介護系施設
「早期に復旧する施設づくり」

介護老人保健施設岸和田徳洲苑(大阪府)は災害に関するマニュアル整備や設備の配置変更などを行い、防災体制の強化を図っている。
きっかけは2018年9月の台風21号。近畿地方を中心に甚大な被害をもたらし、同施設も風圧で窓ガラスが割れたり、風で飛ばされた近隣の電気温水器や看板が施設の送迎車や職員の自動車を直撃し破損したりするなど被災した。また、台風前には夜間の停電を経験。エレベーターや扉の電子キー、内線が使用できず、フロア間の移動や連絡が困難になり、非常用バッテリーの準備やヘッドライトの設置などに時間を要した。

原田さとみ総看護師長は「非常用バッテリーは2台あり、1階にまとめて管理していました。停電にともない1台を2階に移そうとしたのですが、20㎏以上あり女性スタッフには持ち運べませんでした。またランタンやヘッドライトは電池式で暗闇のなかで電池を入れるのに手間取りスムーズに使用できませんでした」と振り返る。その後、立て続けに台風21号を経験したことで、「防災に対する職員の意識が変わった」という。
具体的な改善点は、①非常時には扉にオートロックがかからないように工夫、②ランタンの増数と一部に電池を挿入、③非常用バッテリーの各階への配置、④マニュアルやアクションカードなど修正、⑤安否確認システムの導入――など。
なかでも④について防災委員を務める前田清美・介護副主任(介護福祉士)は「誰が何をするかが明確でなく、勤務時間帯や所属部署ごとにするべきことをわかりやすく改良しました」と説明。施設内の防災設備を写真付きで記した「防災設備マップ」や被災時の初動フローチャートを新たにつくった。

防災委員の小阪聡子・介護福祉士は「一昨年、災害に対する認識の甘さを痛感しました」と振り返り、「利用者さんを守るには、まずは自分の安全や施設の機能をできるだけ維持する重要性を実感しています」と吐露。今後も訓練などを通じ改善すべき点を検討していくという。原田総師長は「介護施設は病院ほど設備が整っていません。ちょっとした改善ですが、その積み重ねが“被災しても早期に復旧する施設づくり” には重要だと思っています」と語気を強める。
→徳洲新聞1226号掲載