徳洲会グループ

第3回徳洲会緩和ケアセミナーが10月5日、札幌市内で開かれ、徳洲会グループ28病院から多職種約100人が参加した。同セミナーは従来、札幌南徳洲会病院主催だったが、このほど徳洲会緩和ケア部会が発足し、初めて同部会主催として開催。当日は緩和ケアに関するグループの現状や、がん疼痛(とうつう)治療など知見を広めるとともに、メインテーマとしたACP(アドバンス・ケア・プランニング)について多職種が意見を交わした。

モバイルエキスパート構想で服部・統括部長

中部徳洲会病院(沖縄県)の服部政治・疼痛治療科統括部長は「最新のがん疼痛治療」をテーマに特別講演。現状の緩和ケアには改善の余地がある点を指摘したり、がん疼痛治療の基本から専門的な内容(神経ブロック療法や脊髄(せきずい)鎮痛法など)まで解説したりした。

最後に、医師が病院間を移動し、激しい痛みで移動が困難ながん疼痛患者さんに専門的な疼痛治療を提供する“モバイルエキスパート構想”を紹介。実際に訪れた徳洲会グループでの例を示した。

このほか、一般演題で吹田徳洲会病院(大阪府)の馬場美華・緩和医療科部長が「鎮静の手引きについて」、札幌南病院の工藤昭子・看護部長が「緩和ケアにおけるボランティアの働き」、村上令子MSW(医療ソーシャルワーカー)が「緩和ケアにおけるMSWの働き」と題し、発表した。

後半は、今回のメインテーマ「ACP」に関するプログラムを企画。ACPとは、人生の最終段階での医療・ケアについて、患者さん本人が家族や医療・ケアチームなどと繰り返し話し合う“プロセス”を意味する。昨年11月に国の方針で、よりなじみやすいように「人生会議」を愛称とするととなった。

まずシンポジウムで、和泉市立総合医療センター(大阪府)の長谷川喜一・腫瘍内科部長、中部徳洲会病院の新屋洋平・在宅緩和ケア科医長、名古屋徳洲会総合病院の大橋純子・副看護部長、宇治徳洲会病院(京都府)の立石るか看護師、ホームケアクリニック札幌の下倉賢士MSWの5人がシンポジストとして、自院でのACPの取り組みなどを交え、それぞれ発表。

具体的に①医療者は患者さんの意思決定の特性などを理解し、情報の提供を考慮する必要がある、②人生の最終段階の退院支援は「情報」のみをつなぐのではなく、「意思」をつなぐことが重要、③在宅緩和ケアは、入院医療と比べ患者さんや家族とかかわる時間が圧倒的に少ないだけに、とくに意思決定では最初(退院時連携、在宅開始時連携)が重要。また、高度なコミュニケーション技術が求められる――など、異なる立場からACPを実践・普及するためのポイントや課題を示した。

その後、多職種で構成するグループワークを実施。ACPについて意見を交わした。

最後に、札幌南病院の四十坊克也院長が挨拶。「回を重ねるにつれて参加者が増え、とても良い会になっていると思います」と手応えを示した。終了後、前野総長は「服部先生が発表された取り組みは、まさに徳洲会ならではの緩和ケアと言えるでしょう。グループならではの緩和ケアが生まれる機運を大事にしていきたいです」。

→徳洲新聞号1216掲載