徳洲会グループ

受講者総数3000人に迫る

科学的根拠に基づいた心肺蘇生法の修得などを目的とするTCLS(徳洲会二次救命処置法)コースが、3月2、3日の2日間にわたって札幌徳洲会病院で開催された。2002年9月に第1回を開いて以来、今回で節目の100回に到達。累計の受講者数は2933人に上り、3000人突破も目前に迫ってきた。

心停止状態からの蘇生を目指す実技に熱心に取り組む受講者たち

TCLSコースは06年1月に行われた第29回から、日本救急医学会のICLS(心停止緊急救命処置法)認定コースとして運営している。第100回TCLS札幌コースには、医師や研修医、看護師、薬剤師、理学療法士、介護福祉士など定員30人を上回る39人が参加。

コースディレクターを務めた南部徳洲会病院(沖縄県)の清水徹郎・高気圧酸素治療部長をはじめ医師や看護師、救急救命士ら13人が指導にあたった。

初日の開会式には、これまでTCLSコースの開催に尽力してきた徳田哲・徳洲会副理事長が駆け付け、「振り返ると第1回目を開催するまでが一番大変でした。当時、国内では一定の標準化された方法で二次心肺蘇生を行うことの意義がまだあまり理解されていませんでしたので、インストラクターを務めていただける方や、受講生を集めるのに苦労した記憶があります。その後10年半で開催100回まで数えることができ、本当に嬉しく思います」と挨拶。続けて、「受講する皆さんも、いずれインストラクターとなってTCLSコースを支え、開催にご協力いただければと思っています」と呼びかけた。

また会場となった札幌病院から森利光院長が登壇し、「ここで皆さんが2日間勉強することは、すぐに臨床の場で応用できます。患者さんのために2日間を乗りきってください」と激励した。

その後、100回目の開催を記念し、医療法人徳洲会と株式会社徳洲会から心肺蘇生のトレーニングに用いる人形とAED(自動体外式除細動器)トレーナーの目録が、徳田哲・副理事長を通じて札幌病院に贈呈された。

TCLSコース1日目は、ACLS(二次救命処置法)の概要や各論に関する講義からスタート。講義では、心肺停止状態からの蘇生を図るBLS(一次救命処置法)に必要な胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸といったCPR(心肺蘇生法)の手順や方法、心機能の停止を電気ショックで回復させる除細動などについて説明。各論では、気道確保や気管挿管、換気の方法や適応、輸液や薬物などによる高度な心肺蘇生、心停止の心電図の見方などを解説した。

座学の後は、除細動器と心電図モニターの使用方法や、気道管理、TCP(経皮ペーシング=電気ショックにより心臓の脈をつくり出すこと)、BLS、AEDなどについて、実際の医療機器やシミュレーション用の高性能な人形などを用い、実技を行った。さらに、これらの知識や技能を駆使し、心停止の診断や治療を行う実技を実施した。

「100回目を迎え本当に嬉しい」と徳田哲・副理事長

他のICLS認定コースではほとんど実施されていない骨髄針の実技も行った。これは、輸液するための静脈路の確保が困難な場合に脛骨粗面(けいこつそめん)の少し内側に専用の穿刺(せんし)針を刺して、輸液を骨髄内に投与するための技術だ。

2日目には不整脈の講義後、筆記試験を実施。その後、1日目に続き心機能が停止した状態から蘇生を図るための実技を行った。続けて、BLS、AED、ACLSの実技試験を実施。試験には全員が合格し、修了式では森院長から受講者に修了証とバッジが手渡された。

清水部長は、「地域全体の救命率を高めるためには、医療従事者が技能を習得するだけでなく一般の方々にBLSを普及し、全体を底上げすることが大切です。今回受講した方には、医療講演などを通じて啓発活動にも取り組んでいただきたいと思います」と訴えた。

受講した南部病院の福島恭子看護師は、「心肺蘇生の技術を学んでスキルアップしたいと思い、参加しました。ついていくのが大変でしたが、受講してよかったです」。静内病院(北海道)の益子勝成・介護福祉士は「職種柄、ふだんなかなかかかわることのない内容ばかりで、気管挿管など初めは難しく、何度か試みて、ようやくうまくいきました。とても有意義な経験をしました」など、受講者は一様に満足げだった。

次回TCLSコースは5月11、12日に静岡徳洲会病院で開催する予定だ。