徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2016年(平成28年)12月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1061 三面

多様なケースを共有
徳洲会心外部会
胸部外科学会へ12演題

徳洲会心臓血管外科部会は、第69回日本胸部外科学会定期学術集会の日程に合わせ、岡山県で第2回集会を開催した。参集したグループ9病院の心臓血管外科医らが互いの診療体制を共有し、若手医師の育成などで協力していくことを約束。また、心臓弁膜症手術で高名なライデン大学メディカルセンター(オランダ)のロバート・J・クラウト教授を招聘(しょうへい)し、僧房弁形成術の最新トピックスについて学んだ。胸部外科学会では徳洲会からポスター発表7演題を含め12演題を発表、口演(口頭発表)の内容を中心に紹介する。

心外部会のメンバー。クラウト教授(前列中央)を囲んで 心外部会のメンバー。クラウト教授(前列中央)を囲んで

徳洲会心外部会は胸部外科学会の日程に合わせ年1回開催。今回は仙台徳洲会病院、千葉西総合病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、湘南厚木病院(同)、名古屋徳洲会総合病院、松原徳洲会病院(大阪府)、岸和田徳洲会病院(同)、近江草津徳洲会病院(滋賀県)、宇治徳洲会病院(京都府)の計9病院から心外医師が参集した。

クラウト教授は心臓弁膜症に対する僧房弁形成術についてレクチャー、伸びて機能しなくなっている弁の周囲の弁輪を補強する道具として、円状の人口弁輪であるリングを推奨した。

リングを使用しないと、使用する場合に比べ明らかに予後が悪いことが、多くの論文で示唆されていると明かし、「僧房弁形成術の最大の予後不良因子はリングを使用しないことです」と、リングを必ず用いるよう要請。

この講演を受け、部会でも僧房弁形成術が話題となり、正中切開(胸部正面を切開する手術)か、MICS(低侵襲心臓手術)のどちらが、患者さんの予後や術後QOL(生活の質)に良いか、合併症にはどのように対応するかなど各自が意見を述べ合った。

その後は自院の診療体制や教育体制について情報共有。同部会担当役員の東上震一・医療法人徳洲会副理事長(岸和田病院院長)は、同じ心外でも得意分野が異なることなどから、「とくに若いうちに多くの上司の下で働いてみる経験は大切です」と、若手医師がグループの他病院で一定期間、研修することができるような交換研修制度の設立を提案した。

部会長の大橋壯樹・名古屋病院総長もこれに賛同、心臓手術は徳洲会の得意分野のひとつであり、高い技術水準にあるとしたうえで、「今後のさらなる技術向上に向け、グループ病院間の連携強化が必要です」と訴えた。

学会活動も活発

シンポジウムではCABG の術式別遠隔成績について議論 シンポジウムではCABG の術式別遠隔成績について議論

今学術集会ではシンポジウムに岸和田病院の降矢温一・心臓血管外科医長、クリニカルビデオに名古屋病院の飯田浩司・副院長兼心臓血管外科部長、口演に吹田徳洲会病院(大阪府)の後藤隆純・心臓血管外科医師、名古屋病院の景山聡一郎・心臓血管外科医師(現・東京西徳洲会病院心臓血管外科部長)、松原病院の古井雅人・心臓血管外科医長がそれぞれ登壇した。

降矢医長は、低左心機能CABG(冠動脈バイパス術)について、①心停止下に人工心肺を用いて実施、②心拍動下に補助的に人工心肺を用いて実施、③心拍動下に人工心肺を用いず実施――の3種の術式の遠隔期手術成績を比較。その結果、人工心肺の使用の有無は遠隔期成績と因果関係が認められなかったことを報告した。

飯田副院長は、前胸部が陥凹(かんおう)する疾患「漏斗胸(ろうときょう)」に対する胸肋(きょうろく)挙上術を紹介。ゆがんだ肋軟骨の一部を切除し、その断端を引き寄せて糸でつなぐことで、胸郭が元に戻ろうと引き合う力を利用して矯正する独自の手技で、他の術式に比べ金属などの異物を留置することがなく、疼痛(とうつう)や合併症が少ない、侵襲が少ないなど利点が多いことをアピールした。

後藤医師は、大動脈瘤(りゅう)に対する人工血管置換術後の人工血管感染について、同合併症の診断や手術治療時期の決定に18F―FDG PET―CT(ポジトロン放射断層撮影装置)が有用である可能性を報告した。

景山医師は50歳未満の若年性急性A型大動脈解離64例の手術成績を検討した結果、「短期成績は良好であるものの、長期予後を考えた術式の検討が必要です」。

古井医長は、心室中隔穿孔(せんこう)の手術は心不全が進む前の急性期に手術をすべきとの意見もあるなか、呼吸循環管理により待機手術を目指すことで良好な成績が得られたこと、待機中も臓器障害の進行など認められなかったことを報告した。

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