榛原総合病院
榛原総合病院(静岡県)の長野清美・看護副主任と松栄望美看護師は、静岡県看護協会の主催の「第2回看護職の心に残る看取りエピソード集」で優秀賞を受賞した。6月28日に静岡市内で授与式が行われ、2人は壇上で賞状などを受け取った。長野・看護副主任は「文章にまとめるなかで、学生時代に目指していた“寄り添う看護”を思い出しました。初心を忘れず今後も頑張ります」、松栄看護師は「自分たちの看護が認められたようで嬉しいです」と満面の笑み。
もう一度縁側から畑を見たいんだよ。(松栄看護師)
Aさんは、牧ノ原台地のお茶農家で息子夫婦もお茶農家を継いでいる。お茶のない時期には季節の野菜を販売店に出荷していた。
新茶の始まる頃、Aさんは心不全による呼吸困難があり入院した。入院して間もなく両足の麻痺が出現し脊椎の手術をしたが、麻痺は良くならず腹部と足の痛みも残ってしまった。
痛み止めを使いながらリハビリテーションを行い1ヶ月経った頃、Aさんは車椅子に乗ることができるようになった。2番茶が終わり家をみたいというAさんの思いをきき、家族と相談し介護タクシーを頼んだ。さあ今朝だねというとき、Aさんの意識が無くなった。
Aさんは意識を取り戻したあと酸素をしながら、「自分は大丈夫だから、ちょっと見るだけだから家に帰りたい。」と看護師の手を握って離さなかった。診察の結果心嚢液がたまり、心不全が悪化していることがわかった。
元気になったら行こうとAさんをなだめ諦めてもらうしかなかった。その後も血圧が低く昇圧剤を使用する状況が続いた。良くなる気配はない中でAさんはナースコールを握りしめ朦朧となりながら鳴らし続け、「○○さん、お腹がいたいよ。」「安楽死させてくれ。」「楽になる薬を使って。」と言い続けた。
毎日弱っていくAさんを見ながらわたしは「家を見たいというAさんの言葉が頭から離れなくて…。亡くなることを覚悟で家に連れて行っていいですか?」と息子夫婦に伝えていた。息子夫婦はその場でうなずいてくれた。
看護師2名、理学療法士2名、訪問看護師2名で自宅に向かって出発。家では妻、息子夫婦、Aさんの友達4人と猫が待っていてくれた。Aさんは、まず仏壇に手を合わせ、友達一人一人と手を握りながら話し、そして縁側から猫を抱きながら畑を見た。痛みはなかった。
次の日からAさんは「家に帰って来たよ。」と毎日私に教えてくれた。その1週間後、妻の見守る中大きく呼吸をしてAさんは逝った。
→徳洲新聞1193号掲載

