神戸徳洲会病院

全職員の意識改革促し組織的な取り組みへ
神戸徳洲会病院は8月31日、医療安全管理体制の見直しを完了した。神戸市からの改善措置命令を受け取り組んできたもの。市は来年8月末まで改善措置が適正に運用されているか確認する。改善措置では、患者さんの安全を最優先に考えた“組織的な医療安全管理体制”の実現に向け、診療体制はもちろん、とくに医療事故(疑いがある場合を含む)や医療安全に関する事案が発生した時の対策などを抜本的に改善した。全職員の意識改革を促す取り組みも講じ、医療安全文化の醸成に努めている。
市の改善命令で、神戸病院に認められた一連の不備は「個々の職員の問題ではなく、組織としてのガバナンス(統治)の脆弱さに起因するものと考えられる」と指摘。医療安全管理体制の抜本的な見直しを求め、とくに医療事故(疑いがある場合を含む)や医療安全に関する院内組織で取り扱うべき問題が発生した時の対応、最善の医療を提供するための多職種間や医師間での連携体制、患者さんへの説明や診療録の内容など医療の透明性の確保を重点対策に挙げた。

これを受け、同院は改善計画を作成。①医療安全文化の醸成、②透明性のある医療の提供、③救急医療・診療体制の拡充、④看護体制および研修の充実、⑤第三者機関による評価――の5項目を「抜本的な対策」に掲げ、4月1日に着任した尾野亘院長と乕田美幸・看護部長、昨秋に院内医療安全対策室室長に就いた中島義和・副院長兼脳神経外科部長らを中心に、より厳格な仕組みやルールづくり、職員の意識改革に取り組んだ。
とくに注力したのが、疑いを含め医療事故を検証する体制の整備。全死亡例をリスト化し、医療安全対策室で週1回のレビューを行うことや、院内医療安全調査委員会の対象となる7項目を設定。いずれかに該当した場合、必ず同委員会に報告し、調査することにした。事故につながる恐れのある「インシデントレポート」でも報告する基準などを厳格化。インシデントレベルゼロでも確実に報告するよう求め、短期間の提出期限も設けた。
報告や調査にかかわる責任者と役割、院内調査の際に徳洲会グループ内の専門医を招聘できることなども明文化した。医療安全に関する院内組織の再編やマニュアルの改訂も実施。新たに立ち上げたリスクマネジメント委員会では、各部署のリーダーではなく、より現場に近いサブリーダーをメンバーにするなど、実情に合わせながら事故やインシデントケースの再発防止に結び付けるサイクル活動が展開できる仕組みを意識した。

こうした活動を病院全体で共有。たとえば、一定レベル以上の医療事故や、院内医療安全調査委員会が企画立案した対応を、その概要とともに、朝礼や医局会などで報告したり、電子カルテのイントラネットに一定期間提示したりして職員に周知。委員会の再編では、「医療の質改善委員会」を立ち上げた。中島副院長は「事実をすぐに集約できる日頃の環境や体制、関係性が大事」と強調する。
医療安全に関する職員教育にも注力。毎月、医局会での研修開催に加え、全職員を対象とする研修プログラムを策定、eラーニングも行っている。さらに各部署の副主任以上は、病院機能評価による医療安全管理者養成研修会の受講を順次進めている。
医療安全管理者(専従)の田畑千代子 ・看護師長は「インシデントレポートにしても増えており、皆の意識が変わってきたように思います」と手応えを示し、吉川文雄事務長も「事務職も、さまざまな取り組みを通じて意識は変わってきたと感じています。インシデントレポートも1人当たりの提出目標を掲げ、取り組んでいます」。
→徳洲新聞1459号掲載