湘南藤沢徳洲会病院

徳洲会グループは訪問看護ステーション(訪看ST)を相次いで新規開設している。在宅療養に必要なサービス提供の一端を担い、通院困難な患者さんに対応するとともに、退院後も住み慣れた自宅で療養生活を送りたいという患者さんの希望に応えていくためだ。新規開設の一連の動きのなかでは、訪看STの支所(サテライト)を設立する取り組みも見られる。今回は、支所のひとつである湘南藤沢訪看ST寒川支所(神奈川県)の訪問看護に同行、サービスの内容などを紹介する。

「とても助かっています」

「自力で食卓まで移動できたんですか。すごい進歩ですね。それだけ動けるということは、良くなっている証しですね」

湘南藤沢訪看ST寒川支所の久保田千恵子主任(保健師、ケアマネジャー)が声をかけた相手は、あと1カ月で102歳を迎えようとしている女性患者さん。久保田主任はこれまで約20年間、訪問看護に携わってきたベテランだ。

この日の約3週間前、患者さんはベッドから壁やソファーに手をかけながら、伝い歩きしている最中に転倒、その勢いで腰付近を打撲した。翌日、翌々日は痛みが落ち着いており、定期的に利用している通所介護にも行くことができたが、3日目の夜から急に痛みが増悪。夜間だったことから湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)救急センター(ER)を受診した。

同院で検査の結果、患部は骨折していないことがわかり、痛み止めのみ処方。自宅近くのかかりつけのクリニックを紹介され、そのクリニックから訪問看護の利用を勧められて、ケアプラン(介護サービスの計画書)に訪問看護を盛り込むことになった。

寒川支所は2018年11月に開設したばかりで、まだ久保田主任が近隣の医療・介護施設に丹念に挨拶まわりを行っている時期だった。同クリニック訪問直後のことだったため、訪問看護サービスの提供者として寒川支所が選ばれたという。

寒川町内で長男夫婦と同居しているこの患者さんは、転倒する以前、おおむね自立の状態だった。これまで便秘に悩まされていたため長らく便秘薬(下剤)を服用してきたものの、食事や排泄(はいせつ)など自力で行っていた。

「訪問サービスを利用するのは初めてです。連絡したらすぐに来て対応してくれて、とても助かっています。母親は魚と野菜を中心に何でも食べ、96歳まで都営アパートで独居生活を送っていました。できるだけ人の世話にならず、自立した生活を大切にしていました」(患者さんの長男)

家族がこう話すように、患者さんは元気な高齢者のお手本のような方だった。旅行や散歩が好きで、何度か転んで、けがをしてしまったこともあったそうで、何度目かの転倒を機に、寒川町内の長男夫婦と同居するようになったという。

この日、患者さんは久保田主任が訪問するまでの2時間近く、居間のいすに座って待っていた。寝たきりにならないよう、できるだけ以前に近い生活を送ることが大切だからだ。腰部の打撲は、まだ癒えていないため、長時間の座位は患者さんにとって大変な姿勢だが、少しずつ座っていられる時間は伸びている。徐々にだが、着実に状態は良くなっているようだ。

居間の隣室に据えられたベッドに、患者さんとともに久保田主任は移動。「血圧を測らせてくださいね」と丁寧に説明しながら、ベッドに寝てもらった患者さんの血圧や体温などバイタル(生命兆候)を測定、聴診で心音や呼吸音も確認した。

この後、清拭(せいしき)(全身の清潔を保つために身体を拭く)や排泄介助(浣腸)を行った。痛み止めの薬の副作用として便秘が助長される可能性があることから、久保田主任は「様子を見ながら痛み止めの薬の量を調整していきましょう」と家族に説明。当面の目標は、苦痛のない状態で患者さん本人の力でトイレに行き、便座に座って排泄できるようになることだ。

この後、患者さんを担当するケアマネジャーと通所介護のスタッフが患者さん宅を訪問して合流。患者さん、家族を交え、ケアプランの内容を検討するサービス担当者会議を実施した。会議では、現在週1回の訪問看護を2回に増やす方針を決定。利用限度額を考慮し、週4回利用していた通所介護を週3回に減らすこととした。

このほか、トイレ用の手すりの設置などを検討していくことを確認。久保田主任は会議を終えると、車に乗り込み次の現場に向かった。

より広いエリアをカバー

湘南藤沢病院内に事業所を置く湘南藤沢訪看STの熊本さとみ所長(看護師)は、同ST寒川支所開設について「移動時間がネックとなり、当STから離れた寒川町や藤沢市北部などは依頼があっても引き受けるのが難しい状況でした。そこで、カバーできるエリアを広げ、より多くの患者さんのニーズに応えることを目的に、寒川支所を開設しました」と話す。

同ST寒川支所はJR相模線の寒川駅前の建物の一角に事業所を構える。同ST本所がある湘南藤沢病院からは直線距離で約6.3㎞に立地。寒川支所では、膵臓(すいぞう)を切除した膵がん患者さんに対する血糖コントロール指導のための訪問看護、心不全や糖尿病のある認知症独居の患者さんの健康管理、精神疾患の患者さんに対する服薬による症状コントロールの介助など、多様な患者さんへの訪問看護に取り組んでいるという。

「本所・支所ともに登録患者さんを増やし、スタッフも増員しながら、本所と支所でスタッフのローテーションを通じて患者さんに提供する訪問看護の質の向上を図っていきたい」と熊本所長は意気込みを語っている。

→徳洲新聞1175号掲載