徳洲会グループ

徳洲会グループはアフリカ・タンザニア連合共和国で現地医療スタッフによる腎移植を支援した。今年3月の初症例に続き、今回は8月28日に通算2例目、29日に同3、4例目となる腎移植をサポート。東京女子医科大学と共同で取り組んでおり、8月22日から31日にかけて徳洲会、東京女子医大の支援メンバー計13人が、首都ドドマにある国立ドドマ大学付属ベンジャミン・ムカパ病院を訪問し手術を実施した。ドナー(臓器提供者)、レシピエント(臓器受給者)ともに経過は良好。

東京女子医大と共同プロジェクト

徳洲会グループは、2013年に国立ドドマ大学付属透析センターの開設を支援した。徳洲会の技術指導により、現地スタッフがシャント造設の手術を行っている。また機器のメンテナンスも問題なく実施、寄贈した10台すべてが稼働している。

徳洲会は16年、タンザニア保健省から次のステップとして、腎移植実施のための支援要請を受けた。同国では腎移植を実施できる施設がなく、移植希望者はインドなどで移植を受けていた。腎移植の実績が豊富な東京女子医大から協力が得られたため、徳洲会は支援要請を受け入れ腎移植プロジェクトをスタート。

ムカパ病院の医師や看護師らが日本で研修を受ける一方、徳洲会のメンバーが、手術室やICU(集中治療室)の準備、患者選定に必要な検査の指導などを行うため、数回にわたって現地を訪問。今年3月22日、手術室を使用できる状態になったのが手術2日前とぎりぎりのスケジュールだったものの、タンザニアの医療者による初の腎移植手術を無事に終了。

今回実施した3例は、3月の初症例と同じく、いずれも親族間の腎移植。2例目(通算)のレシピエントは40歳代の女性、ドナーは姉。3例目(同)は20歳代女性がレシピエントで、ドナーは叔父。4例目(同)は40歳代の男性で、ドナーは弟。

2例目のドナーからの腎摘出術を開始したのは28日午前9時7分。ムカパ病院のレミ医師、オスカ医師、東京女子医大泌尿器科の田邉一成・同大病院長兼主任教授(摘出後は奥見雅由准教授)が執刀。レシピエントの手術を担当したのは、ムカパ病院のムシャンバ医師、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)腎移植外科の三宅克典医長、奥見准教授(閉創時は大和徳洲会病院外科の赤羽祥太医師)。野崎徳洲会病院(大阪府)麻酔科の武富太郎部長が麻酔をサポート。午前11時23分にドナーから腎臓を摘出し、午後2時半にレシピエントへの移植術が終了した。

ムカパ病院のクリスティーン看護師、湘南鎌倉病院の中川加央里看護師がドナー側手術室の器械出し、ムカパ病院のアベラ看護師、ヴァレンス看護師が外回り業務を担当。レシピエント側の器械出しはムカパ病院のギフティ看護師、湘南鎌倉病院の横山麻奈美看護師、外回りはムカパ病院のアダム看護師が務めた。

3例目、4例目の手術では前出の医師に加え、ムカパ病院のムイニ医師やマルティン医師が参加した。2~4例目のいずれも初尿を確認し無事終了。術後、ドナー、レシピエントはそれぞれICU(集中治療室)に入室。腎機能を示すレシピエントのクレアチニン値も順調に経過し、その後、退院した。

腎移植を安全に遂行するには、移植患者さん(ドナー、レシピエント)の適切な選択や術前検査の確認と評価、術前・術後の免疫抑制療法を担う内科医が重要だ。手術に先立ち、湘南鎌倉病院腎移植内科の日髙寿美部長が先発隊として8月22日、同院の佐藤勉・検査部主任(臨床検査技師)と一般社団法人徳洲会のムワナタンブエ・ミランガ・アフリカ担当顧問とともにタンザニア到着後、ムカパ病院のシージャ医師やメレモ医師、ムイニ医師などと移植候補者のカルテレビューや診察、面談、病状説明を行った。

また、不足検査の実施、透析室の回診、免疫抑制剤の投与などにも取り組んだ。移植後の拒絶反応を予測する重要なリンパ球クロスマッチ検査の一部が未実施であったことから、佐藤主任がムカパ病院にあったフローサイトメトリーという検査機器を用いて検査を行う方法(FCXM)を確立。3例とも陰性であることを確認し、事なきを得た。

手術には医療法人徳洲会の東上震一・副理事長(岸和田徳洲会病院院長)が立ち会い、ミランガ顧問と一般社団法人徳洲会国際部の海老澤健太・課長補佐が器具や薬剤など物品の調達、各種手続き、参加メンバーや現地との調整業務などのコーディネートに尽力し、プロジェクトの遂行に貢献した。

タンザニア元首相やムカパ病院のチャンディカ病院長との面談、術前・術後の症例検討、手術への参加など精力的に日程をこなした湘南鎌倉病院の小林修三・院長代行は「腎不全は死んではいけない病気です。しかし海外には徳洲会の理念である“生命だけは平等だ”とはほど遠い世界があります。そこで徳洲会はアフリカ各国への透析医療支援を始め、次の段階として、まずタンザニアでの腎移植プロジェクトに取り組みました」と話す。

日髙部長は今回の移植術に関して「患者選択の倫理的配慮は問題なくできており、現地の医師やコメディカルの方々の力は格段に進歩してきています」と評価。主にレシピエント手術に参加した三宅医長は「移植以外の手術の可能性も広がっており、現地医療の底上げにつながっていると感じます。症例を重ねるごとに現地スタッフの成長が目に見えて、とても嬉しい」と手応えを示す。

中川看護師は「現地スタッフの努力により手術器具の滅菌をスムーズに行うことができ、同日に2例の移植実施という計画を実行できました」、横山看護師は「限られた資源の中で最善を尽くす医療支援にとてもやりがいを感じ、かけがえのない貴重な経験をすることができました」と振り返り、佐藤主任は「FCXMを確立できて良かったです。移植術も見学でき、充実した訪問となりました」と喜んでいる。

→徳洲新聞1155号掲載