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徳田虎雄理事長ご挨拶

徳洲会は世界中の困っている人のために
医療と介護・福祉の充実に向け邁進する
〜途上国への医療支援は私たちの夢であり義務でもある〜

今年も皆で力を合わせて頑張りましょう

徳田虎雄
一般社団法人徳洲会代表者最高顧問
医療法人徳洲会理事長

徳田虎雄

一般社団法人徳洲会代表者最高顧問
医療法人徳洲会理事長

 2011年は、まさに国難の年でした。3月11日に発生した東日本大震災は多大な被害をもたらしました。大震災発生当日から、NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊、旧TDMAT)が出動して被災地で医療援助活動にあたり、アメリカをはじめカナダなど海外からも多くの物心両面の支援をいただきました。

 国内外の善意が結集し、これほど人と人との結びつき「絆」を感じた年はありませんでした。被災地は復興を目指しています。私たちも、その一助になれればと思います。

 現在の私はALS(筋萎縮性側索硬化症)の身で、手足は動かず、助けなしには呼吸も食事もできません。さまざまな報告や相談を受けて判断し指示を出していますが、東日本大震災では現場に立ち陣頭指揮を執ることがかなわず、歯がゆい思いをしました。

 職員の皆さんは、普通に飲んで、食べて、歩くことができます。それだけでも幸せです。健康な皆さんには感謝の気持ちをもって、その幸せを患者さんや弱い立場の人たちのために使ってほしいと思っています。人生は苦労の大きさに比例して豊かになります。その苦労が利己でなく、利他であればさらに幸せになることができます。

 人生は、義理人情と愛、そして人とのつながりによって成り立っています。私の座右の銘は「弱きを助け、悪しきをくじく」ですが、これは父・徳千代の教えでもあります。母・マツからは、言葉としてではなく献身や愛のひたむきさ、勤勉さがいかに大切か、身をもって教わりました。

 人は一人で生まれ育つものではありません。だから私は、皆さんに親孝行をするように促すのです。給与をもらったら親に仕送りをと言うのも、人生はいかに人の役に立つかで決まるので、身近な親孝行から始めるべきだからです。

離島・僻地や途上国への医療支援は徹底してやる

 私は弟を医師に診てもらえず亡くし、医師になり徳之島の医療に貢献することを決意。島には両親をはじめ、友人や知人がいて、親孝行だけでなく“島孝行”もできると考えたのです。その思いが「生命だけは平等だ」の理念になり、その原点である離島・僻地医療に取り組み続けてきました。

 都市部に病院をつくり、資金面と、医師、看護師などの人材面を支援する戦略で日本中に病院をオープンしました。昨年末、徳之島徳洲会病院は、かつて20人近くいた常勤医が3人にまで減少。福岡、鎌倉、千葉西病院など10病院から、内科と外科、循環器科の医師の派遣を決め、今年3月からは他の離島・僻地の病院への支援も始まります。

 私の夢と希望とロマンは、「生命だけは平等だ」の理念と哲学の下、困っている人や弱っている人たちのために世界200カ国に病院と福祉施設をつくることです。

 国内では、急病救急医療、慢性期医療、予防医療、高度先進医療に加え、国家プロジェクトである遺伝子解析による「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」に参加。オンコロジー(臨床腫瘍学)や治験を推進し、修復腎移植やがんワクチン療法の臨床研究、幹細胞治療にも取り組んでいます。腎移植では移植により患者さんの負担が軽減、QOL(生活の質)も格段に向上します。臨床研究としての修復腎移植も10例を数え、昨年10月末に先進医療の申請をしました。

 胎児治療や不妊、多発性硬化症、自閉症の治療にも取り組み、さらに糖尿病網膜症患者さんに対する臨床研究も進めています。患者さんに一筋の光明でも見いだせるならば、組織をあげて取り組んでいきます。

海外医療支援の夢をずっと見続けていた

 海外医療支援の夢をずっと見続けていた

 2006年12月、ブルガリアのソフィアに1016床の総合病院をオープンしましたが、開設を決めた00年に米GE社の前会長ジャック・ウェルチ氏と現会長イメルト氏と面談。ウェルチ氏は「なぜブルガリア?」と怪訝そうに尋ね、私は一言「I love Bulgaria」と。徳洲会は、人に求められ必要とされる「愛」を基本としています。ビジネスでもなく、宗教でもない、「Noblesse Oblige(強者が弱者を助ける人間としての当然の義務)」の精神が基本で、実践的には全力投球です。自分が痛むほどの努力をして初めて相手のために貢献できるのです。私はお会いした人に著書をプレゼントするとき、「愛、努力、忍耐、全力投球」、「実現できない夢はない」、「愛は惜しみなく与う。共に頑張ろう」のメッセージを添えます。その精神で、誰もが反対したソフィアに病院をつくりました。

 ソフィア徳田病院の開院後、同院は欧州各国から注目を集めるようになりました。その一つがケンブリッジ大学病院です。病院幹部は徳洲会の活動のスケールが大きいことに驚き、同院運営に先方のスタッフが参加する形で協力関係がスタート。ケンブリッジ大学敷地内への患者さんを診療するプライベート病院とホテル、教育センター、研修センター建設は、今夏の着工を目指しています。

 ロシアの世界最大の天然ガス会社ガスプロムは、関連保険会社ソガスをパートナーにモスクワに徳洲会の病院をつくる計画を立てています。ソガス社との共同事業では、モスクワに600〜1000床規模の病院を着工予定で、サハリンなどから患者さんを徳洲会で受け入れる準備もしています。

「生命」は国境を超えた世界共通の課題といえる

 徳洲会は今年、札幌と藤沢に病院をオープン。建設・改築中の病院は、札幌東、千葉西、福岡、大隅鹿屋。新設着工は、吹田、武蔵野、成田。建て替え移転では、千葉、鎌倉跡地、茅ヶ崎、名古屋、宇治、沖永良部と続き計15病院。ブラジルの心臓病の名医・バチスタ先生のハートセンター(100床)のフルオープンは6月の予定です。

 途上国での透析センターの開設は、機器寄贈と人材教育もセットにゼロから立ち上げてきました。機器寄贈では、タイのチャムロン元副首相の透析センターに81台、インドネシアのタバナン県立病院に10台、バンダアチェのアビリン総合病院に5台。透析センターは、すでにラオス、モンゴル、ネパールでもオープン。アフリカでは、チュニジア、モザンビーク、ザンビア、ジブチ、ギニア、ルワンダ、ウガンダに開設し、さらに年内に10カ所でオープン予定です。

 私たちの活動を長年注視してきたアフリカ開発銀行は、徳洲会が運営責任をもつアフリカでの病院建設に資金融資を申し出ました。年内に、5カ国での着工を目指します。

 中国や、フィリピン、インドネシアなど東南アジアの各国でも、病院開設に向けたプロジェクトが進行中です。

 これだけの規模で活動する民間医療組織は、世界のどこにもありません。しかし私は、「恐怖心」でいっぱいです。危機意識で眠れない夜も。欧州危機が叫ばれるEU諸国では、国家財政の逼迫で社会保障費も医療費もカットされました。医療費削減が、日本でも現実の問題となる日は近いと考えます。5、6年後には医療費がカットされ、金利が上昇し、経済が混乱に陥ることも予想され、徳洲会は生き残るために今から準備しなければ間に合いません。

 病院の建て替えは絶対に必要で、多額の資金を要します。一方でイニシャルコスト、ランニングコスト、資金調達コストの引き下げを「心を鬼」にして実行しています。建設会社との値段交渉から、預金でできるだけ借入金を返済して利息を減らし、交通費の見直しや蛍光灯の本数減による経費削減など、聖域なしで考えられる節約を実施。これらは「夢」の実現に避けて通れないことで、患者さんへの責任です。

 私は、この身を捨ててでも夢の実現を目指します。「生命」は国境を超えた世界共通の課題です。「生命だけは平等だ」を共通理念として、外交でなく奉仕の精神で医療に貢献する努力が必要です。

 皆で頑張りましょう。

地域の包括的なケアを支え安心して暮らせる環境整備

徳田哲
医療法人徳洲会副理事長

徳田哲

医療法人徳洲会副理事長

 明けましておめでとうございます。

 昨年はこれまで経験したことのない未曾有の災害に見舞われ、日本は深い悲しみに包まれました。被災地の皆さまには心からお悔やみを申し上げます。これから復興に向けて、なお一層多くの方々の努力を結集していかなければなりません。

 今回の震災を通じて痛感したのは、地域の結束と相互扶助の大切さです。住民の意識が一つになり、地域での取り組みがしっかりしているコミュニティーほど復興は順調のようです。

 やはり、普段の生活でも、地域ぐるみの支えがあってこそ、安心で健康な日々を営むことができるのです。

 厚生労働省は、平成22年の白書で、労働市場や地域社会などへの参加を促しながら、「いつまでもいきいきと働きたい」、「地域で暮らし続けたい」という思いに応えられるような「参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)」の考え方を打ち出しています。これは医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく一体感をもって提供されるような地域包括ケアシステムの充実を意味します。

 徳洲会グループでは、病院の急性期病床が約1万5000床、これに対して介護・福祉施設は現在約106施設5845床となっており、医療と介護の連携を強化するためには、両者の数字がほぼ同数になるように整備していかなければなりません。今春までに介護老人保健施設6、特別養護老人ホーム(特養)1、グループホーム1、サービス付き高齢者住宅1の842床が開設。そのほかにも特養2施設の着工が控えています。

 在宅部門も強化し、新たなデイサービスや訪問看護ステーションを開設し、24時間巡回型訪問介護・看護にも積極的に取り組んでいきます。

こども園を整備し子育てと仕事の両立を

 また、これからの少子化社会において小さな子どもを育てながら生活ができる環境整備がたいへん重要です。徳洲会グループではこれまでも病院に併設されている院内保育所などで、病児保育を含めた職員の子育て支援を行ってきました。今後は、小学校6年生までの学童保育も積極的に展開し、まずは徳洲会で働く仲間たちが、働きやすい環境、子どもたちが学びやすい環境を整備していきます。

 徳洲会で生まれ育った子どもたちが20年後、30年後に次世代の徳洲会を支える医療人として立派に成長してくれることを願っています。

 現在、文部科学省と厚生労働省が進めている「認定こども園」は、幼稚園と保育所などの長所を併せ持った新たな仕組みとして、注目を集めています。将来的にはこうした子育て支援、教育支援の輪をそれぞれの地域へと広げていくことになるでしょう。

災害教育の普及と強化を目指す

 昨年は東日本大震災だけではなく、さまざまな自然災害が私たちの生活を脅かしました。鹿児島県だけでも奄美大島南部での豪雨や徳之島での竜巻などが深刻な被害を出しています。紀伊半島豪雨も大きな爪痕を残しました。

 地域の生活を守るためには、介護・福祉にとどまらず、災害教育も重要な課題となっています。

 徳洲会グループは、グループの総力をあげて被災地の皆さまの支援にあたらせていただきました。特にNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)を中心とした災害医療教育プログラムは、グループ内外で多くの受講者を数え、外部からも講座開設の要請が来るようになりました。

 災害に対する心構えがしっかりしているからこそ、被災地の復旧活動には多くの職員が自主的にボランティアとして参加し、医療のみならず清掃や家財道具の運び出しなどの作業などに携わりました。東日本大震災で初動が早かったのも、グループ内に延べ529人の受講者がいたからだと思います。

 徳洲会グループは、医療、介護・福祉、教育の支援、さらには災害をも含めた視点で皆さまの生活を守ることができるよう、今年も一丸となって頑張ってまいります。

全力投球している姿にこそ人は感動し共演してくれる

徳田秀子
医療法人徳洲会副理事長

徳田秀子

医療法人徳洲会副理事長

 昨年は、東日本大震災をはじめ、台風や豪雨などの災害が相次ぎました。被害にあわれた皆さまと関係者の方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 東日本大震災では、徳洲会グループは渾身の力を振り絞って救援活動に取り組みました。スタッフの皆さまにはあらためて感謝申し上げます。お困りの方に手を差し伸べていくことが“徳洲会文化”であり、それがさらに深く根づくことを願ってやみません。

 ところで、2006年のトリノ五輪で金メダルに輝いた荒川静香さんがエキシビションで使い有名になった『ユー・レイズ・ミー・アップ』という曲をご存じでしょうか。

 〈あなたが励ましてくれるから 山の頂きにも立てる/あなたが励ましてくれるから 荒ぶる海も渡ってゆける/私は強くなれるのよ あなたの支えがあれば/あなたが励ましてくれるから 私以上の私になれる〉(訳詞:藤野治美氏)

 この曲を聞いていると、徳洲会創設時代の甘酸っぱい思い出がよみがえってきます。1959年に主人である徳田虎雄理事長と結婚して随分とたちますが、思い返せば理事長とのご縁があればこそ、私以上の私になることができたと思っています。

 理事長は小学3年生のときに、貧乏ゆえに十分な医療を受けさせることができず3歳の弟・豊秀を亡くしました。それを契機に、「生命だけは平等だ」の理念が生まれたのです。社会状況を変革しないと理想の医療を遂行できないと総選挙に立候補するなど、夢の実現のためには非常識とさえ思われるスピードと勢いで、不断の努力を重ねてまいりました。

 理事長は「人生というドラマには、共演者が必要。大きな目標を掲げ、ひたむきに、激烈に、全力投球している姿に人は魅せられ、感動し、頼まなくとも手を差し伸べ、共演を買って出てくれます」と言います。全スタッフが、「弱い立場の方たち」のために負託された持ち分に全力投球し、『ユー・レイズ・ミー・アップ』の関係になれば、最善の医療を受けられる世界が実現するでしょう。

皆さまが安心して暮らせる税と社会保障の一体改革を

徳田たけし
衆議院議員
医療法人徳洲会常務理事

徳田たけし

衆議院議員
医療法人徳洲会常務理事

 日々、「生命だけは平等だ」の理念を追求し、地域における医療貢献を重ねておられる皆さまへ敬意と感謝を表します。

 昨年3月11日の東日本大震災は大津波と原発事故を引き起こし、広範囲にわたり甚大な被害をもたらしました。犠牲になられた方々に衷心よりお悔やみ申し上げるとともに、被災された全ての方々に心からお見舞い申し上げます。

 徳洲会の医療救援隊TMATは、震災の発生直後に22台の救急車で被災地へ向かい、翌12日から仙台徳洲会病院を拠点に、大船渡や気仙沼など4カ所の避難所で医療救援活動を開始しました。

 その迅速かつ懸命の支援に対し、私も自民党災害対策本部の一員として支援物資の輸送を兼ねて現地へ足を運びました。その際、たくさんの被災者の方々から感謝の言葉をいただきました。また被災地選出の同僚議員からも高い評価をいただき、徳洲会グループの一員として誇りに思っています。

 さて年が明け、これから「税と社会保障の一体改革」の本格的な議論が始まります。わが国のひっ迫した財政状況と人口構造の変化による社会保障費の増大から、「税と社会保障の一体改革」は急務であり、国民の皆さまが理解と安心を得られるよう抜本的に見直さなくてはなりません。

 政府はまず消費税を10%に増税することを掲げています。しかし本来はまず社会保障制度を見直し、どこを充実させ、どこを我慢していただくのか、その具体像を示した上で、国民の皆さまの理解を得るところから始めなければなりません。さらに議員定数の見直しや公務員改革など歳出削減策を徹底した上で、国民の皆さまにどれくらいご負担をお願いするのかの結論を出すべきです。

 同時に、不況下における増税はさらなる経済の悪化と疲弊を招くことから、デフレと円高を克服し経済を立て直すことが重要です。

 今年も衆議院議員として、そして徳洲会の一員として、皆さまのご期待に沿えるよう努力してまいります。

 共に頑張りましょう。

グローバルな視点をもち、「夢の医療」の実現へ

鈴木隆夫
一般社団法人徳洲会理事長
医療法人徳洲会常務理事

鈴木隆夫

一般社団法人徳洲会理事長
医療法人徳洲会専務理事

 明けましておめでとうございます。

 1973年にスタートした徳洲会は今年、創立39周年となります。これまで国内66に加え、ブルガリアに1と、計67病院をもちました。現在、国内では3病院の新規開設が準備中で、多くの既設病院でも新築移転の作業が進んでいます。さらに近々、古くから私たちと交流のあるブラジルの著名な心臓外科医、ランダス・バチスタ先生が院長を務める病院が、彼の祖国にオープンします。

 英国のケンブリッジ大学とは、同大学の敷地内に滞在型の医療施設をつくり、徳洲会と合同で運営するプロジェクトが実現に向け着実に進んでいます。五つ星クラスのホテルを付帯した100床の病院で、平均在院日数3日を目標とします。治療後、療養が必要な患者さんはホテルのほうに滞在し、そこではもちろん家族も一緒に過ごすことができ、医師や看護師のケアも受けられるというものです。

 従来の医療界の常識では、治療・回復・静養のそれぞれのベッドが同じ施設内にありました。それにはメリットもありますが、それぞれを分けることで効率化できるという考え方が現代医療の趨勢になってきました。このケンブリッジ大の新施設には、医師や看護師を育てる研修センターも付帯されるため、時代の要請に則した医療施設だといえるでしょう。

 この施設の運営は、新たに設立された徳田グローバル・ヘルスケア・システムズが行います。昨年暮れには、現地で計画づくりを進めるデビッド・ボイド氏が来日し、徳洲会の原点である離島医療を視察するため、徳之島や奄美大島のグループ病院を訪れました。同氏は、病院のデザインから事業計画までの全体を構築する専門家で、世界各国での実績をもつ医療計画のスペシャリストです。「地域と患者さんに見事に密着していることに驚きました。ぜひ世界に広げたい」との感想を語ってくれました。

 ケンブリッジ大は、数多くのノーベル賞受賞者を輩出した名門です。その教育レベルの高さも推して知るべしですが、徳洲会からの医師研修に関しても「いつでもどうぞ」と門戸を広げてくれています。ただし、そのときには相当以上の英語力が求められているのも当然のことです。

患者さん第一を守り職員の教育を見直す

 徳洲会グループではこれまで、がんワクチンやゲノムの研究に協力してきました。その次の大きな柱ともいえる幹細胞移植についても、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)と札幌東徳洲会病院で進められています。

 ブルガリアのソフィア徳田病院では、難病である多発性硬化症(MS)や慢性脳脊髄静脈不全(CCSVI)に対する幹細胞移植の治験が始まろうとしています。この幹細胞移植は将来、免疫抑制剤を使わずに臓器移植を可能にし、がんや糖尿病などへの応用も期待されています。試験管レベルでは神経変性疾患に対する実験も成功しており、やがては人間のさまざまな疾患の治療に適用できる“夢の医療”だといえるでしょう。

 国内にも、これらの研究を進める基幹施設を配置する予定です。旧湘南鎌倉総合病院の跡地に先端医療センターを建設し、オンコロジーや再生医療を進める計画ですが、完成すれば、国内屈指の医療・研究センターとなるはずです。

 話は変わりますが、日本では今年、診療報酬の改定が行われます。この改定では、医療の質の部分に大きく踏み込んでくるようです。

 そこには、医師や看護師、検査技師や事務職員に至るまでの言葉遣いや態度、物腰といった部分も含まれます。つまり医療がサービス業であるということが、より色濃く反映されるのです。

 過去、医師や看護師は先輩の姿を見て全てを学びました。いわゆる経験主義ですが、そのことが合併症の発生につながっていたのもまた事実なのです。スタッフの教育について、私たちは全てを根本から見直さなければなりません。

 医療がグローバル化する中、職員にもそうした視点は不可欠です。常に患者さんを第一に考える優れたスタッフを育てながら、許可病床を100%使いきること。それが、今年のテーマの一つだといえます。

心を引き締め、厳しい新年を迎える

福島安義
医療法人徳洲会専務理事

福島安義

医療法人徳洲会専務理事

 明けましておめでとうございます。

 昨年は、3月11日に発生したあの東日本大震災と大津波による未曾有の災害のため、日本は1945年の敗戦以来の危機とまでいわれた年でした。福島第一原発は、冷温停止状態になったとの政府発表がありますが、いまだに安定しているとは考えられず、被災した地域の復旧復興は不十分で、まだまだ時間がかかりそうです。たいへん厳しい年明けになりました。

 年頭に際し、思い出した言葉があります。

 「人間はたいてい自己中心的に生きるものだ。けれども世間の外で生きることは出来ない。例えば阿部家で祝いの宴をしているとき、どこかで泣いている者があり、親子心中をしようとしている家族があるかもしれない。自分の目や耳の届くところだけで判断するとしばしば誤った理解で頭が固まってしまう。今我々はすっかり忘れているが人間が自己中心的に生きやすいものだということを思い出してみるがいい」(山本周五郎『ながい坂』)

 「患者さん中心の医療を」と声高に叫びながら、私たち医療者はそれを成し遂げることができずにいます。私たちは、徳田虎雄理事長の「生命だけは平等だ」という理念に共感して徳洲会グループに参加したはずなのに、いつの間にか自己中心的な生き方をし、誤った理解で頭が固まっているように思います。「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会を目指して」という社会運動を継続しなければならないのに、いつの間にか自分の周辺しか見られなくなっています。

離島・僻地医療の継続は私たちの使命

 誰もやらない離島・僻地医療をやり続けるのが徳洲会の使命です。それなのに徳洲会の離島・僻地医療は、細々と実行されているにすぎません。今年はグループの多くの人が、目の前の患者さんや仲間たちに、そして苦労している離島・僻地の患者さんや仲間たちに、しっかりと手を差し伸べることができる年にしたいと思います。昨年12月から始まったスタッフ医師たちによる徳之島徳洲会病院への応援は、同院にスタッフが充足するまで継続します。

 この応援は“初めの一歩”です。十分ではありませんが、グループのスタッフ医師たちに、まずは離島の医療を体感してもらい、誤った理解で頭が固まることのないようにしたいものです。そして、徳之島だけでなく、沖永良部、瀬戸内、笠利、喜界など少ない人数で苦労している徳洲会病院に、手助けの輪を広げていきたいと思います。

 私たちのグループには、新潟県の山北病院やゆきだるまクリニック、秋田県のドラゴンクリニックのように、周辺に親病院のない孤立無援の施設があります。こうした施設もグループの仲間たちが支えているのです。

 今年は、札幌徳洲会病院、茅ヶ崎徳洲会総合病院が新築移転します。都市部にある多くの病院の建て替え工事も始まります。湘南鎌倉総合病院や岸和田徳洲会病院など、すでに建て替えを済ませた病院は以前にも増して活発に医療に取り組んでいます。古い病院の建て替えはたいへん重要です。しかし、常に離島・僻地でも、心ある仲間たちが地域の医療を支えていることを念頭に置いていただきたいと思います。

 徳洲会グループの病院は医療の質を高めねばなりません。「安全で安心できる医療を」というテーマも、私たち医療者が声高に叫ぶものの実行されていません。今年は、eラーニングを使用した医療安全管理者講習が始まります。現在のところ100人以上の受講者があり、これで全病院に医療安全管理者を置くことができるようになります。現在専従で医療安全管理に携わっている方々に集まっていただき、昨年11月のセミナーのときに医療安全管理部会を発足させました。今後積極的に会合を開き、徳洲会グループの医療安全管理の質を高めていきます。発生した医療事故に関しては、アメリカで行われている「Sorry Works!」運動などを研究し、情報開示と謝罪プログラムを実施できるようにしていきたいと考えています。

大規模ネットワークを活用 治験と各種プロジェクトを推進

篠崎伸明
医療法人徳洲会専務理事

篠崎伸明

医療法人徳洲会専務理事

 徳洲会グループは、文部科学省の「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」(平成15〜19年度)に参加しました。同プロジェクトは引き続き、患者さんの予後調査を行う第2期(20〜24年度)に入っています。プロジェクト全体でこれまで約32万症例(約20万人分)のDNA、血清試料、臨床情報が集められ、徳洲会グループも大きく貢献してきました。

 文科省は平成23年度から、がんに対する次世代医療を実現するため、「次世代がん研究戦略推進プロジェクト」を始動しました。徳洲会は、この中の「がん薬物療法の個別適正化プログラム」にも参加しています。

 すでに薬剤関連遺伝子が同定されている3薬剤(タモキシフェン、カルバマゼピン、ワルファリン)について、服用前に遺伝的検査を行い、その有効性を検証するプログラムです。患者さんにとって服用前にその効果や副作用の有無、適切な投与量などがわかるため、オーダーメイド医療としてより具体的に貢献することができるでしょう。

ネットワークで情報共有と効率化>

 グループの治験に目を向けると、構築された大規模ネットワークにより情報共有が図られ、複数の施設で効率的な治験が行われています。メーカーにとってもコストダウンになり、より早く質の高い治験が実現するため、ドラッグラグの解消にもつながります。

 グループ治験事業の中核的な組織である未来医療研究センターと連携を図りながら治験を進め、一日でも早く世界の標準治療薬が日本にも届くようにしたいと思います。

 対がん戦略については、平成16年に徳洲会のオンコロジープロジェクトがスタート。化学療法を標準化し、これまでに約130種類のレジメン(抗がん剤の投与計画)を整備してきました。

 昨年秋からは、血液がんのプロトコール委員会が開催され、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫などの標準治療に関するレジメンの策定が進められています。

 ITをフルに活用し、これまでのレジメンの改善に向けたバリアンス(パスから逸脱すること)と副作用の登録を導入し、患者さんへの治療に役立てます。

 オーダーメイド医療実現化プロジェクトのメディカルコーディネーター(MC)と臨床研究コーディネーター(CRC)のコラボレーションも始まりました。MCが臨床研究に関わり、CRCもオーダーメイド医療に関わるものです。今年1月には、未来医療研究センターがMCを対象に臨床研究の講習会を2日にわたり開く予定です。こうして将来のゲノム関連創薬について、お互いの経験と知識を共有し、効率よく臨床研究が進められるよう準備しています。

奨学金制度を充実 学生をサポート

 徳洲会は、医師になる力があるのに経済的な理由で大学進学を断念せざるを得ない高校生や、苦学している医学生に対する奨学金制度をさらに充実し、全国の高校生、医学生を積極的にサポートします。より多くの熱意のある学生が、この制度を利用していい医師になることを期待しています。

 国家試験合格後、医師には2年間の初期研修が義務づけられています。その後、スタッフ医師となる前段階として、専門性を深めるための後期研修へと進みます。この研修プログラムやキャリアパスの充実を図ることを目的に、グループの若手医師らによって、「研修プログラム検討部会」が発足しました。

 魅力ある教育研修の仕組みづくりへ向けて、継続的な集まりとして設置され、各診療科の部会活動の活性化や各病院の指導医および教育資源の透明化と共有、グループのスケールメリットとネットワークを生かした研修の推進方法などについて熱心に検討しています。

 グローバルな視点に立ったプログラムが作成され、徳洲会のさらなる飛躍へとつながることを期待しています。

進化を遂げるための挑戦でさらなる「看護と介護の融合」を

遊佐千鶴
医療法人徳洲会常務理事
徳洲会看護部統括

遊佐千鶴

医療法人徳洲会常務理事
徳洲会看護部統括

 平成24年度は、診療報酬と介護報酬の同時改定を迎える大きな節目の年です。社会の高齢化が進む中、切れ目のない支援を実現するには、医療と看護だけでなく介護・福祉までを一つのものとして捉える必要があります。そこで徳洲会看護部では、“看護と介護の融合”を進めてきました。

 その一環として、昨年12月に徳洲会グループの全施設の看護責任者と、病院の看護部教育担当者を対象にした「看護・介護部研修」を初めて開催。看護と介護の融合の目指すところは、地域完結型医療の実現に向けたネットワークづくりへの貢献です。

 私たちは、病院やクリニック、介護・福祉施設、訪問看護ステーションなどの垣根を越えて、常に「在宅」との関連を意識しながら、さらに連携を強化していく必要があります。そして、医療資源を最大限に生かし、患者さんに最適のケアやサービスが提供できる環境をつくっていかなければなりません。

 徳洲会看護部の平成24年度の活動方針は、「挑戦と進化」です。これまで取り組んできた、看護職員の増強やチーム医療の推進、看護教育の強化などは、それぞれに成果が表れています。今年度は、それをさらに進化させたいと思います。

 グループ内には今後も、多くの病院や介護・福祉施設が開設される予定です。その全てが、「生命だけは平等だ」という徳洲会の理念を実践するものでなくてはなりません。そのためにも、施設運営の要となるリーダーの育成が急務だと考えています。そのリーダーが、スタッフ一人ひとりの力量を十二分に発揮させる体制をつくっていくからです。

 具体的には、徳洲会看護部の次世代を担う管理者の教育に力を入れていきます。ほかにも、グループ内の認定看護師制度の構築や外国人看護師の採用、海外医療支援活動への協力など、さまざまな取り組みを推進していきます。

 徳洲会看護部が進化を遂げるための挑戦に向かって、ひるむことなく皆で頑張りましょう。

「世界同時医療革命」を目指し轟沈覚悟で、頑張りましょう

能宗克行
医療法人徳洲会専務理事
事務総長

能宗克行

医療法人徳洲会専務理事
事務総長

 ギリシャやイタリアをはじめ、世界中で財政不安が広がっています。改善の見通しはなく、EU(欧州連合)からアメリカ、そして日本へ波及するのは間違いありません。ブルガリアでは、診療報酬が突然13%近くも引き下げられました。日本でも診療報酬を大幅に引き下げなければ国そのものが成り立たなくなるのかもしれません。診療報酬の改定は今後、厳しくなることはあっても甘くなることはないでしょう。

 徳田虎雄理事長が考えているのは、5〜6年後の日本です。状況が激変する中で徳洲会が生き残るにはどうすればいいのかを考え、相当に厳しい意識で経費節減を進めています。“脂肪”を落として“筋肉質”にしようということです。一方で、必要な投資は積極的に行っています。国内では今年、札幌と藤沢が新病院開院となり、工事中の千葉西、福岡、大隅鹿屋を含めて15病院の新築・建て替えに着手します。

 国内だけでも大変だから、海外どころではない──それが普通の考えですが、徳洲会は違います。徳田理事長はもともと、離島・僻地の困っている人たちのために何とかしたいとの思いで取り組んできました。「患者さんを救えない組織なら、つぶしてもいい」と修復腎移植の際に明言したほどです。海外には、日本の離島・僻地以上に医療に恵まれないところが数え切れないほどあります。

 徳田理事長の行動方針は「世界同時医療革命」です。患者さんの多様化するニーズに応えるために、国内では病院の新築・建て替えを進めながら、アフリカでの透析センター開設と病院建設プロジェクトの推進、ケンブリッジ大学との提携、ブラジルのハートセンター開設、アジアへの協力を無理、無駄、無茶苦茶でも同時に仕掛けていきます。全方位で努力すれば、ブルガリアのソフィア徳田病院のようにどこかで突き抜けてステップアップしていく可能性があります。今年は、世界に貢献する組織として体質を強化し基盤を整えながら、ぎりぎりの勝負をしていきます。轟沈覚悟で、皆で頑張りましょう。

一般社団法人徳洲会

102-0083 東京都千代田区麹町4-6-8 ダイニチ麹町ビル2階
TEL:03-3262-3133 FAX:03-5213-3602

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