高砂西部病院
高砂西部病院(兵庫県)の認知症支援、ケア体制が充実している。同院は救急をはじめ患者さんのなかに認知症を有する方が多いことを理由に、7年前から認知症への対応強化に取り組んできた。看護師が認知症看護認定看護師の資格を取得し、看護外来を開設、認知症ケアチームによる院内ラウンドも行っている。また事務、副診療部職員が、認知症を理解しようと50人以上が認知症サポーター養成講座を受講。昨年12月には医師が認知症サポート医になるなど、各職種が精力的だ。
事務職員ら50人超が講座受講
高砂西部病院が認知症に本腰を入れて取り組むようになったのは2011年。能美順子・看護主任が認知症看護認定看護師の資格取得を試みたことに端を発する。以前、能美主任は外科病棟に勤務していたが、08年に療養病棟に異動。想像以上に認知症の患者さんが多く、徘徊などへの対応にとまどったという。「きちんと勉強したい」との思いから認定看護師の試験に挑み、12年に取得。
その頃、認知症対応は病院全体の課題にもなりつつあった。地元・高砂市は姫路市のベッドタウンとして発展してきたものの、近年は若年層が都市部に流出。加えて高齢者施設が増加し、他地域から高齢者が移住してくるケースもあり、地域全体の高齢化が進んだ。「本来の疾患以外に認知症も見られる患者さんが多くなり、とくに介護施設から救急で運ばれてくるケースにはとまどいました」と、上野英三事務長は振り返る。
当時院長だった大森吉弘・名誉院長は、能美主任を中心に病院全体で認知症対応の強化を決断。毎週火曜日の午前に看護外来(予約制)を開設し、能美主任が患者さんと家族の双方の相談を受けた後、簡易検査などを行っている。
入院患者さんには、認知症ケアチームを立ち上げラウンドを実施。転倒・転落などの恐れのある患者さんの状態などを確認している。当初は月1回だったが、2月からは週に2日かけて院内ラウンドを行うようにした。かかわる職種も医師、看護師、薬剤師、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士と多彩だ。
もちろん、教育も欠かさない。医療従事者を対象とした院内勉強会のほか、看護部独自で勉強会を年6回開催。教育システムも変更し、認知症の専門コースを新たに設けた。沼口幸司・副看護部長は「能美主任には、実践の旗振り役として期待しています。成功体験をひとりでも多くの看護師に伝えてほしいとお願いしています」。
事務職員も積極的に協力。「認知症に理解がなければ来院時にきちんと対応できない」と黒川雅博・医事課課長の発案で、厚生労働省が実施している認知症サポーター養成講座の受講を推奨、修了した職員は事務、副診療部を中心に53人に上る。
こうした取り組みの結果、少しずつ認知症患者さんへの対応が変わってきているという。「最初は医師をはじめ医療従事者と認知症対応について話がかみ合わないこともありましたが、今は関心をもってくれる職員が増えていると感じています」(能美主任)。
地域対応力の向上に貢献
昨年12月には中川賀清・総合診療科医長が認知症サポート医の資格を取得。同資格は厚労省が2003年に創設し、主に地域のかかりつけ医への支援(助言や研修の企画立案など)や、地域の医療機関、医師会、地域包括支援センターなどの連携の推進役が期待されている(図)。自薦で認められるケースもあるが、通常、地区医師会長の推薦を受けなければならない。16年3月末時点で全国の認知症サポート医は6692人(厚労省調べ)。
中川医長は「具体的に何をしていくかは思案中」としながらも、「かかりつけ医の先生方や関係機関と連携を図り、地域の認知症対応力のレベルアップに貢献したい」と意欲を見せる。
能美主任も地区医師会の依頼で在宅看護を手がける地域の看護師に講義を行うなど貢献。上野事務長は「当院の新保雅也院長は、地域の医療は地域で完結というスタンス」と、今後の活躍に期待を寄せる。
「たとえば患者さんが点滴の必要性を理解できず針を抜いたり、整形外科の患者さんが手術したことを忘れ、痛みがあるのに痛いと言えず動いたりしてしまうなど、認知症の対応は本当に難しい」と能美主任。続けて「ある患者さんに通じた手法が、他の患者さんには通じないなど、絶対的な正解がない分野。だからこそ正しく認知症を理解する必要があります。徘徊にしてもケアの拒絶にしても、そこにはきちんと理由がある」と強調する。
今後、同院は院内外での教育にさらに力を注ぐとともに、「ADL(日常生活動作)や認知機能の低下を防ぐために、以前実施していた院内デイケアを復活させたい」(能美主任)と、サービスの充実などを図り、地域の認知症対応力の向上に貢献する方針だ。
→徳洲新聞1132号掲載



