徳洲会グループ

国内外で災害医療に取り組むNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は、各地で起きた大型台風被害の支援に奔走した。9月8日夜から翌日にかけ台風15号、10月12日夕方に台風19号がそれぞれ関東地方を直撃。広域で河川堤防が決壊し、家屋への浸水や停電、断水など被害が相次いだ。多くの方々が避難所生活を余儀なくされるなか、TMATは各地で精力的に活動、その軌跡を振り返る。

猛威ふるった台風19号 避難所の衛生活動に力

台風19号でも徳洲会グループ病院・介護施設は、一部で停電があったものの機能維持に影響は出なかった。TMATの福島安義理事長(一般社団法人徳洲会副理事長)は10月13日朝、先遣隊の派遣を視野に検討を進めるよう指示。まずは栃木県と長野県への派遣を決定した(栃木県では先遣隊の視察のみで活動終了)。

長野県では13日に活動を開始。患者搬送ニーズが高く、避難所の支援には手が回っていない状況のため、TMATは長野市保健所と協議し、他団体と合同で5チームをつくり、長野市内の避難所17カ所を調査した。

14日夜から避難所である北部スポーツ・レクリエーションパーク(北スポ)での当直をスタート。翌日から北スポでの保健衛生活動や健康相談などを本格的に始めた。まずは避難所内の衛生環境を整備。避難所内を土足禁止にするため、畳で区切って靴脱ぎ場を作成。トイレ後の手洗いを徹底させるため、ハンドソープや紙タオル、消毒液を仮設トイレの前に配置し、自然な流れで手洗いができるように工夫した。

さらに、避難所内の巡回にも注力。避難所生活が長引くと、自分では気付かないまま体調を崩していることもあるため、潜在的な患者さんを見つけ出すことが重要だ。今回は災害処方箋が発行できなかったため、応急処置をしたり地域の医療機関につなげたりして、避難者の健康を守った。同時に避難者リストも作成。長期的な対応に向け、避難者がどのような持病を抱えているか、常備薬は手元にあるかなど、巡回による面談で把握した。

20日には安倍晋三首相と内閣府大臣政務官の今井絵理子・参議院議員が避難所である北スポを訪問。TMATに対し激励の言葉を送った。長野県では15日間、合計23人の隊員が活動。27日にすべての活動を終えた。

TMATは宮城県への隊員派遣も決め、15日に活動を開始。同時期に活動を開始したNPO法人AMDA(岡山県)と協働し、主要避難所のひとつである丸森小学校を担当した。避難者が生活する体育館は土足のままの状態、トイレもパーテーションで区切られた介助者用がひとつのみだったため、迅速な環境整備が必要だった。また、電気は復旧したものの、上下水ともに断水しており、復旧までに1カ月を要する状況だった。

17日にダンボールベッドを設置。作業内容は事前にタイムスケジュールを作成し、行政や自衛隊、DMAT(国の災害派遣医療チーム)と共有。当日はTMATが中心となり、100人近いスタッフが体育館を清掃し、ダンボールベッドを設置した。午後3時頃には、すべての作業を終え、別室に荷物とともに移動していた避難者を体育館に誘導。土足禁止エリアを明確にし、出入り口をひとつにして靴箱を設置するなど環境整備した。

18日から災害処方箋の発行が認められ、丸森町役場に臨時救護所とモバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)が設置された。丸森小でも緊急患者さんへの対応や処方切れ患者さんに対する処方を開始した。

TMATは①診療や避難所アセスメント(評価)を行う医療チーム、②保健師と一緒に避難者リストを作成する保健チーム、③避難所内の感染対策や生活改善を行う環境整備チーム――に分かれ活動。宮城県では11日間で合計12人の隊員が活動、また仙台徳洲会病院から8人のスタッフが現地入りし、23日にすべての活動を終えた。

→徳洲新聞号1215掲載