和泉市立総合医療センター

「療養環境のチェックをさせていただきますね」 夕暮れ時の病室を、日勤の看護師と夜勤の看護師が訪問した。勤務の交代にともなう病室での申し送り(患者さんの状態・環境などに関する情報を伝えること)を行うためだ。申し送りは、入院患者さんへの挨拶と冒頭のひと言から始まる。毎日、ほとんどの病室で見られる光景だ。 引き継ぐ側の夜勤担当者がバインダーを片手に持ち、患者さんの状態やナースコールの位置、離床センサーの作動状況などを、ふたりで次々とチェック。適切でない箇所を見つけた場合、その都度、手を伸ばして改善していく。 「スリッパの位置を直しておきますね」、「ナースコールの位置を直しておきますね」など、優しく声をかけながら、患者さんの身の回りを手際よく整えていった。 和泉病院は3年前に療養環境チェックシートを作成・導入。これは患者さんの状態やベッド周りの環境、その他の生活環境やドレーンチューブ(排液管)の位置、点滴、輸液ポンプの状態などを確認するためのツール。同シートを用いて、日勤と夜勤の看護師が申し送りを行う。療養しやすい環境を整えると同時に、ベッドからの転落や転倒をはじめとする不測の事故を未然に防ぐことが狙いだ。 同院は約5年前からウォーキング・カンファレンスと称して、現在の形で申し送りを行うようになった。ただし当時、患者さんのベッド周りでチェック用紙を用いて確認していたのは、点滴や輸液ポンプ、離床センサーなどに限られていた。それを3年前に療養環境全般に広げたというわけだ。 同院医療安全対策室の片山登志子室長は「転倒・転落は、排泄(はいせつ)関連による移動にともないベッド周囲で発生する割合が高く、当院でも、転倒・転落事故は悩みの種でした。そこで、ウォーキング・カンファレンスの時に療養環境もチェックしてはどうか、と現場から声が上がり、療養環境チェックシートを作成。同シートに沿いダブルチェックを行うことで、防止できるのではないかと考え、取り組みを始めました」と経緯を説明する。 入院時に全患者さんを対象に実施する転倒・転落アセスメント(評価)に基づき、同シートの適用を判断。整形外科病棟(40床)での適用率は9割を超え、全病棟平均では7~8割だ。 導入後、目に見えて効果が上がっている。整形外科病棟では13年度に14件の転倒・転落があったが、14年度は12月末時点で5件と大幅に減少。 整形外科病棟の辻野雅子師長は「数字に表れているとおり、本当に良くなってきたと感じています。ただしゼロではないので、1件ごとに事例を検討し、改善を積み重ねています」と話す。 同院安全看護小委員会のメンバーで、整形外科病棟の医療安全を担当する上橋(かんばし)真季看護師は「個々の看護師の判断に任されてきたことを標準化・統一化できました。療養環境の質の維持に貢献していると思います」と強調する。 14年12月には同シートを改訂し、2枚にわたっていたシートを、チェック項目を減らすことなく1枚に集約。記入の手間など負担の軽減が狙いだ。また、これまで紙ベースで運用・保存してきたが、15年1月に電子化し、電子カルテに付随したツールとして機能の向上を図った。