徳洲会グループ

徳洲会グループ看護部は2月8日、第4回業務改善発表会を千葉西総合病院で開催した。看護の質の向上や業務の効率化など、グループ各病院の看護部が取り組んできた改善活動の内容や成果を発表し、それらを共有することで全体の底上げを図るのが狙い。全国72病院のなかから、ブロック予選を通過した18演題の発表を行った。約100人の看護師が集まり業務改善のヒントを探った。

湘南鎌倉病院が1位に

4回目を迎えた業務改善発表会は和泉市立総合医療センター(大阪府)の山上美恵子副院長の進行でスタート。札幌東徳洲会病院の坂本真起代・看護部長が開会挨拶で「皆さん多忙のなかで取り組んできた成果を存分に発表してください。活発な質疑応答を期待しています」と呼びかけた。

3部制で各6演題、計18演題の発表を行った。テーマは転倒転落予防や褥瘡(じょくそう)発生低減、リハビリのアウトカム(成果)評価、退院支援、手指衛生順守率向上、災害時の初動対応、マニュアル改善、時間外勤務低減など多岐にわたった。参加者は発表された各病院の取り組みを自施設に取り入れることを念頭に、発表者に対し積極的に質問。狙いどおり活発な質疑応答が行われ、盛り上がった。

終了後に審査員の投票により、恒例の表彰式を実施。一般社団法人徳洲会(社徳)の遊佐千鶴・常務理事が賞状を手渡した。1位は湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、2位は福岡徳洲会病院、3位は札幌徳洲会病院。遊佐・常務理事による「千鶴賞」は成田富里徳洲会病院(千葉県)が受賞した。1位の演題概要と受賞者の声、2位、3位の受賞者の声を紹介する。

湘南鎌倉病院は宮國聡・看護副主任が「転倒転落発生率の低下~転倒転落アセスメントシートと転倒転落対策フローチャートの作成と導入~」をテーマに発表。同院では一般的に推奨されている転倒転落アセスメントシートを2004年頃から使用してきた。ただし9分野39項目とチェック項目が多いうえに、約8割の患者さんがハイリスクに該当してしまい、一方で予測精度に関して統計学的な検証はされたことがなかった。そこで同院は、新たな転倒転落アセスメントシートと転倒転落対策フローチャートの導入に取り組んだ。

具体的には複数の病棟を対象に、アセスメントシート9分野39項目のうち、転倒転落につながるリスクが高い項目を調べるために統計解析を実施。①転倒転落の既往がある、②ふらつき、③トイレに介助が必要、④麻薬、⑤夜間トイレに介助が必要――の5項目に絞ることができた。その後、これをもとに作成したアセスメントシートと、ADL(日常生活動作)・介助量などを基準に適切な対策を割り出すフローチャートを導入し、導入前後の転倒転落発生率を比較。

その結果、各病棟で転倒転落発生率の低減を確認することができた。宮國・看護副主任は「超急性期病院の転倒転落データをもとに作成したアセスメントシートとフローチャートは、転倒転落低減に効果的なツールであり、ハイリスク患者の特定につながると考えます」とまとめた。

表彰後のスピーチで宮國・看護副主任は「サポートしていただいた多くの方々に感謝しています。当院スタッフがOne Team(ワンチーム)になったからこそ受賞できたのだと思います。One For All,All For Patient(ひとりは皆のために、皆は患者さんのために)の気持ちを胸に、これからも患者さんのために貢献していきたい」と意気込みを語った。

福岡病院は穴井真希看護師が「災害時の初動対応ができるナースになる~NICU編~」をテーマに発表。「課題は山積していますので、改善に向けて今後も考えながら、いろいろと取り組んでいきたい」と抱負を語った。札幌病院は寺倉佳苗・看護副主任が「時間外勤務短縮に向けての意識改革と取り組み」と題し発表。「病院に戻ったら、皆で結果を喜びたいと思います」と笑みを浮かべた。

表彰式後、遊佐・常務理事は「回を重ねるごとに内容が良くなっており、全体的にレベルが上がってきています。看護界を変えられるような良いアイデアも見受けられました。とても嬉しいことです」と、ねぎらいの言葉をかけたうえで、「忘れてはいけないのは、患者さんのために安心と安全を提供するということです。できることは、すぐに実践するのが大切です」と訴えた。

審査員による総評で、成田富里病院の光野清美・看護部長は「他施設の発表を自分の施設にもち帰って実践しようという熱意が感じられる良い発表会でした」と評価。吹田徳洲会病院(大阪府)の植嶋敏郎・事務部長は「昨年から、さらに進化しているのを感じました。つねに患者さんのためにという視点で、しっかりと成果も出している発表が多かったと思います」とたたえた。

千葉西病院の中野康広・事務部長は「発表会で得た知見を、ぜひ日々の業務のなかで生かしてください」、福岡病院の竹中学・事務部長は「地域特性や病院の規模、期待される診療機能も異なるなか、各病院の特性を生かした発表で嬉しく思います」と話していた。

最後に社徳看護部の佐々木和子部長が「今回の発表には、徳洲会のなかだけでなく、看護界全体に貢献できそうな取り組みがいくつか見られました。4回目でここまでレベルが高くなったことが嬉しいです。今後、世界に広められるような改善活動に成長していくことを期待しています」とエールを送った。

 

→徳洲新聞1229号掲載