい練習モデルを用い、パターン化されたスコープ挿入法の習得方法を考案した。上級者が直腸から左結腸曲までに、スコープをどれくらい右回転するかを測定。「約45㎝挿入し、450度右ターンしていました。上級者と同じ回転角度を意識しながら挿入することで、挿入法の習得の効率化につながると考えられます」と結んだ。
ステントは安全な減圧法

福岡徳洲会病院 谷川祐二・消化器内科医師 福岡徳洲会病院 谷川祐二・消化器内科医師

「当院における悪性大腸狭窄に対するステント治療成績」と題し発表。悪性大腸狭窄に対するステント(金属製の網状の筒)留置術42症例を検討した。「狭窄部位への1回での適切なステント留置の成功」と定義した技術的成功率は97.6%、「24時間以内に画像で閉塞の解除を確認」などと定義した臨床的成功率は92.9%。穿孔例もなく、「高い成功率と低い合併症率・人工肛門造設率を実現でき、安全で低侵襲な減圧法といえます」などとまとめた。
抗血栓薬で出血リスク増

千葉徳洲会病院 外山雄三・消化器内科医師 千葉徳洲会病院 外山雄三・消化器内科医師

「当院における消化性胃潰瘍に対する検討」をテーマに口演。アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は内服することで消化性潰瘍の発症リスクが高まると言われている。それらの内服群と非内服群を比較検討し、「内服している胃潰瘍の患者さんは、高齢で基礎疾患をもっており、主訴として黒色便が多くありました。また緊急内視鏡治療の検討では、バイタルサイン(生命兆候)や採血データで出血リスクを評価することにより、適切な内視鏡のタイミングが判断できます」と締めくくった。

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