徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

上山 泰男(かみやまやすお)(瀬戸内徳洲会病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

上山 泰男(かみやまやすお)

瀬戸内徳洲会病院院長

2016年(平成28年)9月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1048

奄美群島のきめ細やかな医療と介護は
徳洲会グループ全体の共同作業で維持
離島研修はバックボーンとなり“一生の宝”

1986年、奄美群島(有人島は奄美大島、加計呂麻(かけろま)島, 請(うけ)島、与路(よろ)島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の8島)初の徳洲会病院として徳之島徳洲会病院が開設されました。現在では、群島内には徳洲会グループの病院が7施設、診療所が4施設あり、さらに看護・介護施設も10施設あります。

私の離島勤務は徳之島が最初です。病院内の雰囲気は都市部のふつうの中規模病院と同じでした。徳之島の青年はエネルギッシュで力強い感じでしたが、高齢の方々はむしろ物静かで、物腰柔らかな印象を受けました。

奄美群島ではシマ(集落)ごとに異なる文化や伝承があり、島口(しまぐち)(方言ではなく独立言語)が現在も使われています。三線(さんしん)を弾き、島唄を歌い、はじまりが万葉の時代以前にまで遡(さかのぼ)る両手をかざす島の踊りなど、日本の古代文化が島人(しまんちゅ)により継承されていることを、後になって知りました。

奄美群島への応援者数が14年度は計2196人に

昨年度、離島ブロックの全病院や徳洲会インフォメーションシステムが集計したデータによると、この15年間(2000~14年)に限っても、奄美全島で630万人以上の方々が徳洲会病院の外来を受診、約275万人の方々が入院・診断・治療を受けています。この間、救急車受け入れ件数は3万6895件。自衛隊などのヘリコプターによる奄美群島内の徳洲会グループ各病院からの島外搬送は、この1年で143件でした。

また、15年間に6691件の分娩(ぶんべん)を扱っています。全国的な産科医不足で徳之島病院でも13年から産婦人科医が不在となりましたが、グループ病院の応援で産科医療は継続できました。

離島に専門医が常駐もしくは来島していたとしても、医療機器がなければ医療は完結しません。しかし、各病院にはCT(コンピュータ断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像診断装置)など高額機器が設置され、脳外科、心臓外科、心臓カテーテルなど待機手術に加え、高度な救命救急、緊急手術にも対応しています。さらに、高度な知識・技能・経験をもつ看護師をはじめとした医療従事者の存在が不可欠です。14年4月からの1年間に限定しても、全国の徳洲会病院から奄美群島への応援者数は医師1328人、看護師156人、薬剤師228人など計2196人に上ります。

現状の奄美の医療・介護を維持・継続し、また新しく開発された治療を離島で行うためにも、徳洲会グループからの専門医・専門職の定期的な支援が欠かせません。都市部の徳洲会グループの各病院が、さらに専門性を高め、充実・発展することにより、全国から研修医もさらに多く集まります。彼らが研修の場として来島することが、離島医療の維持に直結しています。

仲間のサポートにいつも感謝 経済効果もたらし地元に還元

これらの医師・医療従事者の切れ目のない派遣には、派遣元の病院や職員個々人の多大な犠牲が払われています。私たちは、こうした仲間のサポートに、いつも感謝しています。患者さんの搬送などで国や県などの公的サポートがありますが、かくも長期間にわたる、きめ細やかな離島への医療・介護の提供は、徳洲会グループ全体の共同作業で維持してきたのです。

今後もそれは継続していくと確信します。一方で、徳洲会の活動は地元に大きな経済効果ももたらしています。全島の徳洲会職員は計約2000人で、支払われる人件費総額は年間96億円以上です。固定資産税や地元業者との商取引などを合わせた支出総額136億円が、地元に還元されています。

瀬戸内徳洲会病院は救急救命医療、訪問診療などを行う地域での医療連携の中心病院です。『徳洲新聞』909号の直言で、伊東直哉先生、朴澤憲和(ほうざわのりかず)先生(現・瀬戸内病院医局長)が瀬戸内病院や加計呂麻徳洲会診療所での体験をふまえ、離島は総合診療の“最高の舞台”で、患者さんから数多く学んだこと、若い医師たちの離島での活躍の継続と、これを循環するシステムの重要性を強調されています。

離島研修で得た経験は研修医のバックボーンとなり、“一生の宝”となります。

これからも全国の徳洲会職員の一人ひとりが、日々の業務を通じ奄美の離島医療・介護の現場を支えていただきますよう、お願い申し上げます。「生命だけは平等だ」、この哲学を胸に秘め、皆で頑張りましょう。

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