徳田 藤田さんが描かれた絵を拝見しましたよ。私は絵は素人だけど、ものすごくいいですね。どのくらやっておられるの。
藤田 4年目になります。芸能界って常に画面に出ていないと、すぐ死んだんじゃないか、と噂される世界なんですね。だから病気で十数年も引いていたら、役を決める時に名前が出なくなるんです。女優の仕事が少なくなって、別の形で表現活動をしたくなった時、ちょうど絵をやっている方と付き合いができて、描き始めたんです。
徳田 たった4年で、これだけのものになるとはねえ。
藤田 ありがとうございます。私、縁があって、故郷の山口県防府市で個展をやったんですよ。その時「こちら美術の恩師」と言われて「えっ?」っと思ったら、高校のとき美術クラブに入ってたようなんです。1年ほどしかやってないと思いますが、卒業アルバムを見たら、その先生と写ってるの。ピックリしました(笑)。
徳田 じゃあ、かつての夢を実現したわけだ。ただね、女優でも同じだと思うんです。表現の基本は感性があるかどうかだから。それは事業家だって、政治家だって一緒だと僕は思っている。
藤田 女優と絵も違いはなくて、女優はいつもきれいにして背筋を伸ばしてなきゃいけないけど、絵描きスッピンで、背中丸めてやるってことくらいです。
徳田 感性のある人は、まず本物かニセ物か違いが分かります。そして本物に感激する。花を見て、ああ誰が贈ってくれたのかなじゃなく、きれいな花だなあと感激しないと描けない。
藤田 そうですね。4月ごろになると、柔らかい黄緑がたくさん萌(も)えてきますよね。それを見ると、うわ−絵が描けたらどんなにいいだろう、もしも画家だったら、どんなふうにこの景色が見えているんだろか、といつも思っていたんです。
徳田 それがまさしく感性そのもの。そして感性というのは、違いが分かって感激して、その上で行動しないと感性ではないんですよ。
藤田 私も病気になってからは、ミノムシみたいに殻の中に入ってました。でも動いていないとたまらない性格なので、気分が倦(う)んでくるんです。何かしなくちゃダメ、と苦しんでいる時期に絵に出会った。
徳田 そういうチャンスをパッとつかむ、そして行動する。これが大事だね。女優より、絵の方が天職じゃないかという気がするな。
藤田 それはうれしいような、きついような(笑)。
徳田 というのは女優の場合、気が向かなくても仕事が来たらやらざるを得ないし、絶好調でも仕事がないとできない。でも、絵は自分のペースでできるでしょ。
藤田 そうですね。
徳田 天が与えてくれた良い才を、どう生かすかが勝負じゃないでしょうか。
藤田 ただ私、今揺れ動いているんですよ。先日、朗読の会をプロデュースしたんですが、その一方で個展を控えているので絵も描かなければいけない。で、朗読の方は招待状の住所書きから雑用がたくさんあって、絵がどっかに行っちゃうんです。でも、やっぱり描かなきゃと思って絵筆を握ると、今度は朗読のことが気になるんです。あぶはち取らずになりそうで、1本に絞るべきかなとも思うんですが、女優にしたってそれだけでは食べていけないし。
徳田 いや、それはみんなやるべきだな。そうしたら、こっちもあっちもよくなります。
藤田 そうですか?
徳田 僕は病院づくりの土地選びでは不動産屋顔負けだし、何千億円も借金する資金のやりくりには、職員1万5000人の先頭に立って指揮をとってる。さらに海外にも病院をつくるため、今ブルガリアの銀行も買収している。あれもこれも、全部自分でやってます。
藤田 すごいですね。
徳田 つまり、そうやって広くやることが、すべて医療に戻り、さらに深くなる。でも撤退すると死に近づく、そんな感じがしますね。人はあなたに、女優だけでなく絵まで描いて、と言うかもしれないけど、そうじやない。一つに8時間使うなら、二つなら16時間やればいい。睡眠だけ8時間とればいいんですよ。
藤田 はあ。先生の大学受験の話を本で読みましたが、努力ってこういうことをいうんだ、って思いましたね。
徳田 個展はいつですか?
藤田 6月26日からです。銀座のギャラリーで。
徳田 じゃあ、それまでは寝ても覚めても絵のことだてこけ考えて。揺れ動くって事は、まだ余裕があるんですよ。追い込まれ方が足りない。
藤田 なるほどそうですね。
徳田 女性はって言い方はよくないけど、でも女性は能力ギリギリまで出したらそれでいい、と思って楽してる人が多いね。
藤田 耳が痛いなあ(笑)。
徳田 それを突き破って、真実は極限を少し超えたところにあるんです。僕なんか布団に入ってからも、頭の中で沖縄から北海道まで病院を一つ一つ点検するんです。寝食を忘れて全力投球できるか否かが、プロかそうでないかの違いだから。
藤田 そうですね。
徳田 それとコツは、自分にしかできないことだけをするんです。炊事や洗濯はできるだけカットする。
藤田 娘を泣かせて。
徳田 娘にさせるんですよ。作れないなら、コンビニで弁当でもパンでも買ってきてと。私の分も一緒にお願いって、それでいいの。
藤田 そうします。
徳田 それでお母さんのありがたみも分かるし、絵を描く母の後ろ姿で子は育つよ。
藤田 先生の言葉を胸に頑張ります、私。
徳田 いい絵をたくさん描いてください。個展を楽しみにしてますよ。
<終わり>