葉山ハートセンター
院内感染なくクルー全員が無事退院
葉山ハートセンター 一般病院として最善手を講じる
世界で猛威を振るう新型コロナウイルス。国内でも感染拡大のペースが速まっている。こうしたなか、神奈川県にある徳洲会グループ病院のひとつ、葉山ハートセンターでは、2月3日に横浜港に到着し集団感染の発生が確認された大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の30~60代のクルー(乗組員)男女計10人の感染者を、国の要請に応え受け入れた。全員軽症で、3月14日までに全員がPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で陰性に転じたことを確認し退院。このほか地域の陽性患者さんも受け入れ、16日に3人とも転院した。クルーたちの退院後、対応にあたったスタッフ全員もPCR検査で陰性を確認した。
関東の徳洲会病院から応援看護師が続々参集
看護スタッフの確保にも奔走。徳洲会グループのスケールメリットを生かし、クルー受け入れを決めてから間もなく、徳洲会関東ブロックの病院から葉山ハートセンターへの看護師の支援調整を開始した。調整の結果、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、茅ヶ崎徳洲会病院(同)、大和徳洲会病院(同)、静岡徳洲会病院に所属する看護師が応援業務に従事することが決定した。
準備を始めた20日のうちに、ベッドや床頭台、ナースコール、対応するスタッフのための使い捨てのガウンやゴーグルなど物品の搬入を完了。最大32人(4人部屋×8室)の受け入れ体制を整えた。21日にはA棟に通じる通路に突貫工事で壁をつくり完全に遮断。22日に応援スタッフとの顔合わせを行い、グループ病院の感染管理認定看護師の助言の下、感染防護具の着脱のシミュレーションやレッドゾーン(汚染区域)、グリーンゾーン(非汚染区域)、受け入れ時の流れなどを確認した。
受け入れは24日、25日の2日にわたり5人ずつ、すべて軽症の計10人で、全員クルー。自衛隊救急車、民間救急車で搬送されてきた。これらの車両は同院に面する国道からではなく、直接B棟にアクセスできる裏手の坂道から進入。ひとりずつ誘導し、屋上からエレベーターで移動、病室に案内した。
10人のうち、1人は日本人で、残りの9人はフィリピン3人、インド2人、インドネシア1人、タイ1人、ウクライナ1人、ハンガリー1人。このほか25日には保健所からの依頼を受け、地域の陽性患者さん3人も受け入れた。
いずれの患者さんもB棟2階の4室に分けて入院。風呂、トイレが病室内に完備されていたことから、レッドゾーンを病室内に限定することができた。
クルーへの対応は田中院長や看護師、応援看護師、移動型X線撮影装置で胸部X線撮影を担当した診療放射線技師、食事提供に奔走した調理師、クルーの誘導など担った事務職員やリハビリテーションスタッフなど、受け入れから退院まで病院を挙げて行った。午前中、看護師がバイタル(生命兆候)を測定、その後、田中院長が回診して症状の確認や聴診などを行い、全身状態を確認した。
対応に従事したスタッフは全員、毎日2回の健康チェックを実施。病室内でバイタルの測定を担当した看護師は、その場でナースコールを使って室外のスタッフステーションにいる看護師に口頭で伝え記録を取ってもらうなど、感染予防を徹底。記録用紙を病室外から室内に持ち込み、再び室外に持ち出すと感染源となる恐れがあるためだ。
できるだけクルーと接触する機会を減らすため、コミュニケーションにはタブレット端末を用いたテレビ電話を活用した。また10人とはいえ、クルーたちの国籍はさまざまで、文化・風習・宗教の違いから、食事の提供にも苦労が多かったという。
遠隔操作可能なアバターロボットも試験的に導入
厳格な退院基準に沿いPCR検査で陰性となった2人が3月5日に退院したのを皮切りに、14日までにクルー全員が退院。地域の患者さん3人も16日には転院した。
17日には対応にあたった葉山ハートセンターのスタッフと応援で訪れていたスタッフ全員の陰性を確認した。
クルーへの対応の一環で、遠隔地からロボットを操作し、物理的な隔たりを克服するアバターを試験的に導入。
ANA(全日本空輸)が開発したもので、タイヤが付いておりラジコンのように操縦することが可能。上部のモニターには操縦者の顔が映し出され、あたかも対面して会話しているようなコミュニケーションが可能になる。感染予防策のひとつとして、全員の退院が完了する間際の3月13日に導入、田中院長が問診に活用した。
→徳洲新聞1232号掲載

