館山病院
新型コロナウイルスに限らず、これからの季節はインフルエンザの流行も懸念されます。そこで徹底したいのが家庭での感染対策。①感染症の原因となる微生物を家庭内に持ち込まない、②感染症の原因となる微生物がいるところから持ち出さない、③家庭内で感染症を広げない――ことが大切です。そのためには微生物がどこにいるか予測し、感染経路を遮断することが必要。館山病院(千葉県)の杉田雅央・看護主任(感染管理認定看護師)がポイントを解説します。

家庭でできる感染予防策には①手指衛生、②マスクの着用、③自宅の換気と環境消毒、④家庭内の濃厚接触者の対応――の4つが考えられます。
手指衛生の目的は手のひら、手の甲、指の間などに付着していると予想される微生物を死滅させたり、目に見える汚れを除去したりすること。手を完全に無菌にはできませんが、付着する微生物を減らすことで、リスクを減らすことができます。
アルコールによる手指消毒は、アルコールが効かない微生物があるという欠点はありますが、簡単で場所を選ばないメリットもあります。手が乾くまで擦り込むことが重要で、手を振って乾かしてはいけません。指先や指の間、親指、手首は消毒漏れしやすいので気を付けましょう。また、新型コロナウイルスに有効とされるのは濃度60vol%以上なので、購入時には注意してください。
一方、流水とせっけんによる手洗いでは、正しく洗えば、どの微生物にも有効ですが、洗い残し、また洗いすぎによる手荒れに要注意です。よく泡立て、時間は短くても2回手を洗うと高い効果が期待できます(表)。
手指衛生のタイミングは、家の中に微生物を持ち込まないために「帰宅時」、口などに微生物を侵入させないために「食事前」を徹底する必要があります。外出先では人の密集する場所から出た時、人が手で共有して使うものに触った時などは、とくに注意し、積極的に手指衛生を行いましょう。
マスク着用の目的は、せきやくしゃみなどかぜ症状のある人が、周囲の人や環境に微生物を飛散させないこと。密閉・密接・密集に当てはまる場合、人との距離が2m以内になる場合は着用が必要です。着ける時は鼻とあごがしっかりと覆われているか、隙間はないか、表裏を間違えてないかに気を付け、はずす時はマスクの表面に触らずに耳かけのゴムひもを持ってはずし、その後は手指衛生を行いましょう。

自宅の換気では、対角線上の窓を開けると効率的です。窓がひとつしかない場合は、窓のそばに扇風機を置き、外に向かって風を送れば、風の流れをつくることができます。
環境消毒では、消毒用エタノールなどを用い、ドアノブやテーブルなど手で触れて共有する場所を中心に消毒。霧吹きでの散布は健康被害を起こす可能性があるのでやめましょう。また、新型コロナウイルスは生存期間が長く、銅で4時間、紙幣で4日間生存すると報告されています。しかし、硬貨や紙幣を消毒するよりも、日常の感染対策を徹底するほうが大切です。
もし家族が濃厚接触者となった場合、症状があれば、すぐに保健所に報告しますが、症状がない場合は部屋を分け、濃厚接触者の部屋に入る際には双方マスク着用と手指衛生が必須。トイレなど共有スペースを使用した後や食事前などに手指衛生を徹底し、2週間ほど様子を見ます。それで症状が出なければ問題ありませんが、少しでも心配がある場合は保健所などに相談しましょう。
→徳洲新聞1253号掲載