徳洲会グループ
ウィズコロナからポストコロナへ社会が移行するなか、コロナ禍を経験した医療・介護現場の感染対策は何が変わり、何が変わらないのか。徳洲会感染管理部会コアメンバーへの取材から探った。
「コロナ禍で根拠が不明瞭なまま各現場で実施したビニールカーテンやアクリル板のような、じつはエビデンス(科学的根拠)がはっきりしない感染対策は消えていき、明確な根拠のある対策だけが残っていくと思います。これはコロナ前からある普遍的な対策です」。こう話すのは福岡徳洲会病院の伊藤恭子・感染管理室室長。
では“明確な根拠のある対策”とは何か。それは標準予防策であり状況に応じた感染経路別予防策だ。標準予防策には手指衛生やサージカルマスク、プラスチック手袋、ゴーグル、ガウンといった個人防護具に関するものなどがあり、感染経路別予防策には飛沫予防策、接触予防策、空気予防策がある。
標準予防策はつねに必須
感染対策の基本である標準予防策は医療・介護現場では日常的に実践していなければならない取り組みだ。ただ、なかには5類になりポストコロナと言われるようになった途端、標準予防策まで緩めている施設も見受けられると言い、「これは、止めたらいけないスタンダードな部分」(伊藤室長)と警鐘を鳴らす。
どんなに対策しても感染はゼロにはできない――。しばしば耳にする言葉だ。一方で「感染がゼロなら対策がしっかりできているかというと、それも偶然の結果かもしれません」との見方を示すのは、宇治徳洲会病院(京都府)の江口比呂美・看護師長。「逆に院内で複数の感染者が発生したとしても、対策が劣っていたとは言いきれません。感染はゼロにできないかもしれませんが、より早期に発見し、可能な限り拡大を抑える方策を考えることが大切です。また感染対策の方法はひとつではありません。施設の特性に合わせ、なぜそうするのか根拠を考えながら実施することが重要です」と訴える。
キーワードは「根拠」、そして「考える」こと。大隅鹿屋病院(鹿児島県)の仮重喜代美・看護師長はアクリル板を例に「何を防ぐ目的で設置したのか。それは対面する人からの飛沫感染を防ぐためです。この目的を達成するためであれば、対面する人同士がマスクを着用する“マスク対マスク”や“飛沫が飛ばない距離に離れる”が感染対策として従来からあります。これを確実に実施できる環境であれば、アクリル板ははずしても飛沫感染が広がる要素はないと考えることができます」。
他方、「今でもポストコロナに移行したとは言いきれません」と指摘するのは徳洲会感染管理部会の部会長を務める佐藤守彦・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)感染対策室部長だ。「現在もクラスター(感染者集団)が散発的に発生し、ウィズコロナとポストコロナの区切りは付けられない状況です。ただし、有効な対策もわかっているので、過度に不安がる必要はありません。新型コロナは無症状でも感染力があるため、人混みではマスクをするなど予防策の継続が肝要です」と注意喚起する。
感染管理部会事務局を務める一般社団法人徳洲会医療安全・質管理部の野口幸洋課長は「一般の感染症として対応しますが、依然感染力が強いため、引き続き感染対策の徹底を呼びかけ、職員の意識を高めていきたい」と気を抜かない。未知の感染症パンデミック(世界的大流行)という100年に一度の経験を経て、「エビデンスベースの感染対策」を共通言語とする未来図が見えてきた。検査・治療技術の進歩や、発展するICT(情報通信技術)など周辺技術も生かし、感染症の脅威から人々が守られる社会の到来に期待したい。
→徳洲新聞1422号掲載

