徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2016年(平成28年)1月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1013 三面

第43回日本救急医学会
激変する救急医療に対応
徳洲会から27演題発表

第43回日本救急医学会総会・学術集会が都内で開催された。テーマは「救急医療のイノベーション」で、激変する救急医療に対応できるよう多様な議題を討論。徳洲会から発表のあった27演題のうち口頭発表を中心に概要を紹介する。

主要関連セッション

離島研修の意義

末吉敦院長 宇治徳洲会病院(京都府) 末吉敦院長 宇治徳洲会病院(京都府)

「総合病院全体が救命救急センター ―救急マインドの育成―」同院には全科で救急搬送に対応する文化があり、年間搬送受け入れ件数は約7500件、救急応需率は97~99.5%に上る。その理由として末吉院長は同院医師の6割が徳洲会グループの初期研修修了者であることを挙げた。

徳洲会では初期2カ月、後期3カ月の離島研修を義務付けており、「どんな症例であっても断れない状況で研修を受けているうちに救急マインドが育ちます」と、離島研修の意義を強調。

何を情報提供すべきか

増井伸高・救急科医師 札幌東徳洲会病院 増井伸高・救急科医師 札幌東徳洲会病院

「これから救急医を目指す学生・研修医が求めているもの」増井医師は救急医学会の学生・研修医部会設置運用特別委員として学生・研修医対象のセミナーを開催。研修医らに救急医療を選択してもらうため提供すべき情報をアンケート結果などから考察した。

結果、救急医のキャリアパスは救急医療を進路とする者とそうでない者とで興味に差があり「広く若者に伝えるべき情報は全員が興味をもつ救急医療の知識やワークライフバランスについてです」

子連れ学会を推奨

薬師寺泰匡・救急科医長 岸和田徳洲会病院(大阪府) 薬師寺泰匡・救急科医長 岸和田徳洲会病院(大阪府)

「子連れ学会のすすめ:家庭と学会活動の両立のために」医業多忙で家庭に負担がかかったり、女性医師のなかには学会に出席できず資格取得できなかったりと、出産・育児にどうかかわるかは若手医師の切実な問題。そこで3歳の第1子とともに学会参加した経験を紹介した。未就学児は旅費や宿泊費をかけずにすみ、荷物も配送すれば対応可能。育児に対する理解も深まると、子連れ学会の有用性を認めた。

薬師寺医長は一般口演でも「肥満と気管挿管成功率の関連:救急気道管理に関する多施設前向き観察研究」と題し発表。ER(救急外来)で気管挿管した全例が対象の多施設共同研究の二次解析を行った。内科心停止で搬送され咽頭(いんとう)鏡で気管挿管した15歳以上の1521例をBMI(肥満度)別に5群に分け、挿管の成功率を検証。

結果、BMI30以上35未満の初回挿管の成功率が低く「肥満者への気管挿管は手技に慣れたスタッフの配置や、他デバイスの用意が必要」とした。

三次救急が増加

鍜冶有登・救命救急センター長 岸和田徳洲会病院 鍜冶有登・救命救急センター長 岸和田徳洲会病院

「地域のICUとしての救命救急センター ~ER型救急からの変貌~」2012年の救命救急センター認可前後の搬送症例の内訳を検証した。同院は以前からER型救急を実践しており、認可以降も三次救急に特化せずERを継続。搬送症例数は微減したが、三次救急(超重症例)は増加し、内因性疾患が8割以上を占めるなど同院の特徴が鮮明化した。

同院所属の医療圏は搬送困難例が少なく、鍜冶センター長は同体制を維持し地域医療に貢献することを約束。

一般口演

薬剤耐性菌のリスク検討

武田慧太郎・救急総合診療科医師 札幌徳洲会病院 武田慧太郎・救急総合診療科医師 札幌徳洲会病院

「薬剤耐性グラム陰性桿菌による市中発症急性腎盂腎炎の特徴と危険因子」市中で発生し、自院のERおよび一般内科外来を受診した菌血症をともなう急性腎盂腎炎(CA-APN)45例を後方視的に検討した。結果について、武田医師は介護施設在住、侵襲的処置、糖尿病、慢性腎臓病、認知症が薬剤耐性と有意に関連していたことなどを報告。特定のリスクをもつ症例では、薬剤耐性菌を想定して初期抗菌薬を検討する必要性を示唆した。

脳皮質下出血時に考慮を

宇藤薫・救急科医長 鎌ケ谷総合病院(千葉県) 宇藤薫・救急科医長 鎌ケ谷総合病院(千葉県)

「脳皮質下出血にて受診し、難病疾患の最重症例の診断加療に至った一例」ERをふらつき、異常行動の主訴で受診し、脳皮質下出血を認めたが、①白血球、なかでも好酸球が増加、②高齢発症の喘息(ぜんそく)あり、③ 末梢(まっしょう)神経炎あり――などの所見から当初より稀少難病の好酸球性多発血管炎肉芽腫症を鑑別に診療。最重症にもかかわらず救命し、リハビリ転院させ得た例を報告した。

宇藤医長は単発の皮質下出血の場合は血管炎由来の同疾患も考慮すべきと訴えた。

血液浄化法の課題を示唆

松岡俊三・救命救急センター医師 宇治徳洲会病院 松岡俊三・救命救急センター医師 宇治徳洲会病院

「シベンゾリン中毒による心肺停止の1例」抗不整脈薬のシベンゾリン中毒で救急搬送された患者さんを血液浄化で救命したケースを紹介。課題として血中だけでなく透析液中や交換血漿中の薬物濃度なども測定し、薬物を体外に排泄(はいせつ)する能力への寄与を検証することを挙げた。

急性薬物中毒に対する体外式膜型人工肺(ECMO)の適応性も示唆。患者さんが来院後、心肺停止に陥ったが、ECMOの早期導入で独歩退院できたことを報告した。

NPはERのマンパワー

松田知倫・救急科医長 札幌東徳洲会病院 松田知倫・救急科医長 札幌東徳洲会病院

「当院ERにおける診療看護師(NP)による診療の特徴~NPはERの救世主たるのか~」昨年4月、ERに配属されたNPと初期研修医(1年次)とを比較し、NPの診療の特徴を報告。研修医よりも優れていた点として、帰宅可能かどうかを生活背景も含め総合的に判断できることなどを挙げた。

松田医長はNPがERのマンパワーになり得ることを示すとともに、それぞれの特徴を生かすことで救急医療の安定化、質向上につながるとした。

ワクチン接種後の感染

境達郎・救急総合診療科医師 宇治徳洲会病院 境達郎・救急総合診療科医師 宇治徳洲会病院

「肺炎球菌ワクチン接種後の脾摘患者に生じた肺炎球菌性髄膜炎の一例」脾臓(ひぞう)摘出後は免疫低下するため23種の血清型をもつ肺炎球菌ワクチンPPSV23接種が推奨されている。境医師は同接種2年後に肺炎球菌性髄膜炎に罹患(りかん)した例を提示。

先行研究ではPPSV23接種後も抗体濃度が80%以下の血清型もあることを報告しており、PPSV23接種歴があっても肺炎球菌感染の可能性はあり、その場合は13種の血清型をもつPCV13の追加接種も検討すべきであると訴えた。

胃蜂窩織炎に内科療法

森田吉則・救急総合診療科医師 宇治徳洲会病院 森田吉則・救急総合診療科医師 宇治徳洲会病院

「内科的治療にて改善した気腫性食道・胃蜂窩織炎の一例」原因不明の発熱に対し熱源探索のためCT(コンピュータ断層撮影装置)で撮影したところ、食道と胃壁に気腫像。内視鏡で食道・胃内にびまん性粘膜障害を認め、血液培養と胃液培養の結果、気腫性食道・胃蜂窩織炎(ほうかしきえん)と診断した例を紹介した。

同疾患は外科療法が一般的だが、今回は全身状態が悪かったため抗生物質投与による内科療法を施行したところ、状態は改善し退院した。

早期発見ならば同疾患を内科療法で治癒し得たことを報告。

外科療法を推奨

日並淳介・外科医長 宇治徳洲会病院 日並淳介・外科医長 宇治徳洲会病院

「原発性大網膿瘍破裂の1例」異物による腹腔(ふくくう)内感染や開腹手術の既往、外傷など考え得る原因が見当たらない原発性大網膿瘍(たいもうのうよう)は、国内でこれまで10数例しか報告がなく極めてまれ。一般に特異的所見に乏しく術前診断は困難で、同症例も原因不明の急性腹症として緊急開腹手術中に、膿性腹水と大網に膿瘍を見つけ大網膿瘍と診断、大網部を切除し洗浄ドレナージを施行した。

日並医長は過去の報告例では内科療法はすべて失敗していることを強調、外科療法を推奨した。

シンポジウム

外傷専門医育成が必要

土田芳彦・外傷センター長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県) 土田芳彦・外傷センター長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)

「重度四肢開放骨折治療の理想的なあり方とは?」重症四肢外傷の機能再建には外傷整形外科医と外傷形成外科医が手を携えて治療にあたる必要があるが、実際には外傷を専門とする形成外科医は少ない。

そこで土田センター長は外傷学、整形外科外傷学、マイクロサージャリー(顕微鏡を用いた微小手術)のすべてを修得した「外傷再建外科医」を育成し、救命後は速やかにそうした医師が常駐する四肢外傷再建センターに搬送するシステムの構築を訴えた。

外傷再建外科医の育成について質問が上がると、土田センター長は必要な要素として本人の資質、豊富な症例数、しっかりした指導体制――を挙げ、症例の集約化が肝要だと指摘した。

学生・研修医セッション

大腿骨骨折に肺炎リスク

西條正二・初期研修医 札幌徳洲会病院 西條正二・初期研修医 札幌徳洲会病院

「大腿骨骨折治療中に急変した症例23例の検討」大腿(だいたい)骨骨折の1年以内死亡率は10%前後と高めであることから、周術期の予後不良因子を検討した。周術期に急変しICU(集中治療室)入室となった23例を後ろ向きに評価したところ、死亡例は10例で、感染症を合併している場合に死亡率が有意に高かった。

感染症の内訳は肺炎、腎盂腎炎、創感染などで、なかでも肺炎の死亡率が高かったため、「大腿骨骨折の周術期は、創部以外の感染コントロールも重要です」と西條研修医は強調。

質疑応答では、感染の起炎菌(炎症のもととなる菌)や術前リスクについて関心が集まり、西條研修医らは次回以降の課題とした。

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